【主催者の高齢化のため、「雛めぐり」も来春まで】
奈良県高取町で「高取かかし祭り」(10月1~31日)が始まった。2009年にスタートし、今年で15回目。山城の高取城(1873年廃城)の旧城下町、土佐街道沿いに町民手作りのかかし約200体が並ぶ。秋恒例のイベントとして観光客の人気を集めてきた。ところがメーン会場に行くと「ありがとう!!…そしてさようなら!」という文字が掲げられていた。
祭りを主催するのは「天の川実行委員会」。メーン会場は緩やかな上りの石畳が続く街道脇の「街の駅城跡(きせき)」内の催しスペース。毎年テーマに沿ったかかしが会場を埋め尽くす。初めて訪れたのは8年前の2015年。そのときのテーマは「薬の町」で、推古天皇の薬狩りの場面が再現されていた。一昨年2021年は「東京五輪」、そして昨年は「ザ・スモール・ワールド」だった。さて、今年は?
「ありがとう!!…そしてさようなら!」とあったのは屋内の展示会場の入り口そば。ホームランの兜を被ったエンゼルスの大谷選手やイチロー選手、今年リーグ優勝を果たした阪神の野村監督らのかかしの前に掲示されていた。「さようなら」という言葉が気になり、緑色の法被姿のスタッフに声を掛けた。
すると思いも寄らない回答が返ってきた。「今年が最後。スタッフの高齢化のためです」。改めてカラーちらしを見ると、左上に小さく「最終回第15回」と印刷されていた。実行委員会の会員は現在70代後半~80代の男女合わせて9人。そのうち2人が病気で、実働部隊は7人だけ。それらのメンバーには介護などで忙しい方もいるという。
屋内のメーン会場に入ると、かかしが所狭しと並べられていた。壇上に掲げられたテーマは昨年と同じようなもの。最終回ということでこれまで展示したものも含めて一堂に展示したようだ。この会場は春の「町家の雛めぐり」のメーン会場にもなっている。スタッフによると、その雛めぐりも来年が最後になりそうとのことだった。
メーン会場や街道沿いの土佐恵美須神社などに展示されたかかしには番号付きのものがあった。それらのかかし約100体は先着順で希望者にイベント終了後お譲りするという。かかし祭りが始まった1日と2日の2日間で8割方予約が入ったそうだ。そのため3日午前訪ねると、追加でかかしに番号を付けるスタッフたちの姿も見られた。
高取では10月7~8日に秋祭りが開かれ、だんじりが土佐街道などを曳き回される。11月23日は「第35回たかとり城まつり」。土佐街道を中心に時代行列やよさこい踊り、火縄銃の実演、和太鼓の演奏などが繰り広げられる。