【花笠姿の愛らしい子どもたちの太鼓踊りも】
滋賀県甲賀市甲賀町の大鳥神社で7月23~24日、無病息災や五穀豊穣を願って「大原祇園祭」が執り行われた。24日は前夜の宵宮祭に続いて本祭。「花奪い(はなばい)神事」が一番の見どころで、この祇園祭は県指定無形民俗文化財にもなっている。
本祭は花火の号砲で午後3時から始まった。朱塗りの楼門前には白装束で鉢巻き姿の男衆約50人がずらりと整列。その間を花鉾を先頭に、太鼓踊りを奉納する子どもたち、赤い造花の「神花(しんか)」で飾られ酒樽を乗せた花傘が進む。
太鼓踊りの踊り子は花笠を被り、和太鼓を「トントト、カカカ」と打ち鳴らしながら進んだ。昼過ぎ一時雨が降ったこともあって、太鼓は透明のビニールシートで覆われていた。
楼門は京都⋅八坂神社の西門を模したもの。花傘はその楼門を潜って神輿が安置された拝殿へ。そこで酒樽などを奉納した後、再び楼門に姿を現した。
境内の入場順は毎年、第1番が氏子総代を務める地区。第2番以降はくじ引きで決まる。今年は第1番が大原上田。その後に大原中、高野、大久保、大原市場、鳥居野、神、相模、櫟野と続く。
いよいよ花奪いの始まりだ。第1番の花傘が笛の合図で石段を駆け下りて男衆の間へ。すると、一斉に青竹による集中攻撃を始まった。
大鳥神社の祭神は素盞鳴命。花奪いは素盞鳴命のヤマタノオロチ退治に由来するという。花傘は数往復する間に竹の棒でしこたま叩かれ、「そこまで」という笛の合図で観客側に倒された。
赤い造花「真花」には無病息災や家内安全のご利益があるという。参拝者たちは花傘が倒れるやいなや、我先に駆け寄り競って花を奪い合っていた。
祭りを支えるのは旧大原村の氏子地域9地区。花傘は各地区から6基ずつほど奉納された。9地区を合わせると50基ほどに。
花奪いは1時間20分ほど繰り返し行われた。この間に抱えきれないほどの花をゲットした人もいた。
楼門前で花奪いが繰り広げられる最中、本殿や拝殿の前では子どもたちによって太鼓踊りが奉納された。輪になって和太鼓を打ち鳴らし、「インヨーソーライ(陰陽栄)」の掛け声で輪の中央で太鼓の胴をぶつけ合っていた。
踊り子はかつて男児に限られていたそうだが、今は女児も加わった地区も見られた。踊り終えた子どもたちにはアイスクリームなどが配られ、親御さんが「お疲れ」というように団扇であおいでいた。
花奪いの後は氏子総代や役員による楼門からの粽(ちまき)投げ。笹の葉でくるまれた粽の中には当たり券も。当たると酒樽がプレゼントされる。
当たりの確率は結構高かったようだ。この男性は仲間5人で手にした10個ほどの粽の中に当たり券が4枚も入っていた、と見せてくれた。別の男性は一人で3つの酒樽を持っていた。
粽神事に続いて神輿の渡御が行われた。担ぐのは花奪いで奮闘した白装束の男衆。汗だくになりながら「ワッショイ、ワッショイ」とお旅所まで担ぎ、獅子頭が沿道の人たちの頭を噛んでいた。