言葉のチカラこぶ——『いい言葉塾』

言葉はコミュニケーションの基本。伝えたいことは「言葉のチカラ」できっと伝えられる。もっとうまく伝えられる。

「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その13)

2013-03-13 09:51:12 | 繁盛店物語(創作)
こんにちは。
販促経営コンサルタント、藤田です。
本日は2回目の投稿です。

このカテゴリーは基本的にフィクションです。
販促経営コンサルタントの本田というわたしの分身を登場させて、様々な経営再生の様子を描写していきます。
内容はフィクションですので、モデルそのものはありませんが、実際に自分が経験したことも混じっていますので、これを読むあなたにもずいぶんと参考になることが出てくると思います。
あなたの経営改善のヒントにご自由にお使いください。
(なお配信は原則毎週1回水曜日にと思っていますが、基本的にランダム配信です)


「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その13)


「今さら店のメニューをひねっても、肉の産地を変えるとか、そんなことぐらいです。
このあたりではまだ例のないことは何かないかと考えて、私が考えたものです。
このお土産メニューでいいのは、今まで縁のなかったお客様にもアピールできるということです。
お店の一角を改造して、カツを揚げるところを見せながら販売するんです。
やってみませんか?」

「………」

「最初は、店内で試食用として皆さんに提供します。良かったらお土産にどうぞと言うんです。
お土産に買っていただくとなると、その分客単価がアップするわけですよ。
そうして、店の一角で揚げるということは、食事客以外にも商品を販売できるということで、客数アップにもつながります」

「うまくいけばねえ………」

「まあそれはあなた次第ですけどね。
それにもうひとつ提案があるんですが、いいですか?」

「え? またとんでもないことをーーー?」

「いえ、まったく当たり前なことです。
お客様にメニュー内容をよく知ってもらうというか、今まで口にしていないメニューにも手を伸ばしてもらえるようなアイデアです」

「それなら聞きたいですね」

「でしょ? あの、ですね。お客様がひと通り注文されたらですね、注文品以外にもう一品、1人前もいらないほんの一切れでもいいので、頼まなかった品の中から、ぜひこの品を召し上がっていただきたいという商品を、『どうぞ今日のご試食品です』と言って、注文の品と一緒に持っていくんです。
そうして今まで頼まなかったような商品の味を知ってもらうと、じゃあ次回来たときに頼んでみようかと思ってもらえることにもなり、気に入ったらもしかしたら、その場で追加で頼まれるかもしれないじゃないですか」

「それは、いいですね!」

「あの店は、必ず試食用にもう一品出してくれるという評判がつけば、それも客数アップにもつながりますよね」

「なるほど」

「というところが本日のご提案内容です。いかがでしょうか?」

「まあ納得できかねるところもありますが、おおむね面白いですね」

「どこが納得できないですか?」

「例のメンチカツとかビフカツ、………ですね。やっぱり焼肉屋としてはすごく抵抗があります」

「なるほど、抵抗、ねえ。その抵抗が強いほど、私は成功率が高いなあと読んでいます。やってみましょうよ」

「ええまあ、みんなと相談して」

「あ~あ、みんなと相談すると絶対ダメという意見が強いですよ。
基本的に、働いている人は変わるのはいやだというように保守的ですから。
今と違うことはしたくないんです、人間は。
変わることには、それこそ誰にでも抵抗があります。
ルーティンワークで動いていれば楽なんですから。
でも変わらなくちゃ、じり貧ですよ。
お客様だって飽きてきますからね、メニューには」

「そんなもんですか?」

「そんなもんです、よ。
ここを変えたいと言うと、絶対に何かしら文句を言う人はいます」

「たしかに」

「だから、改革というものは、トップダウンでやるべきなんです。
みんなの意見を聞いているうちに、遅くなってしまいますよ」

「分かりました。やってみます。せっかく高いお金を払って、来てもらって、いい提案を受けたんですから」

「高いお金って、ねえ、梶本さん」

「ああ、これは失礼。そんなに高くはないですよね」

「高くないです。絶対に。
それで売上が上がれば、さらに高くはないことになりますから」

「ハハハハ!」



本当に心から笑えるのはいつになるだろうと思いながら、本田は帰途についた。

当分はこちらから電話をかけたり、そっと出かけてみたりしてフォローしなければ、なかなか難しいだろうと考えながら。

                                  


                           おわり


(このストーリーは、リアル体験を元にしたフィクションです)

それでは今日はこれで。
あなたの一日が今日もいい一日でありますように。
藤田販促計画事務所、お客様力(ぢから)プロデューサの藤田でした。

あ、そうそう、下記のメルマガ「繁盛店になりたいか!」をぜひお読みください。
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群馬県前橋市天川大島町186-25
藤田販促計画事務所
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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その12)

2013-03-06 10:53:52 | 繁盛店物語(創作)
こんにちは。
販促経営コンサルタント、藤田です。
本日は2回目の投稿です。

「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」です。
このフィクションはずいぶんと久しぶりの掲載になります。
読んでいた方には申し訳ありません。


このカテゴリーは基本的にフィクションです。
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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その12)


今回の提案は、客単価のアップと新規客の増やし方で、そのためのアイデアを提供するというものだった。

「たくさん提案しても、どれから手をつけていいのかということにもなりますので、今回はたったひとつだけ提案をします。それでもいいですか?」

「え? ええ。まあ、ねえ~」

「よかった。というか、今できることとしてはこれが一番いいんじゃないかと私は考えています」

「自信満々ですね」

「いや自信なてありませんよ。どんな企画だって、実践する人の気概にもかかっていますしね。私は提案するだけで、実践するのはその提案を受けた方、梶本さん、あなたですから」

「はい」

「で、今までにもあったことですが、たくさんの提案をしても、それのどれを採用して、どのようにもっていくのかということは、提案を受けた社長さんが決められることで、私には決定権もなければ、ほんとうに実践するのかどうかということも、先方次第なわけで、今までけっこうはなはだいらだつこともあったわけで、だからこれからはたったひとつだけ、これだというものをテインして、まずそれから実践していただいた方が、結局はお店のためにもなるだろうと、まあ考えたわけです」

「………」

「ということで、今回のご提案はこれです」といって、本田は提案書を差し出した。

そこには『新商品のご提案ーー焼肉店でありながら焼き肉ではない新商品で客単価アップ!』と書かれていた。

「説明しますね。新商品の提案なんてありきたりだと思われるでしょうが、これはメニューの提案としてではなくてですね、お店で食べていただくというよりも、どちらかというと、店頭で販売したり、お土産として持ち帰っていただく新商品です。題して『老舗焼肉屋のもう一品!』です。
焼肉屋さんなので、扱っている肉はほとんど牛ですね。ですからメインは牛肉の手作りメンチカツと、ビーフカツ、それにビーフカツサンド、そしてもう一品はランチメニューにしてほしい牛ハラミ丼です。今ある素材をもっと活かせないかなあと考えました」

「はい………」

「今ある意味メンチカツがブームじゃないですか。そんなところからの発想で、今東京などでは、焼肉屋さんがラーメンを出したりしている店も出てきています。それはなぜかというと、昼間ラーメンを出すことで、店をもっと知ってもらい、夜の来店も促そうということで、言ってみれば一種の販促です。
販促にチラシを使うんじゃないくて、実際の商品を新しく作って、それでお店の販売促進につなげるという考え方なんですね。これだと素材そのものをもとから店にあるものを使えばいいわけで、新しく投資する必要もないわけです。もちろんおいしいというのが前提ですけどね。
素材はこちらではブランド牛を使っているわけですから、そのブランド名を頭につけたメンチカツやビフカツなどを作れば、それはそれでもうひとつの名物に育つ可能性もあるわけです。試作だってお店の営業中でも夕方などにできると思います。いかがですか?」

「メンチカツ、ねえ? できるかなあ、自分に」

梶本は懐疑的な感じで首をひねった。

考えていたこととはまったく違う提案なので戸惑いもあるのだろう。

本田はそう思った。


                           つづく


<13>へつづく。
(このストーリーは、リアル体験を元にしたフィクションです)

それでは今日はこれで。
あなたの一日が今日もいい一日でありますように。
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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その10)

2012-12-05 10:55:00 | 繁盛店物語(創作)
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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その10)


「いいじゃないですか、試験的に導入してみても。もしその日に入らなくても、お客様にきちんと説明すればいいんじゃないですか? 
申し訳ございません。新鮮なお肉をお客様に提供したいので、今日のように入荷しないときもあるんです。
でも今日のお肉はどこどこ産ですが、負けず劣らずおいしいですよ。とか、ちゃんと説明すれば納得していただけるように思いますがねえ。
その評判が立てば、あそこの肉はいつも新鮮なんだという口コミも、広がっていくように思いますが」

「そういう考え方もありますか。そこまでは考えられなかったですね。そうか、そうすればいいのか」

「お客様を裏切るにしても、いい意味で裏切ってあげれば、それほどに怒る人も気にしなくても、この店を気に入ってもらえる人だけに来てもらえばいいんですよ。八方美人的にお客様を選別しないというのは、今どき、結局すべてのお客様を満足させられない結果になってしまいますよ」

「そうですよね」

「どんなに素晴らしいサービスをしても、怒る人はいます。でもその人に照準を合わせてなんかいたら、商売なんてできません。それよりも、この店のサービを喜ぶお客様をより満足させてあげた方がお店にとってもいいと思いますが」

「まったくその通りだと思います」

「よくいらっしゃるんですよね。このお店のお客様はどんな層を狙っていますか。どんなお客様に来ていただきたいですかって聞きますと、そりゃたくさんのお客様に来ていただきたいですよ、って答えるんですよね。それは答になっていないと思いませんか。さらに突っ込むと、若い方からファミリーまで、いろいろな層の方にまんべんなく来てほしいですって、いいますね」

「まあたくさん来てほしいですからねえ」

「そんな店づくりなんかしたら、結局みんなから嫌がられてしまうと思いませか?」

「え、どうしてですか?」

「え、分からないですか? それが判らないうちはダメでしょうね。こんな諺知ってます? 船頭多くして船山上る、って?」

「ええ、まあ、だいたいのところは」

「このことわざの場合は、様々な意見に引っ張られてどっちつかずになっていたら、ダメになってしまうというような意味です。ちょっとたとえとは違うとは思うんですが、他にいい諺が今思いつかないので、この諺を出してしまいましたが、ターゲット、お客様、ですね。この店はファミレスじゃないですよね」

「もちろん!」

「今どき、どんな方にも来ていただきたいのがファミレスでも、お客様の層をきちんと把握して宣伝しています。それなのに、ここでもファミレスのように、どんなお客様にも来ていただきたいなんて、そんなことを言ってるから、すべてのお客様にそっぽを向かれてしまうんですよ。
そうじゃないですか?」

「いや判らないですね、本田さんの言ってること。だって、いろいろなお客様に来ていただきたいんですよ、ほんとうに」

「ああ、もう! 今の時代に、自分の店に来てほしいお客様を絞らない専門店なんて、やっていけないですよ」

「………」

「いいですか。まずここんところから考えていきましょう。まず客層をどうするかということから」



                        <その11>へつづく。

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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その9)

2012-11-21 10:33:17 | 繁盛店物語(創作)
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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その9)


「さてと、今感じたことはそれぐらいですので、後は私なりに考えられることを提案書にまとめてみますので、少し現状のお店の話を一応聞かせてください。
まず今までどんな販促をしてこられました?」

「ええと、中心はDMでのサービス案内です。店頭で記入していただいたようにから顧客名簿を作成して、そのお客様に定期的にはがきを出して、はがき持参の方にはビールの生中(ジョッキ)かもしくはお酒を飲めない方もいらっしゃるので、ソフトドリンク1杯サービスとカルビ一皿サービスですね。けっこう喜ばれています」

「なるほど。で、他には?」

「以前2、3度チラシを作って、店の近所にポスティングを全員でしたこともあります。そのチラシ持参の方にはさっきと同じようなサービスを行いました」

「どうでした?」

「ええ、結果は良かったですよ。でもそんなことでやってきたお客様はあまり固定客にはならなかったですね。それ以来ポスティングはやっていません」

「そうですか。じゃあメインは顧客データからのDMが主ですね」

「ええ、今のところは。それでいろいろなデータを集めているところですね」

「いろいろなデータ?」

「ええ、お客様の記念日、だいたいが結婚記念日か誕生日ですが、それを記入してもらって、記念日サービスも同じようになっています。他には記入してもらったお客様の使った金額とか、来店時刻とか集められるものは集めているところですね」

「顧客管理をきちんとしていこうということですね」

「ええ。しばらく前から始めたところです」

「このまんだらの売りはやはり九州産の牛肉と盛岡レーメンですよね」

「ええ。九州産以外も少しは扱っていますが」

「地元のいい牛肉もあるようですが、それは使わないんですか? 地産地消とか謳えるのに?」

「ええ、まあ。仕入れるにはまた新たなルートを探さなければならないし、安定供給となると今のところ難しいんですよね」

「なるほどなあ、そういうことか。だから扱いたくても扱えない、ということも出てくるわけですね」

「そうなんですよ。地元牛と謳ったらやはり安定的に入ってこないとお客様にもいいわけできないですからね」

「そうですか。私なんか簡単に、地元牛のおいしいのがあるのに、どうして使わないんだろうと思ってしまいますが、商業ベースで考えると、そういうことなんかがあって、難しいんですね」

「難しいですね」

「でもそれで手をこまねいていたら、何にも前には進みませんよね?」

「え?」



                        <その10>へつづく。



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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その7)

2012-11-07 10:31:37 | 繁盛店物語(創作)
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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その7)



「じゃあまず今からすぐにこの席の配置を少し変えましょう」

「今からすぐに?」

「ええもちろん」

「わかりました」

従業員と一緒にテーブルの配置を変え、ひとりでも、ふたりでも気楽に座れる席も4つできた。

都内には一人焼き肉と言って、最近ではひとりで焼き肉を食べる人も増え、一人焼き肉専門店ができるぐらいだから、地方でもちょっとはそれに対応した店づくりをすることにこしたことはないと思った。

「個」を大事にすることが、ひとつの繁盛店への道でもある。

東日本大震災によって、また「個」から「家族」「仲間」の絆が見直されてきてはいるが、やはりこれからは「個」に重点を置いた店づくりも、一方では必要だと本田は思っている。


テーブルを移動し終えて、また打ち合わせに戻った。

「ええと、それから次にですね」

本田は休む間もなく次の改善点を打ち出した。

「このメニューの値段があるじゃないですか」

「はい、値段が………、高い? ですか」

「いや高い安いというよりも前に、値段の末尾がバラバラですよね。これって消費税をそのままプラスしただけでしょ?」

「はい、もちろん」

「このメニューを見ると、私なんかちょっと気持ち良くないんですよね」

「え、おっしゃる意味が、わからないんですけど」

「坐りよくないと言うか、お尻がもぞもぞすると言うか………」

「?」

「末尾の数字がバラバラだと、統一感が全然とれないということです」

「統一感? だって全部同じ値段にするわけにはいかないですよ」

「それはわかっていますよ。じゃあちょっとファミレスなどのメニュー、目に浮かべてください。メニューの末尾、大体同じ数字が並んでいるでしょ? 普通はゼロが多いようですが、ほらガストなんかだと9が多くありません?」

「言われてみれば、そうですね」

「そうなんですよ。それに比べてこのメニューの数字、てんでバラバラでみんな勝手にあちこち踊っているという感じ、しません?」

「う~ん、どうかなあ」

「じゃあ言いますが、デザイン的に見て良くないんですね。やはり末尾が揃っていると、きれいに見えるんです。ちょっと例がとびますが、雑誌や本の目次を思い浮かべてみてください」

「………」

「各ページのタイトルはもちろん文字数が同じじゃないですよね。でもその目次のページだけ見ても、きちんと四隅が押さえられていて、きれいに見えませんか?」

「きれいに?………」

「文字の足りないところはホワイトスペースか、点々で調節していますので、お尻も揃っています。きっちりと全体的には四角く収められています。そういったところで言うと、このメニューなんですが、数字の最後がバラバラなので、収まっていない感じが強くするんですね。一言で言えば、収まりが悪い、ということですか」

「収まり?」

「悪く言えば、消費税が5%になったとき単純に税をプラスしただけで、何も考えていないということ、ですね」

「まあ、税はいただかないと、ということでプラスさせていただいたわけなんですけど………」

「そのときに考えてほしかったのは、1、 2円から9円の誤差はプラスマイナスして、ゼロとか8とかに微調整するべきだと思うんですよね。お客様のためを思うのなら、末尾はカットしてゼロにするとか、そうするとお客様も納得して、ああちょっと下げてくれたんだなあと思うと思うんです」

「う~ん、おっしゃってることがいまいちピンときません」

「どう言ったらいいのかなあ。困ったなあ」

「………」



<8>へつづく。

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2012-10-24 10:14:17 | 繁盛店物語(創作)
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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その6)



店内は全体的に、よくいえばやはり老舗のたたずまいというか、風格がある。

しかし逆の面から見れば、古めかしい感じだ。

レザーの椅子席で、煙を吸い込む煙突が各テーブルの上部にあり、それが店の広さを邪魔しているという感じを受ける。

昭和を感じさせるたたずまいと言えばそうだが、古くささも否めない。

ここに若い世代を呼び込むのは難しい気がする。

やはり顧客は一定の歳をとった、昔からのお客様が多いというのは、そういったところにも原因があるように思えてならない。

「全部の席が4人掛け以上で、2人用の席がないというところがちょっと、設計上ではマイナスじゃないかなあという気がします」

「いえ、うちに見えるお客様は一人連れという方は滅多にいないんです」

「そりゃそうでしょ。このテーブル配置を見たら、二回目は一人ではなかなか来ようとは思わないですよね。お店がお客様を限定しているわけですよ。梶本さんが他のお客様にも来ていただきたいと考えていても、店の雰囲気がそれを拒否しているということです」

「なるほど」

「この椅子やテーブル、分割することはできます?」

「はいできます」

「じゃあすぐにでもあえて、2人用となるテーブル席を3席から4席ぐらい作ってください。もしお二人で見えてもすいていたらゆったりと4人用に坐っていただくんですが、2人用があるということを見せておけば、次に来店された時にもし混んでいても、すんなりとそこに坐っていただけるはずです。ましてそれを見せておくことで、ランチどきにも気兼ねなくお一人で来られる方も出てくると思いますが」

「そうですね」

「お客様に気兼ねさせるような店は客商売としては失格ですよね」

「その通りですね。こちらとしてはたとえお一人で来られても4人用に坐っていただければいい、と思っていたのですが、やはりお客様としてはちょっと肩身が狭くなりますよね、混んでいるときなんか」

「そうなんですよ。特に自分のような気が小さい客は」

「え?」

「いやそれは冗談、でもないですけどね」

ここで初めて梶本は少し笑顔になった。

つまらない冗談でも笑顔を引き出せれば、いい。

「まあ先の話ですけど、もしお店を改装するというようなことにでもなったときに、客席の配置をどうすればいいかと考えるときは、まず自分がお客様になって考えてみてください。自分がこの店に入ってきたときからをシミュレーションしてみるんです。それでどんな配置になっていれば、気兼ねなく奥まで入っていけるかというような。また案内されるとしたらどのように案内されたら自分はいいだろうか、とかね」

「はい、わかりました。今のところは改装の予定はありませんが、そのときには今本田さんがおっしゃられたように考えてみます」

「お願いします。とにかくすべては、お客様に気分よく食べていただくことがいちばん大切なことですから」

「その通りです」


                          <7>へつづく




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2012-10-17 10:41:39 | 繁盛店物語(創作)
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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その5)



肉の部位別の並と上、それに特上もある部位もある。

サイドも3種のキムチと各種のスープ。

中でもカルビスープは持ち帰りが出るほどの人気で、それだけを指名で買いにくるお客様もいるとのことだ。

その持ち帰り容器を見せてもらったが、それがいけなかった。

プラスティック製の丼のような容器で、味も素っ気もない。

それに蓋をかぶせ、さらにラップで包み込み、こぼれないようにしているということだった。


メニューを見て一番に感じたことは、価格の末尾が揃っていないことだった。

それは消費税をそのまま現行の価格に上乗せしてしまったことからきていると、一目で分かるものだった。

850円の消費税は42.5円だから、単純にそれを上乗せして892円(端数はカット)があると思うと、次には1029円があるといったもの。

そんな数字が並んでいる。

一目できれいじゃないなと本田は思った。

梶本としては、ただ単純に消費税が5%かかるし、総額表示をしなければいけないということで、そうなったのだと考えているが、それは何も考えていないのと同じことだった。

そんなときはやはり微調整し、末尾を今風に肉類は9円に統一するとか、単純に0円にするとか、そういった工夫は基本中の基本で、その中から損益ゼロにする算段をすればいいこと。

もちろんその気に乗じて利益を少し上乗せするということもできるが、それは商売人のやることじゃないなという気もする。

そのために、少しは末尾分を削る覚悟で商いをした方が、将来を考える意味では、正解だ。


メニュー自体にはそれ以外は問題はなかったが、やはりメニューの品名にはちょっとした説明=キャプションがあった方が、お客様にもわかりやすいだろう。

それに待つ間にも、お客様にさらに選んでもらえる可能性も少しは高くなる。

末尾の統一と合わせて、やはりメニューも早急に再デザインした方が良さそうだ。

しかしメニューなどは些末なことで、根本的な売上改善にはならない。

何が一番問題なのだろう。


店内を見渡したところ、客席は焼肉店らしく、4人から6人が座れるボックス席が12席ある。

しかしふたり客用のテーブルはない。

これではランチに多い一人客対応が難しく、4人席に一人だけのお客様が座ると、相席になるおそれも多い。

焼肉店での相席になると、もしかしたら頼むメニューによっては、焼き網まで共有ということになってしまう。

それはさすがにいやがられるだろう。

やはりひとり用は必要ないとしても、ふたり用の席は数席準備した方がいいように思われた。


「さて、現状から見てアドバイスできるところはこの場で申し上げるとして、提案できるものがあるとすれば、その分しばらく時間をいただかなければなりません。ですので、今日のところは少し店を見させていただきます」

「はい、お願いします」


                          <6>へつづく



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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その2)

2012-09-26 10:35:45 | 繁盛店物語(創作)
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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その2)



「こんにちは、先日お電話をいただいた本田です」

本田はその数日前にアポイントの電話を「まんだら」に入れた。

「スケジュールがとれましたので、急な話ですが、明後日はいかがでしょうか。その日なら半日はあけることができますので」

「はい。わがままを聞いていただいてありがとうございます。こちらとしてはいつでも結構ですので、ぜひお願いします」


焼肉店「まんだら」の本店兼本部は、市内の主要道路に面したいわゆる路面店だった。

本田は事前に少し調べた。

もう30年近く営業しており、市内では老舗の部類に入る焼肉店で、5店舗を周辺市内で営業している。

売りは九州産の牛肉と盛岡レーメンだった。

しかし、レーメンは夏はいいが、冬だと少し、どころか全然弱い。

ネットではサービス券のプリントアウトまで用意しているが、果たしてこれをわざわざプリントアウトまでして持ってくるお客様がどれだけいるのかも、不安だ。

やはりこれは今どきのスマホに標準を変更するべきだと思うが、そんな誰でもわかるようなことは、多分始めているだろうし、始めていないまでも、すでに考えているだろう。

しかし、この店は老舗だから、スマホを愛用する世代のお客様が多数いるのかどうかも考えなければならない。

このあたりも確認しなくては、と本田はある程度知識を仕入れて向かった。


「ごめんください」

約束の店に出向いた。

定休日ではなく、営業日の午後、店を数時間閉める間が面談に指定された時間だった。

2時間ほどしかとれない間にどれだけ聞き取りができるか、それが心配だった。

「本田さん、ですね。お待ちしていました。どうぞ」
と店主の梶本がドアを開けて待っていた。

こちらへと通されたのは、店の一番奥の6人ほど坐れるテーブル席だった。

早速聞き取りが始まった。


「ある程度、この店の成り立ちやお得意さんなどのことをざっくばらんに教えてくれますか」

「わかりました。まんだらは昭和60年代の初め頃、ここでうちの親父、今は会長という名目でいますが、経営にはタッチしていませんが、オープンさせました。ずいぶん長い間ここの1店舗で営業していました」

まんだらの他店舗化を図ったのは、10年ほど前だった。

バブル後の不景気風が一段落して、少しずつ消費者の財布のひももそろそろ緩もうとしているときだった。
                           




                            つづく


<3>へつづく。
(このストーリーは、リアル体験を元にしたフィクションです)

それでは今日はこれで。
あなたの一日が今日もいい一日でありますように。
藤田販促計画事務所、お客様力(ぢから)プロデューサの藤田でした。

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「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その1)

2012-09-12 10:38:56 | 繁盛店物語(創作)
こんにちは。
販促経営コンサルタント、藤田です。
本日は2回目の投稿です。

このカテゴリーは基本的にフィクションです。
販促経営コンサルタントの本田というわたしの分身を登場させて、様々な経営再生の様子を描写していきます。
内容はフィクションですので、モデルそのものはありませんが、実際に自分が経験したことも混じっていますので、これを読むあなたにもずいぶんと参考になることが出てくると思います。
あなたの経営改善のヒントにご自由にお使いください。
(なお配信は原則毎週1回水曜日にと思っていますが、基本的にランダム配信です)


今回からまた新しい物語が始まります。

「泣きっ面に蜂の焼肉店物語」(その1)




ある地方の5店舗の焼肉店チェーンを運営する企業からメールが入ったのは、7月の一番暑い下旬の真夏日が続いている時だった。

本田はある医院の第1回目の訪問を終えたばかりで、この医院にコンサルに力を入れたいと思い、断ろうと考えた。

引き受けると両方に力を分散しなければならず、さらには医院のコンサルはまだ始まったばかりで、他にも1件も案件を抱えていた。

忙しいのはありがたいことだが、すべてに力を入れてコンサルを続けていくためには、もうこれ以上力を分散するわけにもいかなかった。

「せっかくのお申し入れですが、今案件を抱えていて、これ以上今新しい案件に力を入れるわけにもいかないのです。
これ以上入れると、他の方に迷惑をかけてしまうことにもなりますので、本当の申し訳ないことですが、お断りしたい」

「いや、満天通り商店街のある人から本田さんのことを聞いたんです。この人なら何とかやってくれるんじゃないかと。わたしの話だけでも聞いていただいて、ヒントでもいいからほしいんですが。ヒントだけでいいんです」

「あの、ヒントだけと言われても、ヒントを差し上げるのがわたしの仕事なんです。だからそのためには全力を注がなければならないんです。だから、先ほども言いましたが、今お宅に全力を注げる状態じゃないんです」

「そんなこといわないで、お願いしますよ………」

「ーーー」

「じゃあいつ頃なら本田さんの手があくんですか? それまで待ちます!」

「え、そこまで?」

「はっきり言って、有名なコンサルタントに頼むような予算がないんです、正直な話。でも聞いたら本田さんは、それほどとらないと言うし、けっこうマジにアドバイスをくれるからいいよって………」

「はあ、そんなこと言われてるんですか、僕は」

いつの間にか、本田は自分のことを「わたし」から「僕」になってきていた。

「あ、すみません、失礼でしたね、そんなこと言うのは」

「いや別にいいんですけど、自分じゃ結構な値段でやってると思ってたんですが」

「満天通りの理事長がそんなこと言ってました」

「まずいなあ、安かったかなあ。もっと請求しておけば良かった」



「あの、お願いできませんか?」

「………」

「あのーーー」

「………、分かりました。これからちょっとスケジュールを調整してみます。それからのお返事でいいですか?」

本田はこれも引き受けなければならないなと思いながら、一応は保留という形でその場は終わった。



本田が焼肉店「まんだら」を訪ねたのは、それから1週間後だった。




                          <2>へつづく
             

(このストーリーは、リアル体験を元にしたフィクションです)


それでは今日はこれで。
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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(その10)

2012-09-05 10:36:46 | 繁盛店物語(創作)
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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(最終回)


「それは、この大橋医院が変わるということを院長からお客様に宣言してもらうということと、これからはお客様のことを自分のこととして考え、治療していきたいということを皆さんにメッセージとして送るわけです。
医院の広告活動というのは禁止されていますが、メッセージを送ることは別に禁止されていないですし、広告でもありませんしね」

「できるかなあ、宣言て。ちょっと気恥ずかしいな」

「やってみれば大したことじゃないですから。正直にこれから自分がやろうと考えていくことを、お客様の身になって提案していくんです。
カッコつけて書くというんじゃなくて、分かりやすく、自分がこのようにやっていきたいということを書いていけばいいことです」

「じゃあ後で書いてみるから、書いたらちょっと見てくれますか?」

「もちろん。そのためにわたしがいるんですから」

「よし。じゃあやってみるか。きみも協力してくれよ」

田代は横の奥さんにも頼んだ。

「え、わたしも?」

「そりゃそうだろ」

「でも、わたし………」

「奥さん、奥さんも後から田代さんが書かれたものを読んでみてください。きっと奥さんの方からも、こうした方がいいとか出てくると思いますから。
奥さんもこの大橋医院の経営者なんですから」

「………はいーー」

「それに書き上げたら、みなさんにもお見せください。院長だけ知っていてもまったく役に立たないことですから。
皆さんが同じことを同じように知っておくことと、同じことをやるということを納得しておかなければ、逆にお客様に迷惑をかけてしまいますからね。
これが世間でいう情報の共有化、ですよ。ね?」

「わかりました」

「メッセージの次には、大橋医院発の情報紙を毎月とは言いませんが、季節ごとには送るようにしてください」

「情報紙? そんなのないよ」

「それをこれから作っていくんですよ。みなさんで」

「どんな?」

「そうですねえ、まずは皆さんの自己紹介からでもいいじゃないですか。他にも、自分が行ってきた旅行の話でもいいです。とにかく皆さんの人となりをお客様にも知ってもらって、会話の接ぎ穂を作っていきたいんです。
お客様と話すことで、お客様も病状の微妙なところも話しやすくなりますし、別に病気の話だけじゃなくて、趣味が同じだということで、その趣味の話になってもいいじゃないですか。
そうなると、その趣味の話がしたくて、ここにやってくる方もいらっしゃるようになると思うんですよ。そうなってくればしめたものです。
その人は身体の具合がちょっとおかしいなと思ったらどこへ行きます?」

「ここ、ですよね?」

「そういうことです。これで顧客一人確保です。他の医院には絶対行かないですよね」

「なるほど! そういうことか!」

「そういうこと、です。その情報紙の内容は皆さんのこともありますが、やはりお医者さんからの情報ということなので、やはりお客様に日常で気をつけてもらいたいというようなことなど、病気の話も随所に入れていってほしいんです」

「それはそうですよね」

「でも専門的にはならないでほしいんです。専門的にすれば読んでもらえなくなりますから。誰でも読んで理解できるようにしてほしいですね」

「うん。特に医学用語なんか難しいからな」

「まず第一歩が、これから始まるというところですね」

「情報紙が楽しくなって、毎週出したりなんかして…………」

事務所内に笑い声が響いた。


こうして大橋医院の改革は始まった。

その後、どのように具体的になっていったかは、別の話。



                                おわり  


(このストーリーは、リアル体験を元にしたフィクションです)

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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(その9)

2012-08-27 09:42:50 | 繁盛店物語(創作)
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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(その9)



「以上の2点で言いたいことは言い尽くされているというのは、本当です。後は手段というハードだけですから」

「ーーー?」

「あの、ですね。トイレをきれいにするということは、その他の場所もきれいにされているだろうなと思わせるということです。でしょ? 
だってトイレっていちばん最後に掃除するところじゃないですか。人の目に見えやすいところはすぐに気がついて掃除するんですが、たまにしか使わないトイレはだいたいいちばん最後に掃除するということじゃないですか。
ですから、トイレがきれいに掃除されているということは、その他もきれいにされていると思われるわけです。
ここの医院全体が清潔感に包まれ、訪れたお客様の気分をよくさせているということですね。
そして受付では、壁を取り払ったフレンドリーでゆったりした気分で、病気の半分もそこで治るようじゃないですか。
不安な気持ちを和ませるということですね。
お客様もそういった対応を病院では体験したことがないはずですから、きっと心を開いてくれるはずです」

「なるほど、そういうことか」

「そういうことですよ。最初に不安な気持ちで訪れるわけですよね、こちらのお客様は。そのお客様に対して、まず一番に安心感を感じていただくことが、
一番最初に行わなければならない治療じゃないのかなあ、と」

「うん。言われてみれば、その通りだ」

「そうねえ、そうだわねえーー、でも」

「でも?」

「でも、ほんとにそうかしら………」

「それは頭では理解できるかもしれませんが、実際には目に見えて分かるということではないので、それだけを取り出して確認はできないと思いますが、それは患者さんの顔つきや実際に増えてきてから分かることなので、これがそうだとはなかなかいえないところが、ちょっとしんどいところですが、でもやらないよりやってみる方がいいんじゃないですか。それでお客様が増えることはあっても、減ることはないと思いますし。絶対という言葉は使いたくないですが、増えるはずです。それは時間がかかりますが、増えます!」

本田には珍しいことだが、いつもよりは大きな声で、奥さんに向かって断言した。

こうした懐疑的な人に対しては、断言は必要だと感じたのだ。

そうしないとこういう人は動こうとはしないからだ。

奥さんはソフトな感じの本田が、力強く断言したことで、矛を収めた。

「じゃあ早速工務店に連絡して、改装してもらおう、ということで、本田さん、いいかな?」

「はい、ぜひともそうしてください」

「わかった」

「その改装が終わってから、実際的な販促の指導に入りたいと思いますが、それまでにひとつだけ今日からやってほしいということがあります」

「何?」

「それは、お客様のリストをつくってほしいんです。今までここで診察を受けた方の実数を、ご本人にも確認してほしいのと、この半年間、1年間に来院されたお客様の実数をまず把握しましょう。そしてまず一度リスト全員にメッセージを送りましょう」

「メッセージ? どんな?」



                               つづく


<10>へつづく。
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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(その8)

2012-07-26 10:00:39 | 繁盛店物語(創作)
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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(その8)


「お客様、患者さんがこの医院にやってきたときに最初に対応するのは受付ですね。まずその様子を見ていると、受付の方は座って対応していますよね。
お客様は立っているのに。これっておかしいと思いませんか。やはり立って応対すべきでしょうし、本当なら受付とお客様との間には、壁なんかあるというのがおかしいんです。
でも医院はそれが昔からそうなっているから、今でもぜんぜんおかしなことと思わないで、ずっと同じようにしているんだとでも思っているのか、受付はどこも小さな窓しかないですよね。おまけに座っている。
お客様はその小さな窓口に、身体を曲げて話をすることになっています。
これだってやはり立って応対するのが普通で、さらには受付もカウンターはあっても、壁はなくしてしまう方がいいでしょうね。
そして最初病状をうかがうときにもお客様にも座ってもらって、ゆっくりと聞くべきだとは思いませんか。
まず最初はその改革からしてほしいなと思いました」

「そうか、なるほど。そんなこと今まで考えたこともなかった。前からずっとそれが当たり前だと思っていたし」

「医者の常識は一般の商売では非常識、ですね。この非常識って、どの業界にも存在している厄介なものなんです。
それに早く気がついて、改革していく企業が繁盛していくんです。
医院だって同じではないでしょうか。相手を患者さんと考えないで、お客様だという認識に改めれば、結構意識も変わってくるんじゃないでしょうか。それから始めましょうよ」

「そうだな。それに気がついてもらってよかった。早速改装の手配をしよう。本田さん、そのときにもちょっと立ち会ってもらいませんか。本田さんがお客様になってもらって、ここはこうというように言ってもらった方が早いと思いますから」

「はいいいですよ。でも好きなこといいますよ」

「え、あまり無茶いわないでくださいよ」

田代と本田はにっこりと微笑んだ。奥さんも少しだが、微笑みを浮かべた。

何とかこれで話は進められそうな気配に変わってきたようだ。

本田は思った。そしてこれから本題に入っていこうと思ったが、急にここでストップしてみようと思った。

「以上です」

「え?」

「何?」

「…………」

本田以外の出席者は、あぜんとしたまま、口をきくこともできないでいた。

しばらく、その顔を微笑みながら見渡していた本田はおもむろにまた口をきき始めた。

「と言うと、皆さんおどろきますよね」

「そ、そりゃそうですよ!」

「何のために相談したか分からないじゃないですか!」

奥さんも怒り気味に言い募った。

本田は微笑みを崩さないまま、言った。



                          つづく


<9>へつづく。
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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(その7)

2012-07-18 10:20:06 | 繁盛店物語(創作)
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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(その7)


「医者もサービス業なんです。それもお客様、患者さんですね。お客様から感謝されることが多い、幸せなサービス業ですよ」

本田が続けた。

「そう考えるところから、今回のわたしの提案は出発しています。どうでしょうか、奥さん。いいですか?」

「分かりました。お願いします」

「ありがとうございます。それでは具体的な内容に入りたいと思います。ついでに奥さんにお聞きしたいんですが、奥さんなんかがお店に買物に行って、
この店はいいなあと思うときはどんなときですか?」

「お店、いいお店、ねえーー。そうね、まず一番はきれいなお店だわね。汚いとか、店の中が乱れているような店は、いやだわ」

「そうなんです。誰もがそう思います。その中でも一番気になるところーー奥さんどこですか?」

「そうねえ、売場?」

「もっと気になるところ、ありませんか?」

「…………! そうだ、トイレ!」

「そうなんです。特に女性はトイレを気にしますね。もちろんわたしだって汚いのはいやで堪らないんですが。こちらに最初伺って一番最初に確認させていただいたのがやはりトイレでした」

「いかがでした?」

「きれいでした。安心しました」

「良かったわ、あなた」

「ああ」

「きれいなんで、これなら大丈夫だと。わたしはいつもお店や会社に伺うときには、まずトイレを見ることから始めます。わたしの知り合いの経営者の方も同じことを言ってました。小売業の社長なんですが、その社長が他社の店舗を見学に行ったときに一番最初に、やはりトイレを見るそうです。きれいなトイレだと、その時は売れ行きが落ちていても、まだまだ大丈夫だと思い、逆にトレイが汚いと、近々閉店するなと感じるそうで、だいたいその勘は外れないそうです。まあ一般的に言っても、従業員を見ればだいたい分かりますね」

「そうですね」

田代が答えた。

「トイレがきれいというのは、どこでもまず第一条件です。それからはやはり待合室の清潔さですか。特にこういったいいんではそれが重要な要素になりますね。当たり前ですけど。それだって、お客様が少ない医院の待合室でちょっとどうかなっていうところもありますからね。こちらのような小児科ですと、子どもさんたちがソファーに座らないで、そのまま床に座り込んであちこち触りまくった手を平気で舐めたりしますから。清潔さも人一倍気にしたいものです」

「それは私たちも気にしていますから、毎朝消毒してから患者さんをお迎えしています」

看護師のひとりが言った。

「はい。ですから、この医院のお客様の減少というのはそういった面ではないということが分かります。じゃあそこまで気をつけているのに、どうしてなんでしょう」

「…………」

「皆さんのせいではないんですが、やはりもうひとつどこか足りないところがあるということです。いったいどういうところでしょうか」

「と言われても………」

看護師が首をひねった。

「もちろんそれが分かれば、わたしなんか必要ないことですけどね」

「そりゃそうだ」

田代が言った。

これからやっと具体的な提案になるというところだ。



<8>へつづく。
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2012-07-04 10:13:08 | 繁盛店物語(創作)
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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(その6)


1週間後、本田は大橋医院の田代に電話をかけ、今度の休診日に伺う約束をした。

提案事項をまとめてみると、結局は小売業への提案と同じようになった。

それは予想していたことで、患者もお客様も一緒だということを自身で確認する結果になった。



大橋医院に入ると、田代の他、看護師2名と、受付をやっている奥さんも同席するということで、応接室にいた。


「それではお手元の提案書を見ながら聞いてください」

本田は主に田代に向かって提案要綱を説明していった。

「最初に伺った際にもわたしは田代さんに言いましたが、皆さんも」と言って他の3人を見た。

「大橋医院にやってくる患者さんはお客様であるということをまず最初に認識して、この提案の内容を聞いてください。そうでないと、もしかしたら反発されるかもしれないことも出てくると思いますので。いいでしょうか」

全員が一応こっくりと、うなずいた。

「皆さんがどこかのお店に行ったとき、どんな接客をされたら嬉しいか、感激するか、ということを自分の身になって考えてくだされば、この提案の内容はよりよく理解できると思います」

「でも患者とお客さんを一緒にするというのは、ちょっとねえ」と、早速奥さんから横やりが入った。

「じゃあちょっと考えてみてください、奥さん。この大橋医院を経営されているのは田代さんと奥さんですよね」

「もちろんですよ」奥さんが答えた。

「それでは次に、この医院の収入源ですが、それは主にどちらからもたらされているんですか」

「それは、決まってるじゃないですか、患者の診察料ですよ」

「その通り。患者さんが持ってきてくれるものです。患者さんが来なくなれば、いくらお医者さんだって、経営できなくなって、つぶれてしまいますよね」

「ーーー」

「ということは、患者さんがいるということで、ここも成り立っているわけです。安定経営は患者さんを何人確保するかということですね」

「ーーー」

「ということはですよ、この医院も一般のお店と一緒だということになりますよね。お店もお客さんがいるから、お客さんが来てくれて、そこで何かを買ってくれるから商売も成り立っていくし、経営できているわけです。いかがですか。わたしが、だから患者さんはお客様だと考えてほしいということは、そういうことなんです」

「………まあ、分かりましたが、ちょっと納得できないところもあるわ。だってドクターなんですよ。患者が病気になって困ったときにやってくるわけで、それを……、病気を治してあげてるんですから、感謝されるということはあっても、何もお客さんだとまで考えなくても、いいんじゃないですか。何もそこまで商売と同じようにへりくだらなくても………」

「う~ん、分かっていただけないですか。困ったなあ。これじゃこれから提案することが、みんなだめになってしまう気がします」

「なあ、真理子」

今まで黙ってやり取りを聞いていた田代が口を出した。

「僕も以前はそう思っていたが、他のドクターやセミナーなんかを聞いてみるようになると分かるんだが、やっぱりなあ、患者さんは、お客様だよ。一般の店だって、そんなにへりくだっているわけじゃないんだ。本当は対等なんだよ。お客様は自分の不足しているところを、店に来て満たすわけで、そのためにお金を払うんだ。店も来た人に商品なりサービスなりを提供して、その対価をもらうわけさ。考えてみれば医者だってさあ、病気を治してもらいたいっていう欲求を持ってやってくるわけで、僕らが病気を治してあげるということは、店でいうところのサービスと同じなんだよ。わかるよな」

「………分かる気もするけど、納得はできないわ。じゃあ何、私たちはサービス業なわけ?」

「ああ、平たく言ってしまえば、そんなものだろう。でもサービス業と違って、僕たちはもっと感謝してもらえるし、だから先生、先生と慕って来てくれるわけなんだと思うんだ」

「そういうことですね奥さん」本田も言った。

うまく田代が奥さんを説得できそうに思った。



<7>へつづく。
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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(その5)

2012-06-27 11:51:32 | 繁盛店物語(創作)
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「患者さんが減っていくーーある開業医の苦悩」(その5)


翌日、本田は開院時刻よりも30分ほど早く大橋小児科についた。

その時刻に患者さんが来ているかどうか確かめたかった。

医院の玄関にはまだ鍵がかかっていた。

駐車場には2台の車がすでに止まっており、中ではお母さんらしい人と子どもが、それぞれ一人ずつ連れていたが、ひとりは眠っていたが、もう1台の車の中では子どもの気分が優れないのか、ぐずっていた。

これはちょっといただけないなと本田は感じた。

お客様を、特に病気の人を外で、もちろん吹きさらしではないけれど、待たせるというのは良くない、と思った。

これも提案の重要な問題として指摘できそうだ。


開院時間になった。

待っていた患者はその2組だった。

開院時刻のちょっと前に2組とも車から離れて玄関の間に立った。

しかし、時間になってもまだ鍵が開かない。

ひとりの子どもはさらにぐずり始めた。

片方は、逆に何だかとてもぐったりしているようだった。

まずいなあと本田は思った。

5分ほど経ってからやっと玄関の扉の鍵が開けられ、患者が中に入っていった。

それを本田は、車の中から見届けてからさらに5分ほどおいてから中に入った。

最初の患者はすでに診察室に入ったようで、待合室にはもう一組のぐずっていた子どもの親子が、絵本を開いて、ぐずりを何とかとやめさせようとお母さんが引きつった笑顔で読んでやっていた。

受付の白衣をきた事務員に来意を告げると、「ああ、聞いています。どうぞそちらで」と言って、絵本を読んでいる親子のソファーを掌で示した。

本田はショルダーバッグをソファーの下におくと、まずトイレに立った。

トイレはきちんと掃除されていた。

ペーパーも昨日の残りではなく、ロールの新しいのがセットされていた。

トイレ用のスリッパも子供用と大人用に2足が準備されている。

大人と子どもが同時に入れるように広く作られているところも、合格だった。

クッションフロアもぞうきんかモップが掛けられているようで、そこは安心できた。

手ふきの側には消毒用のアルコールも置かれていた。

本田は用を済ますと、白い便器にちょっと散った自分のものをペーパーで拭き取り、それと一緒に水を流して、待合室に戻った。


今までの感想と注意点をノートに書き込んでいると、最初の患者の親子が診察室からでてきた。

子どもの顔もほっとしている。

母親は受付で処方箋を受け取り、料金を払うと、受付からどの医院でも聞く「お大事になさい」という声に送られながら、親子は出て行った。

この医院でも今は処方箋で処理しているんだなと本田は思った。

ある相談を受けた薬局で聞いたところによると、くすりの種類が多く、それをすべて在庫しておかなければならないとなると、とてもたいへんだし、
小さな医院でも薬剤師も常駐させなければならないので、人件費を省くために、最近で個人営業の薬局に処方箋を渡すようになってきたらしい。

法律改正もその勢いを加速させたようだ。


その後、午前中は3組の親子が診察を受けたきりだった。

なるほど、厳しい状況だなと本田は感じた。

午前の診察を終えたところで、本田は田代にいとまごいをして、大橋医院を後にした。



<6>へつづく。
(このストーリーは、リアル体験を元にしたフィクションです)

それでは今日はこれで。
あなたの一日が今日もいい一日でありますように。
藤田販促計画事務所、お客様力(ぢから)プロデューサの藤田でした。

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