・鹿児島県霧島市にある「トヨタ車体研究所」の宮村 憲一社長の講演での情報です。
・鹿児島が自動車産業に参入するためのトリガーは何か?(1)
この講演内容は、今年8月に開催された鹿児島自動車関連産業ネットワークの第3回総会での講演記録(3/4回提供分)です。
1)参入タイミング(モデルチェンジに伴う部品の発注時期)
自動車の開発は、IT技術を基盤に「多様化」「スリム化」「スピード」の3つのキーワードで大きく進化してきている。
例えば、「スリム化」では、IT技術のおかげで、設計変更件数が60%減。工数が30%減。
「スピード」ということでは、CATIA、CAEの導入により、実際の車をつくらなくとも、データの中であれこれ検討できるデジタルファクトリー、デジタルアッセンブリーが可能になり、また、CADCAMのデータからそのまま型作成が可能になったため、従来、デザイン決定から27ヶ月かかっていた開発が、10~18ヶ月で完成するようになってきている。
鹿児島県としては、CADCAMへの移行がトリガーとしてあるのではないか。今は日本で行われている自動車開発が、世界中で行われかつ世界同時立ち上げという方向に向かっている。そのためには産学官共同で人材育成を進めることも大事ではないか。
一般論として、自動車業界に参入するタイミングは、モデルチェンジの時と言われている。
ただし、モデルチェンジのラインオフ(工場のラインから完成車がでる)30ヶ月前に重量、目標原価が決定。20~24ヶ月前に具体的な見積行為発生。つまり、デザインが決定するよりもはるか前に、受託メーカー、モノの値段、重量が決定している状態となっている(フロントローディングはここまで進んでいる)。
2)参入ターゲット(調達の現状)
部品の調達権限は、本社の調達部が持っている場合が多い。つまり、我々のターゲットは、愛知(トヨタ)や関東(日産)にいることとなる。
調達は、ほとんどの場合、非常にフェアなコンペで、勝つのは、ほぼ間違いなく最も安い会社。そのため、鹿児島の企業も「1円でも安いモノをつくろう」というところに傾注していかなければならない。
コンペに参画するためには、調達権限のある担当者に認められることが大事であり、認めてもらうためには、技術営業が必要と考えられる。なぜなら、今のフロントローディングの中、主な商談相手は技術屋であり、技術屋が誰と話をしたいかというと、モノづくりが分かっている人と話をしたい(SE=サイマルテイ二アス・エンジニアリング)と考えているのである。
また、“設計とつくるところ(製造、下請け)が一緒になって、「1円でも安いもの」「1gでも軽いもの」「少しでも良いもの」を作りたい”というのが、自動車業界の常識であり、つまり、SEによって軽量化、コストダウン等を提案しうる技術営業ができる会社が求められている。絶対条件ではないが、さらに、デザインイン(開発段階から開発部隊を派遣し、クライアントと一緒になってパーツ設計を行う)ができる自動車産業への参入にとって有利となるだろう。そのためには、設計、技術屋を自社で抱えていることが必要である。
なお、コンペに勝つためには、コンペティター(競合相手)の実力を知ることも大事。価格勝負のコンペにおいて、競合相手に直接聞いたとしても値段を教えてくれるはずもなく、相手が、大体いくらぐらいで作ってくるのかを予測する技術も重要となってくる。
かごしま企業家交流協会
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