対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

数学的帰納法、2つのバージョン

2018-12-18 | パスカルの三角形
新井紀子は『数学は言葉』で次の3つの公理は互いに同値であるといっている。
(引用はじめ)
1. 数学的帰納法
2. 任意の自然数について、nより小さい自然数全体の集合は有限集合である。
3. 自然数nに関する性質Q(n)について、次の2つのことが示されたとする。
  (a) Q(1)が正しい。
  (b) 任意の自然数k<nについて、Q(k)が正しいと仮定すると、Q(n)は正しい。
 このとき、任意の自然数nについて、Q(n)は正しい。(数学的帰納法の別バージョン)
(引用おわり)
数学的帰納法の中身は次の通り。
1. 自然数nに関する性質Q(n)について、次の2つのことが示されたとする。
  (a) Q(1)が正しい。
  (b) 任意の自然数kについて、Q(k)が正しいと仮定すると、Q(k+1)が正しい。
  このとき、任意の自然数nについて、Q(n)が正しい。
バージョンの違いは(b)の表現である。新井紀子の高校生へのアドダイスは1.の数学的帰納法、瀬山士郎のは3.の数学的帰納法の別バージョンを背景にしていると思う。

どちらもkからk+1への移行に着目することになるが、+1の移行が、1.では最初からどれも同じ大きさの+1である。一方、3.では、Q(n)を示すときの+1はそれまでの+1とは違う大きさをもつ印象を受ける。また、1.では無限集合だけを見ているが、3.では有限集合を基礎にした無限集合を見ることになる。
わたしはパスカルの『数3角形』で示されている数学的帰納法を3.のように捉えてきた。それは有限集合から無限集合へと拡張する数学的帰納法である。これがオリジナルバージョンだったと思う。これを数学的帰納法のパスカル版としよう。
これに対して、1.は改訂され整理された数学的帰納法である。数学的帰納法のペアノ版というところだろうか。

ペアノ版は「ドミノ倒し」と相性がいい。パスカル版はどうだろうか。同値な命題だから、「ドミノ倒し」は否定できない。しかし、別のバージョンだから、「ドミノ倒し」とはちがったモデルを提起する余地はあるだろう。これをやってみよう。

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