対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

『グレイゼルの数学史Ⅲ』を読む

2020-05-29 | 日記
『グレイゼルの数学史Ⅲ』の公式(1)は、やはり、ド・モアブルの公式だった。興味深かったのは、抜けていた(2)(3)式は、ド・モアブルの公式の原型とそれを現代に翻訳した式だったことである。馴染んでいたド・モアブルの公式ではなかった。公式(3)は次のようだった。ド・モアブルの関心はcos Bをcos nBで表すことだったという。

オイラーがはじめて『無限解析入門』(『オイラーの無限解析』)で現在の形に導いたという。代数的手法による無限解析のために、n倍角の公式が選ばれ、1743年の公式を「転」じるために、ド・モアブルの公式が導出されたと思われる。

「思い込み」の由来

2020-05-28 | オイラーの公式
オイラーの公式の発見から、eixのマクローリン展開の契機を排除するという「思い込み」は、オイラーの公式の最後の場面(『無限のなかの数学』)を誤解したことに由来する。
志賀浩二は、現在の教科書での導出を紹介した後、次のように述べていた。

「この完成した数学の形式のなかからは、もうオイラーのたどった無限の道は消えています。」

わたしはこの「無限の道」が公式の最初の発見と思っていたから、「完成した数学の形式」を「無限の道」の後(時間的に)に想定してしまった。しかし、「オイラーのたどった無限の道」が独特(代数的手法)だったのであって、「完成した数学の形式」を「無限の道」の前に想定しても何も問題はなかった。アプローチが違っているのである。

オイラーの公式の発見には起承転結がある。「無限の道」は「転」で行われている。「起」「承」で、eixのマクローリン展開があっても、何の差し支えもないのである。


オイラーの公式、起承転結。見直し

2020-05-27 | オイラーの公式
オイラーの公式は『オイラーの無限解析』で、初めて提出されたものではなかった。グレイゼルの指摘する前史を認めることになった。しかし、初めて提出したと考えたときの「思い込み」をまだ引きづっていた。それは ex のマクローリン展開はあったが、eix はなかったという想定である。ここは捨てなければならない。
志賀浩二によれば、オイラーは『無限解析入門』で「十分熟知していた微分積分について1つも触れていない」という。これは「無限級数や巾級数のなかにも積極的に代数的手法をとりいれていこう」というオイラーの思想によるものである。

『オイラーの無限解析』での公式の発見は「代数的手法」によるものであり、微積とは別の場所でなされたのである。オイラーは「緒言」で次のように述べていた。「私は通常のレベルの代数の諸規則に基づいて、普通なら無限解析で取り扱われることになっている多くの問題を解決した」。

ひさしぶりの岐阜県図書館

2020-05-26 | 日記
コロナで図書館が休館する前から、図書館の利用はすべてやめていた。先週の土曜日に、資料を検索するために、岐阜県図書館のサイトを開いたら、火曜日(5.19)から一部サービスを始めたことを知った。予約資料の貸出だけ行うという(全国共通のようだ)。

今日、予約した本を受け取りに岐阜県図書館に行って来た。移動は、入口と特設窓口の間だけに制限されていた。熱のチェックもあった。窓口はアクリル板で仕切られていた。係員はバーコードを表向きに置くよう指示して、カードに一切、手を触れなかった。利用客は数名いたように思う。

ネイピアとビュルギの対数の底

2020-05-25 | 指数と対数
ネイピアは対数を作ったが、ビュルギもネイピアとは独立に対数を作った。ネイピアはティコ・ブラエと交流があった。ティコ・ブラエに計算術を講義している。他方、ビュルギはケプラーと交流があり、ケプラーの計算係をしていたという。
いずれも、1に極めて近い連続的な比が進行していく過程に着目した。

ネイピアは1より小さい比を考えた。
初項107、公比(1-1/107)
ビュルギは1より大きい比を考えた。
初項108、公比(1+1/104)

ネイピアの一般項は、
x=107(1-1/107)y
で、これを変形すると次のようになる。
x/107=((1-1/107)107)y/107
赤字の部分は(1-1/n)nのかたちである。

ビュルギの一般項は、
x=108(1+1/104)y
で、これを変形すると次のようになる。
x/108=((1+1/104)104)y/104
赤字の部分は(1+1/n)nのかたちである。

n→∞のとき、
(1+1/n)n→e(ネイピア数、2.718281828…)である。
これに対して、
(1-1/n)n=(1+(-1)/n)nである。
したがって、
n→∞のとき、(1-1/n)n→e-1=1/e である。

ネイピアの対数の底は1/e、ビュルギの対数の底はeだった。

ジョン・ネイピア(1550-1617)スコットランド
ヨスト・ビュルギ(1558-1632)スイス


オオシオカラトンボのメス

2020-05-22 | 庭の小動物
朝、洗濯物を干すときに、トンボを見つけた。南天の葉に止まっていた。近づくと別の葉に飛んで行った。しばらくするとまた戻ってきた。
1枚だけ撮れた。黄色い胴体、以前見かけたムギワラトンボ(シオカラトンボのメス)なのだろうか。午後になって調べてみた。
これまでオオシオカラトンボのオス、ムギワラトンボ(シオカラトンボのメス)を記事にしていた。写真を拡大してみると、翅の付け根が黒っぽい。これはオオシオカラトンボをシオカラトンボと区別する目印だった。朝見たのはオオシオカラトンボ(大塩辛蜻蛉)のメスだった。

指数と対数の起源8

2020-05-20 | 指数と対数
y=ax と x=loga y は同値な関係にある。これらの式の a を底(base)という。この底は、もともとは等比数列の公比(common ratio)であった。この意味において、logarithm は「底(ロゴス)の個数」(遠山啓、参照)といえる。

上の2つの式は、底を2とおいた次の数列の上の段と下の段に対応する。
12481632641282565121024
012345678910
x と loga yは同じものを指す。xの方はシュティーフェルが名付けたexponentで、loga yの方はネイピアが名付けたlogarithmである。

上の段には「真数」が並んでいるのだが、「真数」の英訳を探して、意外な気持ちになった。英訳は anti-logarithm だったからである。「真数」が先にあって、それから派生した「対数」と思っていた。しかし、「反」が先行したとは思えない。「正」から「反」が順当な流れとすれば、x = loga y が先に認識され、その積み重ねによって、後になって、「真数」の構造(y = ax)が把握されたということであろう。

指数と対数の起源7

2020-05-18 | 指数と対数
指数と訳されるexponent を造語したのはシュティーフェルだった(1544年)。シュティーフェルは次のような対応を取り上げた人である。
12481632641282565121024
012345678910
exponentは、ex[外に]、ponese[置く]から作られたものだという。何を外に置いたのかといえば、等比数列に隠れている等差数列である。
ネイピアは、シュティーフェルが外的に捉えたexponentに内的な構造を見た。外に置かれた等差数列に「比の数」を読みとり、logarithms (logos(比)+arithmos(数))と名付けた(1614年)。

exponentとlogarithms は同じものを指す。それは冪(an)の右肩の小さな数nである。小さいまま見るのが指数(exponent)で、それを大きく取り出すのが対数(logarism)といえよう。右肩の表記を始めたのはデカルトで、1637年だという。