月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

ひらふすべ

2020-08-22 23:26:41 | キノコ
暑い!8月に入ってから突然に本気を出した太平洋高気圧のせいで、もはやコロナウイルスとかどうでもよくなるレベル。雨が一滴も降らないからキノコを探す必要もない!楽でいいぜ!と思いながらも、なんとなく神社の裏をのぞいたら、あった!キノコが!!

ヒラフスベだ!不定形でなんともつかみどころのないクッキーのタネ生地みたいなヤツ。でも触ると意外に硬い。

実はヒラフスベは正式な名前ではない。その正体はアイカワタケというキノコ。
アイカワタケは、なんと普通のサルノコシカケ型とヒラフスベ型との2種類のキノコを作る変わりダネなのだ。ヒラフスベ型はノウタケみたいにキノコ全体が胞子化して、成熟したあとに崩れ去っていく。この仲間ではなかなか見ないパターンで面白い。


あまりの暑さに汗をかいていらっしゃった。


役に立たないきのこの本 写真×編みきのこ

2020-08-12 12:48:07 | キノコ本
『役に立たないきのこの本』
嗚呼、なんといさぎよい響きであろうか。

生産性向上!残業削減!働き方改革!おもてなしオリンピック(延期)!!

そんな号令を横耳で聞きながら、しれっと「お役に立てず、すんません(・ω<) テヘペロ」などと言い切ってしまえるその心意気がすがすがしい。

「働きアリの法則」といって、アリのうちの2割がよく働き、6割がふつうに働き、残りの2割はサボっている、というのがあるが、この本の著者はきっと最後の2割に入るであろう。
しかも、その中の50人に1人くらいしかいない、「なんの役にも立たない仕事を全力でやっているアリ」に違いない。
巣の外で砂粒を並べてハチドリの地上絵を作るとか、死んだ昆虫の左の触角の先っぽをコレクションしてるとか、きっとそんなような輩だ。

役に立つのは素晴らしい。しかし、全員が役に立ってはいけない。それは長い目で見ればみんなを疲弊させる上に柔軟さを奪い、創造性をなくしたあげく、マンネリに満ちたカチコチの硬直社会を作り上げてしまうのだ!
今日の訓示は以上!解散!!

・・・あ、ゴメン。キノコ本の紹介だったよね。

『役に立たないきのこの本』 役に立たないきのこ(三橋憲行+三橋こずえ) 著

手編みの創作きのこニットの奥さんと、キノコ撮影の旦那さん、ハイレベルなキノコ夫婦が二人三脚で作り上げた非・図鑑?エッセイ?のちょっとアラカルト的な??本。

身近なものから、なかなかお目にかかれないものまで、とがった個性を持つ約50種のキノコを写真と手編みニットで紹介するという斬新な内容。
しかも図鑑として使うことを初めから放棄して、見てて不思議に感じたこととか、どうしても気になることとか、鑑賞するときのイチ押しポイントとか、どうでもいいことに特化したスバラシイ構成だ。さすが働かないアリの鑑。

そして、表紙がよりによってハエのたかるカニノツメっていうのを見てもわかる通り、そのキノコのセレクションは通なラインナップである。

ズキンタケやスエヒロタケといった渋~いものから、ドングリキンカクキンみたいなマニアックなもの、さらにタマハジキタケとかチャダイゴケとか、トリッキーな形のものまで。
ムラサキナギナタタケやクモタケあたりまでくると、これをわざわざ毛糸で編むことにどんな意義があるのか、真剣に悩んで日が暮れてしまいそうだ。

しかし、ギャラリーのそんな疑問もどこ吹く風。
手を抜かない手編みキノコは、細部の工夫までおさおさ怠りがない。
マントカラカサタケのツバを、本物と同様に可動性にしたり、スッポンタケの卵の割れ目から見える寒天質を表現したり。
カニノツメを訪れたハエやクモタケに寄生されたクモまで編んでいるのに至っては、感激のあまり涙があふれそうです( ;∀;)

その手編みキノコの背景を飾るジオラマ風のセットも、100円ショップでそろえた感満載の庶民的な雰囲気にもかかわらず、発生環境を可能なかぎり再現したステキなもので、展示館に陳列するべく、国立科学博物館にアポを取りたくなること請け合いだ。

キノコそれぞれの特徴をきっちりとらえている写真も侮れない。写真だけでも充分に鑑賞にたえる、きのこ愛あふれた作品だと思うのだが、それに加えて、ニットのキノコと本物のキノコを見比べて「いやー。ここがいま一つ表現できてないねえ」「そう!ここ!ここが似てる!!」とか言って楽しめるというのは、なかなか他のキノコ本では無いことだろう。

さらに、『科学的な裏付けや正確性もほとんどありません』と言いながら書かれている、ちょっとすっとぼけたような本文も、実はつぶさな観察と的確なリサーチに裏付けられたものであることが透けて見えるから油断ならない。
「能ある鷹は爪隠す」。この本を読むとき、我々はそれを心せねばなりませんなぁ、ゴッホン。

そのコンセプト、デザイン、クオリティ、どれをとっても独創性に溢れた価値ある一冊は、じつは自費出版で、ごく限られたルートでしか入手できないという・・・。
欲しいという方は、ネットショップ「役に立たないきのこ」へどうぞ。

もしおヒマがあればWebサイト『役に立たないきのこの写真帖』にも足をお運びあれ。



ページ一例。右に写真、左に編みぐるみ、下に文章の構成。お互いが邪魔しないすっきりとしたレイアウトが読みやすい。
なんかこの本の編みぐるみ見てると、普通のキノコ型キノコがすごく物足りなく見えてくるのは気のせいだろうか。作成者の気合いが違う!?

『作り方のヒント』にこだわりが詰まっていて面白い。

ひめきくらげ

2020-05-01 21:29:50 | キノコ
黒いキクラゲ4人衆の一角。

といってもこいつはかなりキクラゲらしくない。たしかにキクラゲのようにぷにゅぷにゅとはしているが、枯れ木の表面にべたっと貼りつき、ともすりゃ苔かゴムか何かにしか見えない。これが乾くとさらに絶望的で、ノリ弁当の海苔みたいになる。いったいこれのどこが「ヒメ」なんだか。

でもキクラゲはキクラゲなのでそこはそれ食える。一応・・・。

うん。でもキクラゲのぷにゅぷにゅ感・・・つい繰り返し指でぷにゅぷにゅ押してしまう。これはたまらない。







アミガサタケ栽培は儲かるのか??

2020-04-25 21:24:12 | キノコ栽培
さて、先日に日本初のアミガサタケ栽培の記事を書いたが、商売として見た場合、アミガサタケ栽培はどうなんだろうか?検証してみよう。

まず、前回に紹介した中国のブラックモレル産地からの動画が、せっかくビジネスについての情報盛りだくさんだったので、その内容を紹介しよう。なお、金額に関しては《1元=15.5円》で換算している。

まず、気になるのがアミガサタケのお値段
アミガサタケ優良品は1本が平均10g(中身が空洞なので見た目より軽い)で、約30円。キロ当たりにすると3100円だ。
品質の劣る一般品はキロ当たり2160円の値がつく。
うまく育てれば優良品率は7割ほどなので、平均するとキロ当たり2800円ということになる。

ちなみに日本のキノコの卸価格を見ると、エノキタケはキロ当たり200円前後、シイタケは1000円前後、それ以外のキノコはキロ当たり400~500円と言ったところだから、卸価格で2000~3000円がつくアミガサタケは高価なキノコだと言っていい。

では土地あたりの生産性はどうだろうか。
中国で標準的な200坪(正方形にしたら26メートル四方、小学校の25メートルプール2つ強くらい)の畑で、うまくやれば200キロ採れるそうだから、56万円の売り上げがあることになる。あれ?意外と少ない?
中国の給与水準は近年うなぎ登りで、特に都市部の中間層では日本人の平均を上回ってきているくらいだが、農村地域はいまだ置いてけぼりで、その平均年収は100万円に届かないと言われている。
アミガサタケ栽培は、あくまで冬の裏作で、夏には夏の作物が育てられるから、それを考えれば悪くない収入なのではなかろうか。

また、アミガサタケは乾燥品として流通させられるのが強みだ。乾かすと重量が15%まで減ってしまうが、値段は10倍以上(キロあたり25000~37000円)で売れるようになる。乾燥品にすることで経費と手間はかかるが、うまくすれば売り上げを100万円近くまで伸ばすこともできる計算になる。


今度は、日本国内を見てみよう。
アミガサタケは日本国内でも採ることができるが、販売するほど採るのは難しい。仮にキノコハンターが血眼になって採ったとしても、せいぜい数十kg止まり。乾燥したら5キロくらいだ。高級料理店に直接卸すくらいはあるが、市場に出回るほどではない。市販で出回っているのはほぼすべて乾燥の輸入品だ。フランス産が多いが、フランスで袋詰めしたというだけで原産国は別だったりすることも多い。パキスタン、チリなど。
市場価格を見ると、20g入りの袋に2500円とか3000円とかいう値がついている。キロ当たりにすると、120000円~160000円ってところか。さきほどの中国の卸し価格の4~5倍。ひとつ桁が違っている。

中国で採れた200キロのアミガサタケが、もしこの値段で売れたとしたらいくらになるだろう。200キロの生アミガサタケを乾燥すると30キロになる。これをキロ当たり14万円で売ったとすると!420万円!!やったーーー!!

だが、ちょっと待ってほしい。これは、あくまでも小売り価格だ。フランスから輸入された天然モノとしてのプレミアもついている。もし国内で栽培を始めたらこの値段がつかないことは頭に入れておいた方がいい。そう考えると、中国の倍の価格・キロあたり50000~75000円くらいが妥当な線じゃないかなぁ。だとすると一回の収穫で150~225万円か。うーん、だいぶ大人しくなったな。


さてさて。ここまでこまごまと電卓を叩いてきたのだが、実はアミガサタケは、他の栽培キノコと比べると大きな足かせがあることにお気づきだろうか?

それは「畑が要る」という足かせだ。
キノコの菌床栽培では、菌床のビンやブロックを棚に並べることで何段も重ねることができる。そのおかげで、狭い土地でもたくさんの菌床が並べられるから、高い収量を上げられる。だがアミガサタケは畑でしか育てられないので、上に積み重ねることはできない。
この時点で生産効率は半分以下だ。

さらに、もう一つの足かせがある。それは「回転効率が悪い」ということである。
中国の栽培を見てわかる通り、これは冬から春にかけてしか行われない農法だ。年に一回。

一方で、日本の他の菌床栽培は、ひとつの施設で年に何回も収穫することができる。大規模な空調施設を持っているところならば、休みなし365日態勢で生産し続けている工場も多い・・・というかそれが普通だ。

仮にアミガサタケ畑をフル稼働することを考えると、年に何回くらい栽培できるだろうか。一回の発生にかかるのが40日。でも収穫が終わるまでに少なくとも10日くらいかかるだろうし、準備や片付けも必要だから、最低でも60日は必要だろう。そうすると、最大で年6回収穫することができる。
実際には真夏の栽培は困難だし、そもそも季節外れにアミガサタケがちゃんと育つ保証はない。その上、続けて栽培し続けると病気が発生し収量が落ちていく「連作障害」が起きる心配もある。そういった技術的な困難をぜんぶクリアしたとして、それでも年4回くらいが限界じゃなかろうか。

さっきの一回当たりの売り上げを4倍してみよう・・・すると!!年商600~900万円!!
うーん、でもこれMAXうまくいった場合の、しかも売り上げだからな。この広さだと一人でやるの厳しそうだから人件費かかるし、土地やハウスはもちろん、菌床を作ろうと思ったら専用の設備もいる。菌床の殺菌や暖房には燃料が要るし、おが粉代、タネ菌代、水道代、培養施設のランニングコスト、その他諸経費を差し引いたらどのくらい残るんかな・・・。
あれ?けっこう微妙じゃないか??

ここまで計算してきて重大なことに気づいてしまった!!
アミガサタケ栽培はあんまり儲からない!(+o+)

欧米で栽培法がそれなりに確立してるっぽいのに大々的に栽培してる気配がないのは、もしかしたらこういう理由によるのかもしれない。
それでもアミガサタケ栽培がしたい!という人のために、いろいろ前提条件を考えてみよう。

①乾燥アミガサタケは高級料理店やホテルに直接ふっかけてキロ10万円で売る!
②菌床は購入する。アミガサタケを植えろといってゴリ押しできるような、とっても優しい菌床メーカーが好ましい。
③放棄された農業ハウスをタダ同然で借り受ける。だいじょうぶ、捜せば見つかる!あ、ついでに井戸がついてるといいな♡
④アミガサタケを愛でるためならボランティアで働けるという、天使のような労働力を見つける
⑤副業を持つ

どうだ!これならバリバリ儲かるぜ!!

長々と書いてきてこの結論かよ(^-^;
ハルカインターナショナル、がんばれー!

日本初のアミガサタケ栽培!

2020-04-16 22:34:00 | キノコ栽培
先日、岐阜県に本拠をおく株式会社・ハルカインターナショナルから、センセーショナルな発表があった。

『日本初・アミガサタケ(モリーユ)の人工栽培に成功』

ハルカインターナショナルと言えば、キノコの菌床栽培として日本で初めて有機野菜規格(有機JAS認証)を得たのをはじめ、国内初のキヌガサタケ栽培、さらにそれを足がかりに循環型社会を目指す事業提案(SDGs)、おまけにクラウドファンディング募集など、旧態依然だった業界に現代的ビジネスの旋風を巻き起こしている、いま注目の企業だ。

そしてアミガサタケ。またの名をモリーユ!またはモレル!
春の訪れを告げるキノコとして広くヨーロッパで愛されており、食用キノコとして高い評価がある。
特にフランスで好まれ、キノコの王様・ヤマドリタケに匹敵する価値を持つほか、「筋金入りのキノコ後進国」とすら言われるイギリスやアメリカでさえも人気がある。アメリカには「モレル・フェスティバル」を開催する町もあるらしい。

その人気ゆえ、アミガサタケ栽培を夢見る者は多く、過去に幾人もチャレンジしてきた。しかし、そのほとんどが失敗するか、または部分的に成功するものの、安定した生産が難しく商業ベースに乗らない、などと聞いていたが・・・。

調べてみると、なんとこの10年ほどの間に、中国でアミガサタケ栽培が確立されたようで、かなりの量産に成功している、との情報があった。え?10年?けっこう前からやってるやん!聞いてへんぞ。
で、意外なことに、YouTubeで検索すると動画がたくさん落ちている。栽培技術とかさぞかし難しくて社外秘にしてるんじゃないかと思ったら、けっこうコアなことまで公開している。すげー、オープンだわ中国。

中国で栽培されているアミガサタケは、イエローとブラックの2種類ある系統のうちのブラックの方。
日本ではトガリアミガサタケに代表される、こげ茶色で先端の尖ったタイプのアミガサタケだ。

中国のアミガサタケ栽培についての論文にはMorchella importuna (モルケラ インポルトゥナ・・・学名。和名はついてない)という種類が使われると記してあるが、現地の栽培品種がすべて同種かどうかはよくわからない。

現地では『羊肚菌(ようときん・イァンドゥヂィン)』・・・”羊の臓物キノコ”と呼ばれている。羊の臓物などと言われてもなんのこっちゃわからんだろうが、焼肉の『ハチノス』といったら分かる人がいるかもしれない。ちょっとマイナーな焼肉の部位で、牛の第二胃(牛は胃が四つある)の肉のことを指すが、『羊肚』もおそらくハチノスと同じ役割を持つ臓器だ。表面が蜂の巣のように多角形の凹凹で覆われており(グロテスクゆえ閲覧注意)見た目がアミガサタケに似ている。

アミガサタケは菌床をつかって栽培するが、シイタケやエノキタケのように棚にならべるのではなく、畑に埋めて育てる。アミガサタケを育てるには菌糸が菌床に蔓延するだけでは足りなくて、「菌核」という菌糸のカタマリを作らせないといけないのだが、それは土の中の微生物の力を借りないとうまくいかないようだ。

四川省の徳陽という地方で大規模栽培している産地の動画を見てみよう。

①11月ごろに菌床を仕込む。おがくずを主原料にした培地を袋詰めして殺菌したのちに菌を植えつけ、3カ月ほど培養する。
②2月ごろ、黒いビニール製資材(寒冷紗)で覆った簡易ハウスをつくり、圃場に菌床を埋める(または砕いてバラまく?)
③15℃、スプリンクラーで多湿を保ちながら約40日、圃場に菌を蔓延させる。コケが生えるような状態がベスト。
④3~4月、菜の花が咲くころに収穫

といった流れである。思ったより粗放的に栽培してる感じで、そんなに複雑なノウハウがあるようには見えない。菌糸を培養するだけならわりと簡単と聞いたことがあるし、適した品種さえ見つかれば、栽培は難しくないのかもしれない。

ちなみに、中国で標準的な200坪(正方形にしたら26メートル四方、小学校の25メートルプール2つ強くらい)の畑で、最大200kgの収量が見込めるそうだ。
なんかこの動画、アミガサタケがいくらで売れるかとかすごい細かく解説してるけど、一般向けの番組にここまで必要か?(笑)

ちなみに、先ほどの論文にはアミガサタケ栽培にENBなるものが重要と記してある。ENBとは意訳すると「ポイ置き栄養袋」と言った感じで、小麦や米ぬかを袋に詰めて殺菌しただけのものなのだが、これに穴をあけて畑の地面に置いておくと、アミガサタケの菌糸が穴から侵入して栄養源にする、という。他のキノコ栽培では目にすることがないユニークな方法だ。ただ、この四川の産地では、ENBにあたるものが使われている気配がない。


いっぽうで、イエローモレルの方も栽培に向けて研究されているようだ。
アメリカでは、イエローモレルの菌床が実際に販売されている。探してみると、自宅の庭で栽培にチャレンジしている動画もある。

ただ、これが大規模に栽培されているという話は聞かない。あるいは企業秘密として公にしていないだけかもしれないが・・・
思うに、イエローモレルはブラックモレルに比べて物質を分解する能力が弱いのかもしれない。野外で観察すると、ブラックモレルが落ち葉がたまったような肥沃な場所を好むのに比べ、イエローモレルは清潔な開けた場所を好む傾向がある。木や草の根に菌根を作ることができるそうなので、その差なのかもしれない。

・・・と思ってたらこんな記事を見つけた。これも調べないと・・・

以上、長くなったが、ビジネスとしてアミガサタケ栽培はどうなのかについても後日まとめてみようかと思う。










森と菌根のネットワーク

2020-04-09 22:30:37 | キノコ知識
菌根についてもう少し詳しい話をしたいと思う。

菌根は、地面を掘り返さないと見えない。キノコが生えて初めて「ああ、このナラの木に菌根菌がついてるんだな」とわかる。
その地面の下でどのように菌類がはたらいているか、ってことに関しては、まだ研究途上でわかっていないことがあまりに多い。

それでも少しずつわかってきたことをかみ砕いて説明しようと思う。


まず、菌根についてよく勘違いされるのは、このイメージだ。1本の木に、1種類の菌根菌。キノコが生える際には、木をぐるりと取り囲むようにして生えて、いわゆる「菌輪」をつくる。

もちろん可能性としてはこのパターンもありうると思うけど、大半の場合、そうではない。必ずしも菌根菌が1本の木を中心にして展開するわけではないからだ。


実際のイメージはこのような感じだ。菌根菌は、胞子が着地した地点から菌糸の生長を開始する。その場所は本人には選べないので、そこからとにかく周囲に菌糸を広げて、共生に適したパートナーを探すことになる。運よく根っこと巡り合えたら、そこで菌根を作ることができる。

菌根を作る相手は、なにも1本の木とは限らない。むしろ複数の木の根っこがある方が普通ではないだろうか。

ここで面白いことがある。図の下の方、A・Bという2本の小さな木があることに注目してほしい。これは種から芽生えたばかりの苗木だ。

Aの苗木は親の木のすぐ近くに、Bの木は離れて生えている。
Aは親の木の菌根菌が展開している場所に生えてきたので、すぐにパートナーの菌根菌をみつけることができた。
Bは親の木から離れて生えていて、菌根菌がすぐにはみつからない状態にある。

この結果どうなるか。Aは生き残る確率が高くなり、Bは多くが枯れてしまうのだ。

このとき、親の木とAの苗は菌根菌を介して間接的につながっている。まだ明らかにはされていないが、もしかしたら親の木が得た栄養が子の木に融通されているなんてこともあるかもしれない。
少なくとも、親が養った菌によって子が生きることができるわけだから、それが親の木の「愛情」なのだ、と言っても間違いじゃないと思う。そう考えるととてもおもしろい。

さらにこの図を見ると、親の木は菌根菌を介してさらにとなりの木と間接的につながっている。となりの木はさらにとなりの木に。親の木たちどうしも、菌類を通してゆるやかにつながり合って暮らしているのだ。つながりあった木は菌類を通して情報を共有しているという研究もあり、もしかしたら栄養をわけあうようなこともしているかもしれない。菌根菌の網が、人間でいうところの「コミュニティ」のように、まさに樹木のセーフティーネットとなっている可能性がある。


そして、菌根菌は1種類とは限らない。この図では赤・青・黄、3種類のキノコが競争関係にあるのを示してみた。違うキノコどうしは混ざりあわず境界線を作ってにらみ合うが、それでも木と木のつながりは乱れない。

さらに言うと、キノコと共生関係を結べる樹木も1種類とは限らない。たとえばマツの仲間もキノコと共生関係を結べるが、マツと契約できるキノコにはナラ類とも契約できる種類が多い。

こうして、マツとナラという全く違う種類の木がキノコを介して協力し合うことになる。たとえば松枯れ病が流行ってマツが大量に枯れてしまっても、ナラの木が菌根菌を守ってくれているので、マツの種子さえ残っていれば、すぐさま復活することができる。

こうして菌根菌は樹木の安定性に貢献することを通して、森の生態系を守ってきた。キノコは縁の下(あるいは緑の下!)の力持ちなのである。






とがりあみがさたけ

2020-04-04 22:33:12 | キノコ
春。桜の咲く季節になった。桜と言えば・・・そう、アミガサタケだ。

サクラの花が咲いても上を見ずに木の下ばかり探しているのは興ざめも甚だしいが・・・冬のあいだキノコをずっと待ちわびてきた身としては、もう切実に会いたいお方なので、これは仕方ない。ちょっと見た目がアレだが、「キモい」とか言わないでやってほしい。これは自然の造形美なのだ。

アミガサタケには大きくブラック系とイエロー系があって、このトガリアミガサタケはブラック系の代表種。
こう見えて欧米では美味しいキノコとして名高い。

必ずしも桜の木の下にあるわけではないが、ちょっと日陰気味でほどよく落ち葉の積もったような場所に桜の木を見つけたら、ちょっと探してみてほしい。もしかしたら見つかるかも。

四コマまんが『菌根菌はサービス業』

2020-03-27 06:19:46 | キノコ創作
菌根菌で思い出した。おととしの秋に滋賀で開催した『めっちゃかわいいきのこ展』。

その展示品で、無謀にも四コマ漫画を作成したのだ。お堅そうな博物館で四コマ漫画を展示するだけでもまあまあ無謀だが、その制作を絶望的画力の私が担当したものだからさあ大変。

多少なりとも絵心があれば30分くらいでサラサラーンと描けそうなものを、三日がかりでウンウン言いながら作って、それでようやくこのクオリティ。ほぼ事故(笑)
でもせっかく作ったんだから有効活用するとしよう。「味がある」と言ってくれ。


・・・そう、菌根菌はサービス業だったのです!
樹木は菌根菌のおかげで心おきなく木を大きくすることができ、他の木よりも日当たりが良い高いポジションを確保することでさらに有利になります。ただしその代わりに、菌根菌を養うためのエネルギー(漫画で言うところの「料金」)をかなり割いているようです。

ちなみに木材や落ち葉を分解する腐朽菌は清掃業・廃品リサイクル。物質循環の回転を早めることで森の生産力を底上げしています。

ちなみにamanitaは学名でテングタケ属のこと。イグチ類やベニタケ類と並んで、(外生)菌根菌の代表的キノコです。
アマニタプライムはただいま無料体験実施中。キャンセルも簡単です。


菌根を見つけた!

2020-03-24 21:10:04 | キノコ知識
今日はボランティアで公園の側溝を掃除!
秋に落ちた大量の落ち葉で詰まってしまうのを防ぐために取り除くのだ。楽勝!

・・・と思ってたんだが。何年も放置してあったせいか、落ち葉は表面だけで、溝にたまってたのは大量の土だった!
あげく、木の根っこがどこからか侵入してきて、側溝の中に網の目のように張り巡らされている。土を掘りだそうとすると、カーペットみたいに全部ひとつながりになってて、スコップでは歯が立たん(;'∀')
太い根っこを切って、力づくで引っぱり出すと、ズルズルと何メートルもつながった土と根っこが出てきた。クッソ重い!

するとその時。
土の中に白いものが目についた。あーっ!これは!!

菌根やん!

菌類には植物の根っこにとりついて共生する種類がいる。
菌類がとりついた根っこは菌糸で覆われて、栄養や水のやりとりをスムーズに行えるように融合し一体化する。これを「菌根(きんこん)」と呼び、また、菌根を作る菌類を「菌根菌」と名付けている。

菌根菌は植物が光合成で得た栄養をわけてもらう代わりに、植物のために働く。
菌根は病害菌や乾燥などに対して防御力を高くしてくれるのにくわえ、菌糸が回収した水や養分を融通してもらえるようになるので、植物にとって頼もしいパートナーとなるのだ。

私はもちろんその存在を知っていたけれど、こうして掘り出す機会は今まで無かった。こんなにきれいな菌根を観察できたのは今回が初めてだ。感激!


ふつうは茶色か黒の根っこが白くなっている。厚めのコーティングで覆われていて太くなっており、先っぽも丸っこい。なんだか骨折した時につける包帯のギプスのようだ。
むやみに分岐している個所もあって、そこはなにやらモジャモジャしている。
よく見ると、菌根から、さらに細かくモヤモヤと生える白い毛が見える。これも菌糸なのだろう。この細い毛で植物の根っこでは届かないような狭いスキマにも入り込み、養分を持ってくることができる。

ちなみにこの根っこはアラカシのもの。このあたりではごくごく普通にみられる常緑のドングリの木。キノコとの共生樹木だ。

そして気になる菌の方は・・・東大・奈良研究室のホームページにある『外生菌根図鑑』によれば、これだけ整った形の菌根を密集させられる種類はけっこう限られる感じだ。
ただの絵合わせで当てずっぽうになるけど、ベニタケやチチタケの仲間の菌根と雰囲気が似ている。梅雨時になればこのあたりにはニオイコベニタケやキチャハツ、アカシミヒメチチタケ(?)やニオイワチチタケなどのキノコが生えるから、そのあたりかもしれない。

菌根菌は、森林のなりたちを知るうえでとても重要な縁の下の力持ち。木と菌類の関係はとても面白いので、後日、もう少し掘り下げる記事を書こうと思う。





すえひろたけ

2020-03-22 01:29:48 | キノコ
スエヒロタケ。カワラタケと並び、もっともありふれたキノコのひとつ。

発生する木は広葉樹、針葉樹を問わず(竹にだって生える)、乾燥にもめっぽう強いので、森はもちろん、人の生活圏でもいたるところで見かける。


ふさふさとして白くけば立った傘は、裏を見ると1枚のヒダが2枚に分かれているというおもしろい特徴を持っている。このヒダがなかなか美しい造形で、ド普通種ながら侮れない。

「末広がり」な形からつけられためでたい名前とは裏腹に、キノコとしては珍しく人間に対して病原性を持っている。
「スエヒロタケ感染症」にかかると、肺や気管支にアレルギー性の炎症を起こして、咳やタンが止まらない、ぜいぜいと息をするなどの症状が出るそうな。
べつに身体にキノコが生えるわけではないが、肺の中で菌糸を伸ばすだけでもスゴイ。

こう聞くと怖くなってくるが、よほど免疫が落ちない限りはかからない病気なので、それほど心配することもないようだ。肺炎の原因なんて他にいくらでもあるし。
ただし、この病気はマイナー過ぎるあまり、診断できる医療機関があんまりなかったりするから、そういう意味では厄介かも。


これは傘がバラバラに割れててちょっとおもろい

近年の解析では、白色腐朽菌としては分解力がかなり弱い(リグニンがほとんど分解できない)ことがわかったらしい。意外だな。

まつげごけ

2020-03-17 23:21:49 | キノコ
ウメの木の樹皮にベタベタ張り付いてるコケみたいなヤツ。マツにもサクラにもブナにもクスノキにもベタベタ。あまりにもありふれているので、普通の人は「コケっしょ?」程度でほとんど無関心に見過ごしているのだが、こいつら実はコケではない。

「地衣類」と呼ばれている、れっきとした菌類の仲間である。
見た目がどう見ても植物に見えてしまうのは、それは仕方がない。なんたって光合成をしているのだから。
彼らは藻類を内部に飼っていて、住みかを提供する代わりに光合成産物を分けてもらって生活している。家賃収入で暮らす大家みたいな??

動物界でも、サンゴの仲間に藻類と共生するものがいるが、地衣類はまさしく「菌類界のサンゴ」と言えよう。
極寒の地や火山の近くなど、ほとんど暮らすのが無理そうな過酷な環境でも育つことができるタフな連中だ。

さて、この写真の地衣類、ウメの木に生えてるからウメノキゴケだろうといい加減に考えてたらぜんぜん違った。ウメノキゴケだけですんごいたくさん種類があっる(+o+)
絵合わせで調べたかぎりでは、どうもマツゲゴケという種類な気がする。


つばききんかくちゃわんたけ

2020-03-14 22:40:04 | キノコ
暖かい冬だった今年は春の訪れも早い。桜の花の便りも早々に聞けそうだ。

そしてキノコの世界にも春が巡りつつある。
実を言うと、キノコは冬から春を迎えても見られる種類数は大して増えない。それでも、ピンポイントで探せば居るところには居る。
まだ風は冷たくとも日差しの暖かみが嬉しいそんな中を、そういうキノコを探して巡り歩くのもまた楽しみである。

ツバキキンカクチャワンタケは早春に生えるそんなキノコのひとつ。キノコ好きからは゛ツバキン”の愛称で親しまれている。
ツバキンはまずツバキの花に感染し、落花したあとの花をねぐらにして育つ。そして翌年以降、椿の花が咲いてる頃合いを見計らってキノコを作り、胞子を飛ばして再び花に感染するという、ツバキに特化した独特の生態を持っている。
「感染」と書いたのは、花びらを変色させるため、病害菌と見なせるからだな。ツバキにとって迷惑なのかどうかは正直なところ分からんけど、少なくとも花を楽しむ人間たちには迷惑な連中だよね。

さて、春の訪れを感じさせるツバキンだから、写真を撮るときは背景に椿の花を入れて華やかさを演出するのがこれがもうテッパン。でも実際にはそう都合いい場所に花は落ちててくれないので、たいていの場合は仕込み撮影になるという(笑)

ウイルスは悪・・・とは限らない!

2020-03-10 21:55:38 | キノコ知識
ここんところ、新型コロナウイルスとやらの話でもちきりだが、さすがにウンザリしてきた。
ただ、ウイルスというヤツが一体何なのか、自分もよく分かっていなかったのでちょっと勉強してみた。

よく勘違いされるので始めに言っておこう。ウイルスは細菌ではない。ぜんぜん別物、例えるならばバナナと洗濯機くらい違う。菌類と細菌もよくいっしょくたにされちゃうけど、ウイルスと細菌の間にはそれよりもさら深い溝がある。


まず、ウイルスには
①細胞がない。細胞膜という風船の中に体液を満たした構造があらゆる生物の基本構造のはずなんだけど、ウイルスにはそれがない。

そして
②ウイルスは自力で増えられない。
ウイルスは自分の設計図以外、ほとんど何も持ってないので、他の生物の細胞に間借りして、一切合切を借りて自分のコピーを増やす。例えるならば、レシピだけ持った料理人が食材と包丁とナベとコンロと食器をよそから借りて料理してるようなものである。

さらに、これが重要!
③ウイルスは呼吸をしない。なにも食べない。
もちろん光合成もできない。
ていうか、こんなんで果たして生きてると言えるのか??

実際、ウイルスが生き物かそうでないかということには昔から論争があって、いまだに決着がついていない。生き物でなけりゃ何なのか?それはもうただの「物質」ということになる。

さて、それはさておき、ふつう「ウイルス」と聞くと、皆さんにはただ「悪いヤツ」という印象しかないかと思う。でもそれは先入観というもの。ほんとうは違うのだ。

確かにウイルスは、ほかの生き物の細胞に侵入してドロボーしないと生きていけないヤツらだし、そもそも生き物かどうかも怪しいエイリアンみたいに不気味な存在ではあるけれども、実は彼らなくして今の人類の進化はなかったはずなのだ。

それはなぜか。

ふつう、遺伝というと、DNAが親から子へ伝えられることを言う。ところが、ウイルスはその常識をくつがえす仕事をしてしまうのだ。

ウイルスが自分のコピーを作るとき、その生物の持つDNAから一部分をコピーし、持ち去ってしまうことがあるのだ。これがウッカリなのかワザとなのかよくわからんけれど・・・
さらに、自分のコピーをその生物のDNAに組み込んじゃうこともある。そのままウイルスを廃業して吸収されちゃったりとかも。

結果的に、ウイルスがいろんなDNAを抜き取ったり、あるいは割り込ませたりするおかげで、DNAがいろんな生物の間でシャッフルされ、赤の他人でしかない異なった生物が同じ遺伝情報を持つという現象が起きてしまう。
こうして、ダーウィンで知られるような、時間をかけて起こる自然選択とはまったく別の次元で、ありえないほど自由でドラマチックな形で進化が進んだのだ。

で、それでどうなったかというと・・・たとえば人間が持つゲノムのうち、じつに45%までもが、よそ(ウイルスだけに限らんけど)から運ばれたモノで占められていた、ということが最近になってわかったそうだ。
まあ45%と言っても、もとを正せば必要のないもの(俗称・ガラクタ遺伝子)だったので、そのほとんどは人間にとって重要度が高くないんだけどね。それでも、ガラクタはガラクタなりに役割を持っているし、中には進化の過程で変化して、ヒトをヒトたらしめることになった重要な遺伝情報も含まれている。
少なくとも、ウイルスなしに、今の形のヒトを作ることはできなかっただろう。

ウイルスは他にも病気への抵抗力を高めたり、寄生虫から身を守ったりするなど、生物の役に立っているものも多い。また、役には立たないまでも、ほぼ無害な形で生物と共存する例も多く知られている。
突然、凶暴な感染症を引き起こすのも確かにウイルスの仕業だが、それは彼らのある一面に過ぎないのだ。

・・・生物と無生物のあいだに立つもの。DNAからDNAへさすらいつつ、悪魔のような病気をはやらせたかと思えば、こんどは画期的な進化をもたらしたりもする。そんなウイルスの振る舞いは、共生したり寄生したり変幻自在にスキマに滑り込んでいく菌類の生き方とも少しかぶる。小さすぎて見ることすらできない厄介者だが、なかなかどうして目が離せない。


注:わかりやすくするために話を単純化しているので、かなりの不正確さを含むことを了承ください。ウイルスは超多様かつ複雑で、すべてを正しく伝えようと思っても、聞きかじりレベルの自分の手に負えるものじゃありません(^-^;


にがくりたけ

2020-03-06 23:42:27 | キノコ
1月に撮ったニガクリタケ。

取材でキノコ撮影の現場を見せてほしいといわれたので、キノコのありそうな場所を探して、どうにかこうにかそれっぽい群落を見つけた。えり好みせず針葉樹からも広葉樹からも生えて、しかも秋から冬にかけてしぶとく発生(しかも群生!)し続けるニガクリさんは、キノコ狩りの人からは嫌われてもキノコ撮影家には救世主のような存在だ。

もっとも普通にみられる毒キノコのひとつ。


美しい群生。

実は、この写真を撮った5日後に、もう一度この場所を訪れてみたのだが、なんと・・・


消えている!!

冬は気温が低いのでキノコが腐るのは遅い。5日程度ならば少し傷むくらいで消えるなんてことはないはず・・・

よく見ると、茎の下の部分が少し残っており、折れたニガクリタケがいくつか切り株の下に転がっていた。ははぁ、これは何者かに採られたようだ。

虫、ナメクジ、ネズミ、リス、シカ、サル、イノシシ、そして人間。犯人はいくらでも思い浮かぶ。誰だろうか。
食べ方からして虫やナメクジではない。人間の採り方でもない。切り株の一部がえぐれたようになっているから、なかなかのパワー。小動物でもなさそうだ。よくみると切り株の手前に地面がえぐれている場所がある。重い体重の動物が歩いた跡だろうな。

となると、シカかイノシシか。うーん、どちらかと言えば上品な荒らされ方なので、シカかな。

しかしニガクリタケを食べるんだねえ。まあ腹が減ればトリカブトだって平気で食べるような連中だし、体もデカいからよほど大量に食べない限りは中毒しないんだろう。それにしても苦くは無いんだろうか。まあシカに聞くだけ野暮かもね。



すみいろがさ

2020-03-03 23:39:40 | キノコ
ひさびさに行きつけの公園に行ったら、「ヒスイガサに似たキノコが生えている」と職員の方に教えてもらった。ヒスイガサ?なんかの間違いじゃないの??

ヒスイガサ(仮称)とは、この公園で観察できる緑色の小さなキノコのことである。キノコとしては珍しい色なので、この公園に生えるキノコの中でも屈指の被写体なんだけど、あれが生えるのは夏。よりにもよって、こんな寒い時期に生えてくるとは思えないなぁ。


で、案内してもらったのがココ。うぉい!ここは階段じゃねえか。

いぶかしみながら調べてみたら。おお!そんなバカな!生えてる生えてる。階段の三段目から七段目くらいまで、まばらに20本以上生えていた。そしてなぜか階段にしか生えていない。なんでや!

なるほど。確かに大きさも形もヒスイガサに似ている。
ヒスイガサはフカミドリヤマタケという別名にも見られるように、かなり暗い緑色をしていて、状態によっては黒っぽくも見えるんだけど、その点ではこのキノコもそれに近い。でもこれは緑系ではなくて紺色系のようだ。
その証拠に、古くなったキノコを見ると、青みがかった薄ずみ色が確認できる。


しかしこのキノコなんだろうなぁ。紺色の小型キノコで思い出すのは、イッポンシメジの仲間だ。たとえばコキイロウラベニタケは、紺色をしていて芝生に生えてくる。
近い仲間にこんなのがあってもおかしくないかな・・・

でもヒダを観察するかぎり、ピンク色を帯びていないし、ヒダがまばらで厚みのある感じとか、つき方がイッポンシメジ系というよりもヒスイガサと同じヌメリガサ系なのよね(勘だけど)。
うん。やっぱり確実に見たことのないキノコだ。図鑑やネット上でも見た覚えがない。これはいいものを見せてもらった。こんな季節でもこんな場所に生えるキノコあるんだねぇ。

とか言うだけ言っておいて、基本情報をほとんど調べずに置いてきてしまったけどねっ!せめて粘性くらいは調べるべきだった。

仮の名前を・・・。ヒスイガサを踏まえるのであれば、このキノコに似つかわしい色は「墨色」であろう。個人的な仮の名称として、「スミイロガサ」の名を与えておく。