月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

中島みゆき

2013-02-07 23:26:53 | キノコ本
中島みゆき。歌手歴30年オーバー、ユーミンや竹内まりあと並ぶ、最古参の女性シンガーソングライター。すでに普遍的名曲の地位を確かにした「時代」をはじめ、これまでたくさんの曲を送り出し、いまなお現役。かつては「暗い歌ばかりつくる」と評されていたが、最近はそんなでもない。TOKIOに提供してヒットした「宙船(そらふね)」が記憶に新しい。

さて、この人、基本的にマスコミ露出が低い(歌番組に出ない)ので、あまり知られていないけど、たとえばラジオの深夜番組でパーソナリティをやらせたりすると、こんな感じに。

……なにこのテンション。

どうやらこれが素(ス)の彼女らしく、このあっけらかんなトークで幻滅するファンも多いとか少ないとか。
ところが、このネジのはじけ飛んだオバチャンがいざステージに立つと、多感で繊細な詞に、悲喜の混沌ともいえる情感を乗せ、その圧倒的な存在感で聴衆を魅了する。その豹変ぶりは「魔女」「きつね憑き」などとファンの間でささやかれるほどだ。

無邪気な子供の相が、喜びも悲しみも受け入れる大人の相と同居している。典型的なトリックスター

そういう目で見れば、彼女の作った曲にも、相反するものを仲介する、という普遍的なテーマに基づくものがとても多いことに気づく。男と女、希望と諦め、愛と別れ、生と死。

たとえば、悲しいばかりの失恋の歌……しばしば歌の中で失恋が死のイメージと重ねあわされるが……これも彼女の魔法にかかると、それも人間の世界で繰り返される輪廻の一環なのだ、なんともしょうがない、しょうがないよね……と暗に諭され、励まされてるような気がしてくる。暗い歌が多くても、世代・性別を問わず、彼女が広い層に支持される理由は、そういうところにあるのかもしれない。

曲中に色濃くあらわれる水のイメージもまた象徴的だ。生命のゆりかごたる海、赤ん坊を包む羊水、あるいは死者を隔てる三途の川、そして最終的にすべてが還るところでもある海。生死をつなぐ仲介者がはたらく場所としてふさわしい。

話がずいぶん観念的になってしまたけど、中島みゆきがトリックスター(≒キノコ的)歌手だということ、ご理解いただけましたでしょうか?私ファンなので、文章が偏重かつ暴走気味なのはご容赦を。

写真は2002年発売のアルバム『おとぎなばし』(英題・FairyRing)から。キノコ入りの歌詞は探してもなかったんで、こじつけで。

※参考
『宙船』 ロック調。破壊的な相
『ファイト!』 代表作のひとつ。抒情的。水のイメージ。明暗ごちゃまぜの混沌。
『とろ』 子供の相。「とろ」は子供時代の彼女のあだ名。何をやっても「とろ」かったらしい。