月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

かんぞうたけ

2018-05-31 21:42:01 | キノコ
今年もカンゾウタケの季節になりましたなぁ。

『東のベニテングタケ・西のカンゾウタケ』・・・これは、同じ深紅のキノコとしてベニテングタケ(通称ベニテン)と双璧をなすカンゾウタケを褒めたたえる、キノコ界での慣用句である。
ベニテンは寒冷地を好むシラカバに、カンゾウタケは暖地を好むシイに、それぞれ強いつながりを持つため、日本の東西(正確には南北)で住み分けているように見えるのがこう呼ばれる理由である。

しかし、色こそ似ていても、それ以外の見た目は正反対と言っていいほどに違う。
かたや、真っ赤な傘に白い水玉模様をつけたベニテンがメルヘン世界の妖精ならば、かたや、動物のベロを連想させるようなカンゾウタケは、水木しげる世界のモノノケであろう。

また、両者は生活スタイルもまったく違う。
ベニテンはシラカバなどの樹木の根にとりついて共生し、列をなすようにして地上に生えるのに対し、カンゾウタケはシイの大木の心材を分解して、木から直接生える。
ひとことで言えば、カンゾウタケはシイの木にとって害でしかないのだが、まあそんなことは脇に置いておこう。

注目するべきは、味だ。この二つのキノコを食べようと思ったときに、この両種の断絶はMAXになる。

ベニテングタケは強い旨みを持つキノコだ。その旨みは広いキノコ界でもトップクラスであり、数ある栽培食用キノコのいずれをも凌ぐとまで言われている。が、残念なことに・・・有毒である。
一方のカンゾウタケ。
こちらは毒をもたない。毒をもたないから美味しいかというと、それがなぜか・・・酸っぱい。何をどうしたらこんなことになったのか、キノコが酸っぱいってのは奇妙なのを通り越してほとんどジョークの領域だが、ともかく意味もなく酸っぱい。
その酸味を生かそうとしてか、生で食べる向きもあるという。いったいどこまでキワモノ道を突っ走る気なのか。


似ても似つかないこの二つのキノコ。『赤い』という以外、なんの共通点もないようだが、ひとつだけ共通点がある。『個性的』だということだ。

とがりすぎた個性は勲章である。ベニテンとカンゾウタケは、ハンマーが届かないくらい伸びて打たれようがなくなった出すぎた杭なのだ。私はこのキノコたちに称賛を惜しまない。