(カンゾウ伝その一より、つづき)
イボカサ三兄弟は、ロープを引き絞ったままカンゾウのまわりを回る。ロープはカンゾウにグルグルと容赦なく巻きつき、とうとうがんじがらめになってしまった。もはや逃げることはおろか、身じろぎひとつできない。円陣はさらにせばまる。絶体絶命!
「ヤァー!」「ヤァー!」「ヤァー!」
次の瞬間、すさまじい気合いとともに三人が同時に襲いかかった!
「キキキーン!!」
激しい金属音が響き、周囲にこだまする。三人は弾けるように跳び、元いた場所と全く同じ場所に降り立った。
「???」
金属音?三人の刃は同時に襲いかかり、いま確かに無防備なカンゾウの首に届いたはず!
「こ、これは・・・!?」
いぶかしむ間もなく、三人の刀は、なんと真ん中からまっぷたつに折れて地に落ち、三つ同時にガチャンと音を立てた。
何が起こったのか分からないまま立ち尽くす三人。カンゾウはどうなった・・・??
「フフフ、それで終わりか?」
赤黒い装束の忍者は首の凝りをほぐすような仕草をみせると、円陣の中央で不敵に笑った。カンゾウは生きている!しかも無傷だ!!
しかしどうして??
カンゾウは精神を集中させることで、一時的に身体を鉄のように硬くさせることができるのだ!これぞ秘術「肝硬変」!
カンゾウは三人がとびかかる瞬間を見計らって体を硬化させ、逆に三人の武器を破壊したのだ。
さらに次の瞬間、何をどうしたものか、カンゾウをがんじがらめにしていた三本のロープが切れ、バサリと落ちた。
「さて、今度はこちらの番だな。」
カンゾウは手のひらを組んで忍術の印を結ぶと、次なる精神の集中に入った。
「・・・菌ッ!!」
カンゾウが気合いの声をあげる。するとどうだろう、急激に周囲の空気がよどみ始めたではないか。
それだけではない。カンゾウの体から何やら赤黒い妖気のようなものが立ちのぼっていくのが見える。果たしてこれから何が始まるのか!?
ただならぬ雰囲気にのまれ、折れた刀をかまえた三人は、ただただ体を凍り付かせたように動けぬまま、状況を見守ることしかできなかった。
つづく