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『風の谷のナウシカ』全7巻 宮崎駿
ストーリー:終末戦争後、科学文明は崩壊し、生き残った人類が住み暮らす世界。人間を寄せつけない特異な生態系「腐海」が徐々に広がり、人類の生活圏をおびやかしつつあった。
大国・トルメキア王国はドルク諸侯国にたいして開戦するにあたり、支配下の辺境自治国にも従軍指令を下す。「風の谷」の族長の娘・ナウシカもそれに加わっていた。ドルクは劣勢を覆すため、腐界の生物を兵器として用いはじめるが、やがて制御不能になり未曾有の大混乱を招く。戦争の非道に怒りを燃やし、それを止めるために孤軍奮闘するナウシカ。彼女の一途な想いはやがて、敵味方の壁を越えて多くの人を巻き込んでいく……
王蟲、巨神兵、ヒドラ…彼らに隠された秘密とは。風前のともしびに等しい人類の運命は。彼女自身が鍵となり、ナウシカは人々を世界の謎の中心へと導く。
……みなさんご存知、映画『風の谷のナウシカ』の原作漫画。
実は上映当時、この漫画は完成してなくて、それからも休んだり悩んだりいろいろあり、やっとこさ完結したのは映画を発表した10年も後のこと。それだけ難産した末に完成した大作だけに、宮崎駿の思想のエッセンスが存分に詰め込まれた中身の濃ゆ~い作品になっている。ちなみに映画部分はこの漫画版の四分の一ほど。
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この漫画のすごいのは壮大なスケールの世界を作りあげながら、一方で細部まで手を抜かず、緻密に描き込んであるところ。「王蟲(オーム)」をはじめとした「腐海」の生物群や、多様な民族のもつ装束や道具、習俗から生活様式に至るまで、制作前の段階でイメージをよほど練り込んでおかなければ、ここまでのものは描けない。この作品だけで、日本の漫画文化が世界に誇れるものだと証明できそうだ。
ただ、中盤以降は重苦しい展開になるうえ、難解なやりとりもあるので、よほど覚悟しないと、ただのアニメファンにはつらいかも。まあでもここを読みこなせるようにならない限りは、真の宮崎駿ファンとは言えないか。私は時間をかけて何回も読んでるうちに、やっとこさ意味がとれるようになったけど、その時自分がすっごく賢くなったような気がした。
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キノコ視点でいえば、やっぱり「腐海」の存在。この世界では菌類は背丈をはるかに超えて巨木のように生長し、光合成ができる、という設定になっている。すごいオリジナリティ!超巨大粘菌なんかも登場するし、キノコそのものの出番はないにしても、菌類(ないし粘菌)がストーリーを左右するほど活躍するという点に、話のスケール、知名度を加味すれば、これはもうキノコ漫画の最高峰といっていいんじゃないかな。
このストーリーでナウシカは様々な壁をブチ壊し仲介する、トリックスター的役割を果たすんだけど、それこそまさにキノコ的役回りなのだと言ったら何の事だかわからないか。人間と人ならざる者、自然と文明、大人と子供、生と死、そういった対立するものを結び付けるというのが、宮崎駿の一貫した方向性のような気がする。
個人的にはナウシカよりクシャナの方が好き。優等生は疲れるんだよね……あとクロトワなんかもいい味出してるけど、やっぱヴ王かな。
「失政は政治の本質だ!!」と叫びながら坊主を蹴り飛ばすあたり、最高。王様ってこうじゃなくちゃーな。
ストーリー:終末戦争後、科学文明は崩壊し、生き残った人類が住み暮らす世界。人間を寄せつけない特異な生態系「腐海」が徐々に広がり、人類の生活圏をおびやかしつつあった。
大国・トルメキア王国はドルク諸侯国にたいして開戦するにあたり、支配下の辺境自治国にも従軍指令を下す。「風の谷」の族長の娘・ナウシカもそれに加わっていた。ドルクは劣勢を覆すため、腐界の生物を兵器として用いはじめるが、やがて制御不能になり未曾有の大混乱を招く。戦争の非道に怒りを燃やし、それを止めるために孤軍奮闘するナウシカ。彼女の一途な想いはやがて、敵味方の壁を越えて多くの人を巻き込んでいく……
王蟲、巨神兵、ヒドラ…彼らに隠された秘密とは。風前のともしびに等しい人類の運命は。彼女自身が鍵となり、ナウシカは人々を世界の謎の中心へと導く。
……みなさんご存知、映画『風の谷のナウシカ』の原作漫画。
実は上映当時、この漫画は完成してなくて、それからも休んだり悩んだりいろいろあり、やっとこさ完結したのは映画を発表した10年も後のこと。それだけ難産した末に完成した大作だけに、宮崎駿の思想のエッセンスが存分に詰め込まれた中身の濃ゆ~い作品になっている。ちなみに映画部分はこの漫画版の四分の一ほど。
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この漫画のすごいのは壮大なスケールの世界を作りあげながら、一方で細部まで手を抜かず、緻密に描き込んであるところ。「王蟲(オーム)」をはじめとした「腐海」の生物群や、多様な民族のもつ装束や道具、習俗から生活様式に至るまで、制作前の段階でイメージをよほど練り込んでおかなければ、ここまでのものは描けない。この作品だけで、日本の漫画文化が世界に誇れるものだと証明できそうだ。
ただ、中盤以降は重苦しい展開になるうえ、難解なやりとりもあるので、よほど覚悟しないと、ただのアニメファンにはつらいかも。まあでもここを読みこなせるようにならない限りは、真の宮崎駿ファンとは言えないか。私は時間をかけて何回も読んでるうちに、やっとこさ意味がとれるようになったけど、その時自分がすっごく賢くなったような気がした。
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キノコ視点でいえば、やっぱり「腐海」の存在。この世界では菌類は背丈をはるかに超えて巨木のように生長し、光合成ができる、という設定になっている。すごいオリジナリティ!超巨大粘菌なんかも登場するし、キノコそのものの出番はないにしても、菌類(ないし粘菌)がストーリーを左右するほど活躍するという点に、話のスケール、知名度を加味すれば、これはもうキノコ漫画の最高峰といっていいんじゃないかな。
このストーリーでナウシカは様々な壁をブチ壊し仲介する、トリックスター的役割を果たすんだけど、それこそまさにキノコ的役回りなのだと言ったら何の事だかわからないか。人間と人ならざる者、自然と文明、大人と子供、生と死、そういった対立するものを結び付けるというのが、宮崎駿の一貫した方向性のような気がする。
個人的にはナウシカよりクシャナの方が好き。優等生は疲れるんだよね……あとクロトワなんかもいい味出してるけど、やっぱヴ王かな。
「失政は政治の本質だ!!」と叫びながら坊主を蹴り飛ばすあたり、最高。王様ってこうじゃなくちゃーな。
宮崎駿本人にしても映画が消化不良なのは承知していて、この漫画を描き上げるのにあたっては相当の思い入れがあって逆に苦しかったとか。
読む方としても重いですけどね、この漫画。