僕は学生時代、あらゆる手段を使って英語を貪欲に勉強しました(したつもりです)。
当時は、ラジオも英語学習の手段の一つでした(もちろん、今でも有効な手段の一つです)。
NHKの英語関係の講座はもちろん、文化放送で放送されていた『百万人の英語』も聴きました(夕方6時からの放送でした)。
学生時代のアパートは谷間にあったためかあまり受信状態がよくないこともある中、この『百万人の英語』も熱心に聴講しました。
テキストも発行されていましたので、そのテキストで予習復習も結構しっかりやっていました(このテキストは全て処分してしまいましたが、一冊でも保存しておけばよかったかもしれません…)。
その中でも、勉強になったのは、国弘正雄先生の番組でした(「國弘」と表記される場合もあります)。
国弘先生の番組は、骨のある英語の文章をどう読んでいくかの勉強になりました。
先日、
a historic eventか、またはan historic eventかと題する記事を書き、その中で国弘先生のことについて少し触れましたが、これを書いたのは11月23日、奇しくも国弘先生が亡くなる2日前のことでした。
たまたまのことではありますが、因縁めいたものを感じます。
タイトルに書きましたように、その国弘正雄先生が2014年11月25日に亡くなられました。
ラジオ講座で学んだ師を恩師と呼べるかどうかわかりませんが、国弘先生の講座を聞いて、影響を受け、ご著書も何冊か読ませていただきましたので、直接的な恩師とは呼べなくても間接的な恩師と呼ばせてもらえるかもしれません。
実は、先ほど紹介した僕の直接の恩師である故・長谷川潔先生のご著書の一つ『英語は聴くだけでモノにできる』(
読書案内:長谷川潔先生著『英語は聴くだけでモノにできる』(ごま書房, 1985)参照)の背表紙に長谷川先生について書かれているのが国弘正雄先生なのです。
『國弘正雄の英語をどう読むか』の(I)と(II)は、『百万人の英語』が元になった書です。
『國弘正雄の英語をどう読むか(I) 4人のエッセイにズームイン』(日本英語教育協会, 1983)
『國弘正雄の英語をどう読むか(II) 3人のエッセイにズームイン』(日本英語教育協会, 1983)
また、『アメリカ英語の婉曲語法』(エレック選書, 1974)も書かれています。
『國弘正雄の英語をどう読むか』シリーズでも、エドウィン・ライシャワー(Edwin O. Reischauer)の
The Japaneseからのエッセイも取り上げられていますが、日本人論の名著
The Japaneseの翻訳も担当されています。
『ザ・ジャパニーズ 日本人』(文藝春秋, 1979)
また、大学教科書として南雲堂より
The Japaneseを出版され、注釈をつけておられます。
The Japanese(Nan'un-do, 1980)
国弘先生の注釈で素晴らしいのは、その量と内容です。
何と、80ページ分の本文に69ページにわたる注釈をつけられています。
僕も大学教科書の注釈をつけさせてもらったことがありますが(
The City is Fun(『都市の生活と文化』)(学書房, 1994)を振り返る 『20世紀を振り返る』(20th Century in Review)(桐原書店, 1995)を振り返る参照)、なかなかそうはいきません。
国弘先生の注釈は、先生がお持ちの教養があふれているという感じなのです。
国弘正雄先生の講演は一度聴講させてもらったことがあります。
それは、本学に赴任して以降の1990年代後半、TOEICの実施団体の講演会でした。
また、国弘先生にまつわるエピソードをもう一つ書かせてもらいます。
今年9月のアメリカ研修旅行の引率中、お世話になるニューパルツ在住で三島由紀夫の翻訳家でもあるAlfred Marksさんのお宅を訪問させていただきました(
アメリカ研修旅行(2014年9月19日)参照)。
Marksさんは、日本語で書かれた書籍も沢山お持ちなのですが、ご高齢のため、奥様も少しでも蔵書整理をされたいとのことで、日本語の本棚からあなたに役立つ本があったらぜひ持って行ってくださいと言われました。
興味深い本もたくさんありましたが、あまりたくさんいただくのも気が引けますし、帰国の際の重量オーバーになってしまいますので、私は一冊だけいただくことにしました。
そこで、選ばせてもらったのも、なんと國弘正雄先生編著の『英語ハンドブック』(パナジアン, 1973)だったのです。
國弘正雄先生のご冥福をお祈りいたします。
今頃、天国で長谷川潔先生やEdwin Reischauer氏とも再会されているのでしょうか。
ちなみに、新見公立大学・短期大学図書館(新見市学術交流センター図書館)には國弘正雄先生の本が8冊所蔵されています(蔵書検索の際は、「國弘正雄」と「国弘正雄」の両方で検索してみてください)。