昨日は繁昌亭へ。
「大賞記念」とか、別にどうでも良いと言えば良いのだが、
出演者の顔ぶれが良いので見に行った。
「花ねじ」(たま):△+
軽くマクラを振ってネタへ。
丁稚が旦那に教えられた台詞を間違えるところ、
間違え方をかなり変えており、ウケてもいたが、
特に良いとは思えない。
隣の漢学の先生をかなり激しく作っていた。
髭をさすりながら出るのが最初だけで、
繰り返しで何か使うか、
面白くならないようならば最初からなくても良いかな、と感じた。
番頭が旦那に「何をするか」事前に少し説明し過ぎか。
「覗く」「節穴を塞ぐ」くらいまでで良いのでは、と思う。
人物描写よりもリズム優先。
踊るところ、覗いたり梯子を上がる場面など、
全体にスピード感が出ていて良かった。
「持参金」(銀瓶):○
マクラは「浮気度チェック」など。
番頭の焦っている様子が最初から出ており、
これが貫徹しているのが良かった。
金物屋の佐助さんのいい加減な様子も良い。
紹介する女性の説明で「心の良い女子」を繰り返しており、
「よく喋る」の後でも「明るい子」とフォローするあたり、
女性の醜さを繰り返す科白が不快に感じがちなこのネタで
上手く緩和していたと思う。
また、佐助さんの仲人口の上手い、くっ付けるのに慣れた印象も
上手く与えてられていた。
お鍋を連れてきて三三九度の盃を交わさせる場面、
一人合点で話を進めるところも良い。
アホが外に引っ張り出していたが、
個人的にはアホがその場で言い出して佐助さんが外に連れ出す、の方が
良いと思う。
番頭さんがお鍋との経緯を説明するところは
少しクドく感じた。
「金は天下の廻りもの」の前の「昔の人は良いことを言っている」、
前の「早起き三両、宵寝は五両」「一人口は食えんが二人口は食える」でも言うことで
繰り返しとして明確に示していた。
内輪ウケっぽい科白(家主さんの名前とか)や
使う単語に不自然なところは散見されたが、
個人的にはあまり好きでないこのネタで、まあ楽しめた。
「べかこ」(三喬):△+
すぐにネタへ。
何となく地噺っぽく、
様々な噺家の名前を入れて進めていく。
個人的には堅丸は、もう少し軽い芸人風情が濃い方が好み。
その方が侍などとの対称が強くなると思う。
お城の仕事は、菅沼が宿屋に依頼しに来るのだが、
宿屋の主が何となく取って来る方が
どのような芸人と思って菅沼が依頼しているか曖昧に出来るので良いと思う。
その他、設定や科白廻しで雑に感じられるところは散見された。
例えば「鶏の間」の他に「梅の間」「桜の間」の紹介を菅沼がするのだが、
「赤短」といったギャグはないので、
特にその紹介は要らないのでは、と感じたり。
落とし噺に対して姫がシャレで返したり、菅沼が洒落を言ったりするのは面白い。
まあ、姫がシャレで返すあたり、気鬱でないのでは?とも感じたが。
縛る場面で、
菅沼が「鶏に頼んでみよ」と言う必要はないと個人的には思っていたのだが、
「東天紅」「こかこ」を仕込むのであればあった方が良いかな。
堅丸が祈ると鶏が出てきて、実際にバタバタして見せる。
「東天紅」などと言いかけたり、エヅいたりするのは少し余計と感じた。
鶏が堅丸に「言えないのか」とバカにされて「べかこ」と返すところ、
「べかこ」のみならず
堅丸が菅沼にバカにされたところからを仕込みとしてやっており、
これは良かった。
「鶴笑ワールド」(鶴笑):△
新弟子時代の鶴二との思い出話をマクラにネタへ。
ネタは「義経千本桜」。
戦う場面など、いつも通りと言えばいつも通り。
この人の科白の聞き取り辛さなどが、ちとしんどい。
釣竿に狐忠信を付けて「宙乗り」をするところと
クス玉を引いて鶴二を祝うところは工夫だと思う。
「らくだ」(鶴二):△-
出囃子の「独楽」を聞くと、やはり松葉を思い出してしまう。
嗚呼。
新弟子時代の思い出、兄弟子との酒の話からネタへ。
全体に科白が雑なことや妙な熟語が多いこと、
上下の振りがやや遅いこと、
人物描写が薄いこと、が気になって満足できなかった。
ウケてはいるのだが。
最初に熊が入ってくるところ、
長屋の誰かに場所を聞いて、その人に絡んでから入ってくる。
まあ、絡むところは悪くないと思うが、
この長屋に熊が来るのは初めて、と限定されてしまう気がして、
別にプラスにもならないと思う。
その後屑屋が入ってくるが、この絡みに違和感がある。
熊は、日常生活を送っている人間からすれば
「不可触」な存在であるべきだと思うのだが、
どうもその印象が弱い。
別世界の人間がともすれば己の感情などを爆発させてしまうところ、
無理から押さえて屑屋と相対していると思うのだが、
特にそんな感じではない。
後の「犬に噛まれた傷」という設定といい、
熊を実際には別に大したことのない人間として描いているようなのだが、
そうなるとその弟分である「らくだ」の非道さもどうってことはないものと
感じられてしまうのではないだろうか。
月番の説明の順序が悪く、
「割り前は払わず、おためだけ受け取る」のが分かりづらい。
家主は最初に「店賃を払うと言ったか」と自分から訊くが、
それを訊くと「死ねば仏」で負けてやるところで過度に良い人と響いてしまう。
そこも含めて「ちょっとは嫌がられた家主」らしくない。
「大工調べ」の大家同様、昔は違う商売をしていたのが
汚いことなどをやって家主に成り上がった人間、のイメージがあるのだが、
そんな後ろめたさ、醜さも感じられず。
後で死骸を担ぎ込んでかんかんのうを踊らせるところ、
踊るまでがダラダラする。
酒を飲み始める。
前半に熊が造型されておらず、屑屋との関係も作られていないので、
当然、転換も利かない。
屑屋が絡むような科白がウケてはいたが、
屑屋の今まで抑えつけられていた反動が隙間から漏れ出し、
徐々に吹き出していく、といった厚みがなく、
個々の科白の面白さに頼った薄っぺらいと感じてしまうもの。
その口調も酔っ払いらしくないので、酔ったふりをしているだけか?と
感じてしまうところもあった。
樽に入れる場面の「座れせてその上に被せ、引っ繰り返す」設定は初めて見たが
これは悪くなかった。
髪を剃る場面、口で毟るところもまあまあ。
火屋に運び込んで2人が飲みに戻るあたりに会話があるが、
そんなところは別に要らんと思う。
単に預けてしまえば良いのでは、と感じた。
以前に他のネタ(「猫の災難」だったか)を見た時は気にならなかったが、
この「らくだ」では技術的なところ、
設定や科白廻しの粗さなどが気に障った。
まあ、私の「らくだ」のイメージがほぼ全て6代目で出来ており、
その基準と設定に対してどうか、で判断してしまうからかも知れないが。