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すずめの戸締り/新海誠監督
女子高生が自転車で登校中、このまちの廃墟が何処にあるか尋ねられ教える。イケメンだったので気になって学校に行かずに廃墟に向かうと、どこでもドアみたいなドアがあって、あけると何か星の輝く不思議な世界が見えるが、入ると通り抜けてしまう。そこにキツネの置物みたいなものが地面に刺さっていて、それを抜くと何かの動物(後で分かるがネコだった)になって逃げてしまう。何が何だか分からないが怖くなって学校に遅刻していくと、みんなには見えないようだが、山の斜面の先ほど行った廃墟からむくむくと黒煙が上がっていくのが見える。大変なことが起こっている予感がするので、また廃墟に向かっていくと、道を聞いたイケメンくんがドアを閉めようと奮闘していたのであった。
なんとかドアを閉め、地震の起こるのを食い止めたらしいのだが、イケメン青年は怪我をしてしまったので、自宅に呼んで治療をすると、みすぼらしい猫が窓際に居ておりエサを与えると、元気になって青年を木の椅子に変えて逃げてしまう。逃げた猫は何かの神様の化身で、災いを封じ込める要石の役割をしていたのだという。逃げた先々でSNSに撮影されるのでどこにいるのか分かるが、追いかけたついでもあって、四国、関西、東京、東北と、いわゆるロードムービーが展開されていくことになる。
最初のあらすじを読めばなんとなく混乱することと思うが、まじめに説明しても、かえって何のことなのか分かりにくい事とは思う。それがこのアニメの変なところかもしれないが、同時にこれはそれが魅力になっている。変なんだけど、そういう展開に身を任せることは可能で、奇妙だけど家出した女子高生なので、皆が助けて旅を続けられる。そうして地震という災いを防ぐ扉を閉じる能力に長けている。
椅子にされた青年の運命も悲しげだが、それを救う女子高生の恋心のために、いわゆる命を懸けて救出する賭けに出る。そうして女子高生すずめの過去も、明らかにされていく。この映画は震災に対するレクイエムなのである。
いちおうギャグが随所にちりばめてあって、笑うべきなのは分かるが、深刻なものとの絡みが微妙で、今一つピンとこない感じもしないではない。リアルだとおそらく笑えてないからだ。いろんな人々と出合うけれど、基本的には大変に世話になりながら、軽い。皆仕事を休んで経済的な負担も大きくなっているはずだが、そういうところの大変さが、子供視点なのか、あまり重要ではない。もちろんそういうアニメなんだから、ということに尽きるのかもしれない。しかしながら大きな話でもあるので、なるほど新海アニメなんだなあ、という感慨にはふけることができる。正直言って、映像が綺麗だし、なんだかおもしろいのである。僕はやっぱりファンになっているのかもしれない。