小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

プラスマイナス0がいい

2008年10月19日 | エッセイ・コラム

 アメリカの金融資本が行き詰まりを呈している。アメリカの金融商品はグローバリズム経済の目玉だから世界に影響を及ぼす。実体経済、つまり私たちの生活にもその歪が及んできそうな気配がある。「そんなの関係ない」と言えなくなるかもしれない。

 世界恐慌になれば低所得の階層がまっさきにダメージを受ける。失職或いは低賃金に拍車がかかると、まず食べることだけにエネルギーが注がれる。食べることができなくなればどうなるか。食の安全が問われるなか、いまこの最悪のシナリオを描いている人はいない。

 誰もがそんな状況になる以前の対策そのものに集中するからだ。

 バブリーな経済はこれまで技術革新と密接に結びついてきた。つい最近ではITバブルがそうだ。一昔前では自動車、家電がそうだ。ちょっと変種では土地を商品化することでバブル的状況がうまれた。今回のアメリカの金融危機も、サブプライムローンがバブル経済の根幹だ。

住宅ローンの債権を証券化することで新手の金融商品となり、投資先を物色する世界の機関投資家などが、リスク回避の観点からこのサブプライムローンに投資したことが端緒。

実は、はなからそのクレジット(信用力)の価値は希薄だった。何よりも、サブプライムローンのバブル機能だけに目がくらんだ。ほとんどギャンブルに近い。リーマンブラザース、モルガンスタンレーなどのCEOたちは、巨万の富を得たことが知られている。いまやサブプライムローン破綻は全世界の金融機関に影響を及ぼし、多大な損失を産みつつある。最近、下院でやっとこさ「金融安定化法案」が通り、公的資金は注入された。めでたし、めでたし、とあいなった。

 しかしだ。

1980年代、S&L(貯蓄貸付組合)の破綻があり、アメリカ政府は公的資金を注入した実績がある。このときは当事者である銀行経営者が責任を問われ終身刑以上の刑に服するものも多数いた。政界にも及んだこの責任追及は、市民、NPOが主体となり、アメリカ民主主義の真価を発揮したと言われる。現大統領候補のマケインも大物銀行家から献金を受けていたことが判明し断罪されたはずだが、どういうわけか復活してきた・・。

 今回の金融危機では、経営者CEOはどうやら責任を問われないようだ。財務長官もいることだしな。

それよりも今度の金融危機は、人為的、ドメスティックな問題にとどまらない世界の金融ネットワークに及んでいるから、その責任追及が一筋縄でいかないことが深刻だ。つまり終息の着地点がみつからない。

どうしてバブルの生成と破裂が繰り返されるのか。

「金が金を生む」という金融のメカニズムは、「信用」あるいは「付加価値」が大前提にある。これがあってバブリーな状況が生まれるのだが、その担保は実はない。コンセンサス、つまり期待大という合意があって、みんなその尻馬に乗るのだ。私は経済の専門家ではないから詳しくは分からない。でもこれって、全部近代以降の経済パラダイムそのものだ。

技術革新、バブル、不況ないし恐慌、戦争という歴史的文脈は、資本主義の発展と同期している。個人としてそれを選択しないと叫んでみても、すべての人はグローバリズム経済に絡め取られていく。中国やアフリカの農民たち遅かれ早かれ巻き込まれる。彼らがそれを意識しないのに・・。

 ここまで書いてきて現代の市場経済の替わりとなるオルタナティブはあるのか。

仏教経済は? インターネットで調べる限りでは、公共性と倫理性を貫く「規制」がかなり必要だ。そして「豊かさ」の質的転換が求められる。即効性がない。魅力的な要素は多いが、エネルギー問題、食糧問題など喫緊の課題に言及することはない。

イスラム経済はどうだ。これは面白い。しかし、私にとっては、政教一致が原則の回教徒に殉ずる気はないし、オイルマネーが枯渇した場合のグランドデザインがあるとは思えない。

キリスト教経済? おっとこれが現在の経済だ。(ウェーバーによればプロテスタントだけど)

 私はまだイメージできない。ただ始めの一歩はグローバル経済をいったん止揚したらどうか。金本位制に退歩してみるか。あるいは競争原理に、強固な倫理規定を課し、悪いことすれば儲かるという仕組みを根絶するのはどうか。そして、各国独自の生産と流通に限定した経済モデルを考える。いわば全世界鎖国経済からはじめてみてはどうだろう。経済学者から失笑をかうことは承知の輔だが、プラスマイナス0ぐらいの感じでいけないか。激しく儲ける人は激しく損失する確率が高いのだから、ほんのちょっとの儲けでいいと思いますけど。

 思いつきばかり書いてきたが、企業経営の「社会的責任」をいうひとが少ないのはどういうことなのか。


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