道
愛犬「ゴン」と毎日散歩を楽しむ。というより、義務のようになっている。私の体力が主人にフラれてから、めっきり落ちた。体内にミミズか、モグラが寄生しているのではないかと思う位、太陽が苦手になった。雨の日が嬉しい。夕方になると、ホッとする。日が短くなった。「ゴン」と毎日歩いていると、移り変わりをライブで実感できる。
県道は、昔に比べれば随分と広くなった。四十年前は、この道を父のリヤカーを押して歩いた。リヤカー一台がやっとだった道も、今ではトラックが悠々と走れる。いつもの道。未来の貴重な救世主。
近所の子供に会う。子供は正直だ。私をおばちゃんと呼ぶ。気に入らないが、取り敢えず柔らかい笑顔で、返事をしてあげる。子供は杉林の方角を指さしながら、汗をかきかき私に言った。
「おばちゃん、あっちに猿がいっぱいおったよ!危ないよ~」
私は、やはり優しい百万ボルトの笑顔で、返事をした。
「ありがとう。大丈夫。この歳になると、怖いものが、なくなるのよ」
子供は、一瞬化け物をみるような目で私を見た。
そうなんです。私のこの世で一番怖いものは、白バイと取り締まり、白黒のパトカーのみ!制限速度で走っていても、あの白黒の車輌を発見したら、思わず急ブレーキを踏んでしまう。この急ブレーキで、何回助手席の主人の眠りを妨げたことかー。本能で踏んでしまうのだ。私が悪い訳ではない……と思う。
あれは26年前、免許を取って三ヵ月位して、初めて村から出て、挑戦した徳島市!助手席には免許を持たないイケイケギャグ。彼女の目的の場所にいざ、出陣。「なんじゃーこの訳、ワカらない道路~どこを走ればいいの!道がイッパイ、標識がイッパイ~」
全身が大泣きしていた!助手席の友人が、「この信号、左」とシレーと指さす左に急ハンドルをきった!今に思えば左横に車がいなかった事が、何より。イヤーな予感を感じながら、路地に入った。「ギャー、パトカーなんでやねん」友人は一瞬、他人の顔になった。警察屋さんが、棒らしきものを手に提げて、私を見て合図した。初対面だったが、私に何か言いたいことがあると、すぐに察知できた。私は鋭い勘の持ち主。
「ここ、一方通行ですよ~あちらの車線に渡ってあそこの警察署に来てくれるで~、わたしらが、こっちの車止めておくけんなー」警察屋さんは、優しいおじさんだった。友人は隣でひたすら私に謝っている真っ直ぐにさえ走れないのに、バックで広い車線にでて、あっちに移れなんて、なんと恐ろしい事を!訳がワカラナイという言葉は、こんな時に使うのだと、学習した。
訳のワカラナイままに、ギアーをバックにする!「オーライ、オーライ」おじさんが車線に出て、誘導してくれている。一瞬、記憶が曖昧?ドーンと鈍い音が、した。「あれ?」と思って後ろを見ると、警察屋さんが腰を押さえて、痛がっていた。私は優しい警察屋さんを敷き殺す!ところだった。
警察署の中で書類を書かされた。私は主張した。「祖谷には、あんな標識ありません。初めて見ました。大事な標識なら、もっと大きくして下さい」
警察屋さんは、少し同情してくれた。そして私に言ってくれた。
「頼むから、運転が上手になるまで、祖谷から出んとってくれるで。まだ、腰痛いわ」
あれから、白黒が恐怖になった。取り締まりは、背中から不意打ちに合うようで、気持ちが悪い。警察と私のレーダーとの戦いだ。
信号のない道を、今日も愛犬と歩く。緑のトンネル、葉っぱの傘、おかっぱ頭の、どんぐり発見。贅沢な風景に感謝! 合掌
愛犬「ゴン」と毎日散歩を楽しむ。というより、義務のようになっている。私の体力が主人にフラれてから、めっきり落ちた。体内にミミズか、モグラが寄生しているのではないかと思う位、太陽が苦手になった。雨の日が嬉しい。夕方になると、ホッとする。日が短くなった。「ゴン」と毎日歩いていると、移り変わりをライブで実感できる。
県道は、昔に比べれば随分と広くなった。四十年前は、この道を父のリヤカーを押して歩いた。リヤカー一台がやっとだった道も、今ではトラックが悠々と走れる。いつもの道。未来の貴重な救世主。
近所の子供に会う。子供は正直だ。私をおばちゃんと呼ぶ。気に入らないが、取り敢えず柔らかい笑顔で、返事をしてあげる。子供は杉林の方角を指さしながら、汗をかきかき私に言った。
「おばちゃん、あっちに猿がいっぱいおったよ!危ないよ~」
私は、やはり優しい百万ボルトの笑顔で、返事をした。
「ありがとう。大丈夫。この歳になると、怖いものが、なくなるのよ」
子供は、一瞬化け物をみるような目で私を見た。
そうなんです。私のこの世で一番怖いものは、白バイと取り締まり、白黒のパトカーのみ!制限速度で走っていても、あの白黒の車輌を発見したら、思わず急ブレーキを踏んでしまう。この急ブレーキで、何回助手席の主人の眠りを妨げたことかー。本能で踏んでしまうのだ。私が悪い訳ではない……と思う。
あれは26年前、免許を取って三ヵ月位して、初めて村から出て、挑戦した徳島市!助手席には免許を持たないイケイケギャグ。彼女の目的の場所にいざ、出陣。「なんじゃーこの訳、ワカらない道路~どこを走ればいいの!道がイッパイ、標識がイッパイ~」
全身が大泣きしていた!助手席の友人が、「この信号、左」とシレーと指さす左に急ハンドルをきった!今に思えば左横に車がいなかった事が、何より。イヤーな予感を感じながら、路地に入った。「ギャー、パトカーなんでやねん」友人は一瞬、他人の顔になった。警察屋さんが、棒らしきものを手に提げて、私を見て合図した。初対面だったが、私に何か言いたいことがあると、すぐに察知できた。私は鋭い勘の持ち主。
「ここ、一方通行ですよ~あちらの車線に渡ってあそこの警察署に来てくれるで~、わたしらが、こっちの車止めておくけんなー」警察屋さんは、優しいおじさんだった。友人は隣でひたすら私に謝っている真っ直ぐにさえ走れないのに、バックで広い車線にでて、あっちに移れなんて、なんと恐ろしい事を!訳がワカラナイという言葉は、こんな時に使うのだと、学習した。
訳のワカラナイままに、ギアーをバックにする!「オーライ、オーライ」おじさんが車線に出て、誘導してくれている。一瞬、記憶が曖昧?ドーンと鈍い音が、した。「あれ?」と思って後ろを見ると、警察屋さんが腰を押さえて、痛がっていた。私は優しい警察屋さんを敷き殺す!ところだった。
警察署の中で書類を書かされた。私は主張した。「祖谷には、あんな標識ありません。初めて見ました。大事な標識なら、もっと大きくして下さい」
警察屋さんは、少し同情してくれた。そして私に言ってくれた。
「頼むから、運転が上手になるまで、祖谷から出んとってくれるで。まだ、腰痛いわ」
あれから、白黒が恐怖になった。取り締まりは、背中から不意打ちに合うようで、気持ちが悪い。警察と私のレーダーとの戦いだ。
信号のない道を、今日も愛犬と歩く。緑のトンネル、葉っぱの傘、おかっぱ頭の、どんぐり発見。贅沢な風景に感謝! 合掌