秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

命日に寄せて        SA-NE

2010年11月01日 | Weblog
今日で、四年の時間が過ぎた。
主人の「生命」に対し、恥じない私で居られただろうか。
一生懸命で、生きられただろうか。
ただ、流されたような、時間だけが過ぎていったような気がする。

四年前、医療訴訟を起こそうと、苦悩した時間があった。
医療過誤を専門に扱っていた、弁護士事務所を訪ね、書類を提出し、悶々とした月日を待ち、証拠保全が、執行された。

医療過誤で、最も、重要視されるのは、その医療行為(ミス)が、原因となり、患者の死因に繋がったか、どうかなのだ。
末期癌のガン患者が、仮に点滴を、間違えられて、死期が早まったとしても、裁判で下される判決内容は、被害者側の家族にとっては、納得のいく賠償金額ではない。
勝訴はしても、裁判にかかった費用だけが、莫大にかかる。主人の場合も、まさにそのケースだった。点滴などが、適切でなかったにしても、死期が数ヶ月、早まっただけの事だと説明された。

検討した結果、
弁護士と協力医の見解は、焦点となるのは、私達家族への、主治医の説明不足のみで、争う事になるだろうとの最終結論だった。

主張は認められても、費用と裁判に費やす月日の、無駄になるだけだと助言された。

莫大な量の、主人のカルテ、レントゲン写真、看護記録…
看護記録には、悪意的に書き換えられている、文書があった。

私は医療裁判を、諦めた。生命保険に加入できなかった、重症の肝臓病だった主人。
私が、借金をしてまで、裁判を起こすことで、娘達に迷惑をかけられない。
娘達が、嫁ぐまで、私は、一人で親の任務を、全うしなければ、ならないのだ。

現実が、悔しかった。
諦めきれないまま、もどかしい時間が過ぎた。
眠れないままに、朝を迎え、仕事に行く。そんな毎日をただ、繰り返していた。
無音の夜の静寂は、憎しみに、いつも拍車をかけた。


仕事場の、月の行事予定のボードに、何気なく目が止まったある日。
『弁護士無料相談』
と書いてあった。
その場ですぐに、お願いして、予約した。
弁護士無料相談の、当日が来た。

言葉より先に、涙が溢れ、弁護士の顔を見ながら、一生懸命、これまでの、経過を説明した。
黙って、静かに、ゆっくり、頷きながら、彼は、私の話を聞いてくれた。

正直、誰かの言葉によって、心が救われた記憶は、それまでの、私にはなかった。

彼は、柔らかな口調で、
私に、静かに言ってくれた。
私は、その言葉と出逢う為に、ここまで、辿り着いたのだと、胸の中に、真っ直ぐな光りが、届いた感覚がした。それは、言葉の持つ『チカラ』なのだ。


私が、救われた言葉。憎しみから、救われた言葉。
起き上がれた、言葉。

『裁判では人格を裁く事は出来ないんですよ…』



頭が、可笑しいんじゃない?
なんて、笑われるかも知れないけれど、
私が、時々、やってみる無意味な行為。

主人への メール送信。同じ言葉を打つ。
『オーイ?元気~?』
仏壇に、顔を近づけて、大きな声をかける。
『なあ~、どこにおるん!』


大事なものは
近くにある
探しものは
近くにある

大事なものは
見えないから
魔法にかかって
見えないから

魔法がとけたら
いっしょに
消えてしまうんだ
神様は
イジワルだから

大事なものは
近くにある
あなたの近くにある…



この秋も、
妻は やっぱり、思う。

『亭主 元気で 留守がいい 』


合掌






















コメント
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