夏草や廃家の哀れ垣間みゆ
木賃宿ふるき簾の似合ひけり
籐椅子にうきこと流し転寝す
物憂げな風情のありし夏木蔭
川上の農夫の叫び出水急
緑陰や一つ二つのありしこと
ひそとして山気を吸ひし木下闇
雨粒の猛りし野には夏あざみ
台風による梅雨前線の刺激は各地に被害を齎した
祖谷でも避難準備勧告が出たそうであるが大した被害もなく
収まった、が、長雨の影響で地盤が緩んでおり、土砂崩れに
注意が必要である
この地域は急傾斜地であり、地滑りが常日ごろ起きる危険地帯だ
どこへ逃げようと安全なところは無いと云われている
久保に住んでいたころ、台風の風雨、梅雨の大雨や雷には嫌というほど
経験しているが、あまり良いものではない
怖い思いをするのは家の裏山や裏上を走っている林道の土砂崩れである
雨が降り止まず夜になって益々酷くなってくると至るところから水が
噴出してくる、夜中に拡声器が警戒するようにがなりたてる
そのうちに裏山がゴンゴンゴンゴンと鳴り出すと寝れたものではない
同時に雷でも鳴り出そうものなら、ちじこまってしまう、一度など
自分ちに落ちたのではないかと、夜中に外に飛び出したことがある
祖谷の雷は天井からぶら下げている電球を伝って落ちると、数年前に
それで亡くなったと聞いているから、鳴り出すと布団を隅っこに
ずらして寝たものだ
裏山が何時崩れるか、雷が突然落ちるかは、運しだいであり、恐怖で
まんじりともしない夜を過ごしたものである
祖谷で暮らしていくということは一事が万事こういうことである
わが身すべてを自然のなすままに任せる、運が悪ければ万事窮す
今日一日、明日一日、一季節から四季へと繋げて生きるかその時次第