馬鈴薯の花や老婦に身を委ね
馬鈴薯の花は疎らに試し掘り
長雨に待宵草の咲くを待つ
ひそとして雨に伸びたり半夏生
日射し避け仰ぎて知るや合歓の花
梅雨の曇り空が広がる蒸し暑い午後の3時まえ、緩やかな林道をゆっくりと
歩き最上のT老婦の家を訊ねた
家の前の広い畑にはじゃがいもが植えられて、花も疎らであるがすくすくと
育っている、良く手入れされた畑の石垣に腰を下ろして休んでいた老婦は目ざとく
見つけて、声を掛けてきた
「暑いのう、来たかえ、まあ、お茶でも入れるで話しておいきや」と腰が曲がりがちの
身体をおこして、庭から居間に上がった
縁側で祖谷茶を頂きながら一時の間普通の世間話をするだけなのだが、言葉の端々に
ひとへの思いやり、自然への畏敬などが伝わってきて暖かい温もりをもらって
こころを洗われる気持ちになる
この地に生まれて80数年を生きて暮してきた山里の智慧がかがやいていた
暇ごいのおりに何時も「身体に気をつけて、あんまり働き過ぎんようにな、ぼつぼつ
せにゃ、いかんよ」というのだが
「うん、ありがとよ、わたしゃ、畑で動いとるほうが身体にええんじゃわ、動くのが
たのしいんのよ、きょう一日が早よう暮れて今日も終わったと思うわ、
あしたは、これして、あれしてと思うのたのしいもんよ」
が口癖である
「いもを試し掘りしてみようかのう、持って帰えろ、、植え付けが遅れたでのう
小さかろうのう、初物じゃあ、蒸かしてたべろ」
じゃがいもとたまねぎとねぎを頂いて帰った
テラオ兄さん絵手紙