ジオラマ制作の本を借りて、ペーパークラフトを何気なく散策してたら、3Dメタルモデルなるミニチュアが目に止まった。
要するに、ペーパークラフトのメタルシート版だが、ペーパークラフトよりも重厚感があり、プラモデルよりも質感があるとの事。
プラモデルは塗料や接着剤などのシンナー類を使うから、ハマると溶剤酔いして頭がクラクラする。故に、工作好きな私もプラモデルは数えるくらいしか作った事がない。かと言って、ペーパークラフトではクラフト紙を使っても、安っぽいペラペラ感はどうしても拭いきれない。
今どきのメタナノパズル
今回購入したのは、Piececool社の3dメタリックナノパズル扶桑(ふそう)型戦艦というものだが、マルチカラーではなく、シルバー(金と銀の2色)なせいか、最初は52%オフの1727円で売られていた。しかし、ブラックフライデーAmazon特価という事で、更に40%オフ(691円引き)の1036円で売られてるではないか。
こうなると、”安物買いの銭儲け”の私はあっさりとポチってしまった。
本命は戦艦大和だったが、人気があるだけにシルバー刷りは6000円と標準価格の3598円以上に高く、安いのでも3118円と16%の値引きに過ぎない。だが、他の種類の戦艦も3千円前後と似た様なものだから、扶桑(ふそう)型戦艦だけが突出して安い事になる。
因みに、期間限定(12/4〜11)販売の楽天だと(部品保証付きで)大和は1780円(標準価格8970円)で、扶桑型は1980円(同)と逆転する。全く同じ商品なのに理解に苦しむが、安いというのはただそれだけで嬉しいもんだ。
全てにおいてそうだが、安いのには理由がある。つまり、人気がないのだろうか。
サイズは殆どのモデルが全長30cm程で統一されてるが、扶桑型はピースの数が330個と大和の245個に比べずっと多いが、実際の大きさ(205m)から逆算すると約1/600モデル相当となり、難易度は5/7でレヴューもそこそこである。
一方で大和型の場合、実際は263mもあり、30cmだと1/900モデルとなり、ただでさえ小さいパーツはより小さくなる。が故に、難易度もやや高く(6/7)なり、レヴューも微妙である。
メタルモデルというのは、非常に細かいパーツを張り巡らされた薄いメタルシートからニッパで1つ1つ切り取り、ラジオペンチで爪を折り曲げて固定(接着)する訳だが、金属の質感のお陰で、作り上げた時の達成感は高いらしい。
故に、ナノメタモデル初心者にとって難易度の高い高価なモデルは必要ないし、頓挫した時の事を考えれば、安ければ安い程いい。
商品紹介(写真参照)でも”扶桑型”戦艦の外観を確認すると、大和ほどには豪華絢爛ではないが、とても上品にも思えた。
そこで、”扶桑”(ふそう)型戦艦の歴史を振り返る事にする。歴史と知る事からモデリングは始まるのだ(多分)。
”扶桑”型戦艦とは
日本海軍が”金剛”型巡洋戦艦とほぼ同時期に純国産で設計した超ド級戦艦”扶桑”型の1番艦で、スリガオ海峡海戦で壮絶な最期を遂げた。扶桑型は速力がやや遅いのが欠点で、太平洋戦争が勃発すると、空母機動部隊と行動を共にする事が出来なくなっていた。
戦争中期には、出番がない事から練習艦として使用された時期もあったが、2番艦”山城”と共に、1944年10月のレイテ沖海戦に臨んだ。
しかし、まずアメリカ艦上機の空襲を受けて爆弾1発を被爆し、僅かに傾斜したまま航行を続けたが、その後、アメリカ艦隊の待ち伏せ攻撃に晒されてしまう。右舷中央部に魚雷1本が命中し、第3と第4の両主砲塔の弾火薬庫を誘爆させ、船体は真っ二つに折れて艦首側が沈没。最後には、重巡洋艦ルイビルが砲撃を加えて沈められた。
因みに、初代扶桑艦は戦艦というよりは装甲コルベット艦で、1878年の就役時にはアジア唯一の近代的装甲艦でした。
その後、1915年に就役した扶桑型戦艦である1番艦”扶桑”(2番艦”山城”は17年に就役)は、”排水量3万トンを越えた世界最大の戦艦”で、356mm砲12門を備えた。
就役当時こそ世界最強に近い英国戦艦”クイーンエリザベス”に継ぐ有力戦艦だったが、太平洋戦争を迎える頃には旧式化していったと(「世界初の3万トン超え軍艦”扶桑”型戦艦」より)。
最後に
こうした栄光と悲劇の歴史を振り返ると、異常なまでに愛着が湧く。
戦艦と言えば、大和や武蔵が有名だが、扶桑という名前も実に響きがいい。中国の伝説にある東方の”扶桑国”(日本)から名をとっただけに、どれだけ日本がこの戦艦に期待したかが伺える。
先代の金剛型と同様、扶桑型の設計は英国の設計に頼る面が多く、日本独自の設計とは言い難かった。また、主砲装に起因する問題を有し、防御を犠牲にして攻撃に重点を置くも、攻撃力を発揮できなかった事から”欠陥戦艦”とも呼ばれた。
その後、度重なる改修によって問題点を是正していくも、詰め込み過ぎた設計の為に拡張性が乏しく、時代遅れの戦艦に成り下がっていく。
因みに、致命的欠点とされた扶桑型の速度だが、竣工時は22.5ノットで、後に24.5ノットに改良された。当時の戦艦は24~25ノットが殆どで、30ノットを超えられた戦艦は数える程だったから、欠点と言うほどのものではない。
実際、問題となったのは機関室が前後に分かれ、大型の機関を積むスペースがなく、速度を上げれない事にあったという。
その特徴的な艦橋がインパクト抜群であるが故に、海外の軍艦ファンも多く、その人気は世界最大級の戦艦大和にも劣らぬ勢いだという。
追記〜後悔先に立つ
正直、ここまで細かいとは思ってもいなかった。過去に何度か、1/900の戦艦プラモを作った事があるが、小さい分、パーツ数も少ないから、ピンセットをうまく使えば、何とか組み立てる事はできた。勿論、仕上がりは見れたもんじゃないが、それでも最後まで作る事は可能だった。
しかし、”ナノ”と言う名の通り、小さいと言うより”極小”である。それに、専用のニッパやペンチを使わないと、パーツを取り外す事も折り曲げる事もままならないし、作業が殆ど進まない。
レヴューにある様に、専用工具は必須であったのだが、プラモデル専用の工具類を持ってたから油断してたのも事実であった。
そんな想定外の後悔を引き摺りながら、11×21cm程の4枚のシートにぎっしりと詰まった330個ものパーツ群を眺めるだけで、メチべーションは完全に消え失せた。
”私にはとても無理だ”
レヴューには、難易度は高いがそれだけに作り甲斐があり、”完成時の充足感は何ものにも代えられない”とあるが、私には落ち込みの方が大きかった。
事実、その直感通りになる。このナノモデルは私のスキル、いやアイデアや論理では対応できない事を理解した。
設計図は英語表記だが、意外にも丁寧でわかり易くはある。専用工具を使ったとしても私には組み立てる事が出来るのか?すぐに、不安と懐疑が私を包み込んでいく。
しかし、何でも決めつけはアカンのだ。やってみなきゃわからんではないか・・・
という事で、憂鬱な思いで作業に取り掛かった。基本作業はパーツを切り取り、設計図に従い、各パーツを折り込みながら組合せてモデリングし、ツメをラジオペンチで固定する。
パーツの切り取りは、専用ニッパがないので仕方なく市販のカッターで切り取る訳だが(当前だが)中々切れない。次に、各パーツを組み合わせるのに、ピンセットではうまく固定できず一苦労する。それに、パーツのツメの位置合わせが超難しく、一気にストレスが溜まる。
薄いペラな金属シートな為に、何度か折るとすぐに歪み、千切れてしまう。折れた部分は仕方なく瞬間接着剤で固定するのだが、時間が経つと白濁するので、仕上がりは汚くなる。
そんな悪戦苦闘を繰り返す内、あっという間に3時間ほどが経過。日曜日だから時間に余裕はあったが、もはや限界である。(全46ステップ中)僅かステップ5で頓挫した。翌日も2時間ほど作業したが、何ら進展はなく、ステップ9で頓挫し、結局出来たのは小さな2つのパーツだけでした(下図)。
専用工具があれば多少は捗るかもだが、僅か3mmの砲台なんて娯楽のレベルではない。
一方で、中華製にしては精密に出来たモデルとは言えるが、多少高価でもいいから1/350程の一回り大きいサイズにして欲しかった。
CGのエキスパート免許を持ってる事で、指先は不器用だが”メタナノ”モデルというコンセプトには大変興味があった。
アマゾンの紹介にも”立体視と論理的思考の改善に適している”とあるが、単に指先の器用さと辛抱強さが求められるだけである。事実、ポーランド製のペーパークラフト戦艦扶桑(1/200モデル)を3年掛かりで完成されたツワモノもいる。
今更だが、これなら数学の難しさの方が私には合ってる様な気がする。
”神の国”日本の大きな期待を背負って建造された扶桑型戦艦だが、爆弾一発と魚雷一発のみで呆気なく沈没した。
同じ様に、私のこの悲劇の戦艦を作るという意欲も試みも呆気なく崩れそうな勢いである。
扶桑の魅力は艦橋だと思います。
あれだけ奇々怪々な建造物は、世界中探してもなかなか無いのでは。
それを乗っけて海原を行くのですから、存在自体おもしろい艦だと思います。
でも、流石にお詳しいですね。日本ではあまり耳にしない戦艦ですが、海外ではとても人気があるみたいです。
パーツの数が330個と大和の260個を大きく超えますから、私とした事が恥ずかしい限りで・・・
でも、模型好きのタックさんなら余裕で作れると思いますから、ぜひチャレンジしてほしいですね。
もし完成したら、記事にしてほしいものです。
私は正直落ち込んでますが、”身の程知らず”とはこういう事を言うのでしょうね(悲)。
プラモデルの記事、いつも楽しみにしてます。
コメント有り難うです。