象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

花見と豪雨とハンマーと〜真夜中の訪問者”その135”

2023年10月11日 13時13分46秒 | 真夜中の訪問者

 最近は殆ど夢を見なくなった。
 いや、見てはいるのだろうが、印象が薄すぎて殆ど思い出せない。
 しかし、今回見た夢は非常に鮮明に覚えている。

 夢の舞台は、とあるバーだった。
 私はある旧友と待ち合わせをしていた。
 その男は、今ではそこそこ事業に成功してるらしく、下から上までブランド品で飾られていた。
 それに比べ、私は愛妻に先立たれたばかりで、1人モン状態である。
 小柄だが恰幅のいい男は、昔とちっとも変わらなかった。
 ”よう、久しぶりだな”
 私は思わず笑ってしまった。
 ”君も相変わらずで、まるで映画に登場する成金のチンピラみたいじゃないか”
 男も笑っていた。
 ”いや、お前が落ち込んでると思って、声を掛けたんだ。でも元気そうでホッとしたよ”

 男は家族の写真をiPhoneで映し出していた。
 ”倅はいま有名小学校の3年生。エレベータ式で有名私大にまで何もせずに進学できる”
 ”ああ、地方の国立大へ行っても、オレみたいに落ちぶれるだけだからな”
 ”ま、そう謙遜すんなって。生きてりゃいい事もあるさ。オイラだって今までは散々な目に遭ってきたんだ。少しくらいはいい思いしてもバチは当たらんだろう”

 子供の横には自慢の女房が映し出されている。
 決して美人でも可愛くもないが、男を支えてきた自負みたいなものが伺えた。
 ”奥さんが君をここまで持ち上げてくれたんだな。そんな雰囲気がこっちまで届きそうだ”
 ”彼女がいなかったら、今のオレはなかったかもだが、実を言うと今浮気してんだ”

 私は腰が抜けそうになる。
 ”おいおい、それってヤバくねーか?バレたら一瞬で家庭崩壊だよ。少なくともオレならそんな危険な橋は渡らない”
 ”ああ、それは十分に解ってるつもりだ。でも好きになったのは事実で、だからこうして打ち明けてんだ”
 ”でも羨ましい限りだよ。オレには女なんて全く寄っつかないし、このまま1人で死に絶えるのかなと思うと、そんな君でも羨ましい”
 ”冗談言うなよ、オレだって切羽詰まってるさね”


温泉旅館

 男はパスワードを入力し、女の写真をiPhoneで映し出した。
 その女は朝鮮系の女だった。一目で判る程に、その特徴は抜きん出ている。
 ”まさか?・・・”
 ”そのまさかよ。去年韓国へ行った時、<脱北>の女と知り合ったんだ。それ以来続いている”
 ”今はお前が囲ってるのか?”
 ”いや、そんな危ない事はしないさ。まだ十代で、今は韓国の大学に通ってる。妻には仕事だと嘘を付き、韓国へ行く度に遭っている”

 私は目の前のハイボールを一気に飲み干した。男は(見かけに似合わず)お酒がダメなので、炭酸水を飲んでいる。

 ”でも奥さんは既に気付いてるよ。もう逃げられない”
 ”ああ、それも判ってる。だから君に相談したんだ”

 男は勝手に会計を済まし、店の外に出た。
 私は男の後についていき、”これから何処へ行くのか”と訊ねる。
 ”知り合いの温泉旅館がある。朝鮮系だがとても人気があり、なかなか予約が取れないんだ”
 まだ夕方だったから、ゆっくりと温泉に浸かれる。そう思うと、今までのモヤモヤが晴れたような気分になった。
 しかし、ここからが大変だった。
 賑わうロビーを見渡すと、”土足厳禁”と書かれた看板が目についた。フロントに尋ねると、上履きを別途購入する必要があるらしい。
 男は申し訳なさそうに、ロビーの片隅にある売店に目を送る。
 ”言い忘れてたけど、あそこで上履きを買うんだ。少し高いけど我慢してくれ”

 私は狭いスペースで仕切られた売店へ行き、スリッパと新聞をレジのオバさんに差し出した。
 ”3000円”の表示に、腰が砕けそうになる。
 ”サービス料が含まれてるから高いの・・我慢して・・でもお湯の方は保証するから”
 私には嫌な予感がした。
 ”単なるボッタクリ旅館じゃないか・・”
 部屋に荷物を置くと、男は既にいない。
 ”何時も自分都合で、身勝手なやつだ”
 そう思いながら、1階の大広間に隣接する広い浴場へとたどり着いた。
 大きな岩が荘厳な雰囲気を醸し出していた。評判通りの温泉ではある。
 しかし、ここでも余計な出費が重なる。バスローブとバスタオルと洗面用具を買わされる羽目になったのだ。
 私は帰りたくなった。旧友を探すも何処にもいない。
 店員が寄ってきて、受付に行くように諭す。
 ”結局は、温泉も旧友も愛人も子供も女房もペテンだったのか・・” 
 そう思うと、何だかやりきれなくなった。
 そこで、夢の舞台が変わる。

 
花見と大雨

 私は、ある地方の花見の会場にいた。
 会場とはいっても、歩行者天国みたいに市道を封鎖し、花見の会場にしている。
 ただ、予約してたホテルが急遽キャンセルになり、私は今夜泊まるホテルを探していたのだ。
 スマホを弄っても埒が明かないので、近くのコンビニに寄り、店員にホテルの予約を申し込んだ。が、部屋が空いてるホテルはないという。
 いきなりの想定外に途方に暮れてると、大雨が降り出した。先まで路上で賑わってた花見客らが、次々と店内に押し寄せてくる。
 やがて、店内は立ち呑み状態になる。かなり窮屈だが、目の前には若い女が身体を密着させていたので、悪い気はしなかった。
 ”折角、時間を掛けて作り上げた髪型なのに、全てが台無しだわ。それに天気予報でも雨が降るとは言ってなかったし・・”
 彼女は窮屈な手で、スマホを私にかざす。
 ”想定外というものは常に起きるものだよ。確率的に存在するんだから不思議はない”
 ”偶々私の運が悪いってこと?”
 ”いや私だって、ホテルの予約が急遽キャンセルされて、落ち込んでた所さ”
 ”だったらお互い様って事ね”

 女はホッとしたのか、窮屈な状態でも微笑みを返してくれた。

 やがて雨が止み、店内に詰め込まれてた花見客らは、勢いよく飛び出していく。
 私と目の前の若い女は、不思議と気が合った。気がついたら、レジの隅に設けられた飲食スペースでお酒を飲みあっている。
 私はハイボールで、女はカシス酎ハイみたいな洒落たお酒だ。
 ”ここで朝まで飲んでれば、夜なんて一気に明けるわ。これも想定外な事なのかな”
 ”いや、君は外で花見を楽しめよ。友達と来たんだろ?私はここで独り晩酌をする”
 ”それって退屈すぎない?一緒に楽しみましょうよ”
 ”いや、花見よりも私にはここがお似合いみたいだ。外でワイワイ飲むなんて、そんな歳でもないし・・”
 ”だったら、想定外に乾杯ってことで”

 女は微笑みながらコンビニの外に出た。私は、ほろ酔い気分で彼女の背中を追っていた。
 女は時折振り返り、私にウインクする。
 朝鮮系の女とは違い”日本の若い娘は垢抜けしてる様だ”と、贔屓目だが感心する自分がいた。

 2時間ほど時間が経ったろうか、雨はすっかり上がり、路上では花見の宴が再開され、一気に盛り上がっていた。
 場の勢いに誘い込まれる様にして私も外へ出る。メイン通りを飾る白色LEDのネオンが所狭しとキンキンに輝いてるせいか、まるで白昼のようだ。
 今どきの花見を見学しながら歩いてると、昔勤めてた会社の同僚たちが花見をやっているではないか。
 私にはとても懐かしく思えた。さり気なく近づくと、同僚らは直ぐに気付いたらしく、向こうから声を掛けてきた。
 ”おお〇〇君じゃないか。久しぶりだな〜君も花見か?”
 私は丁寧にお辞儀をし、今や親父世代になった同僚らの一人一人と挨拶を交わす。
 時間を忘れる程に、花見の宴は盛り上がり、気がついたら寝込んでいた。
 目を覚ますと、再び豪雨が襲ったらしく、全てが吹き飛んでいた。元同僚らは準備したテントや資材の片つけに追われている。
 私はよく状況が飲み込めず、何を手伝っていいのか要領を得ないでいる。
 ”想定外が2度も続くか・・”


ハンマーがもたらした奇跡

 私は彼らと別れ、大荒れに荒れた花見の会場を散策する。
 気持ちは大きく沈み込み、無意識の内にコンビニで出会った若い女を探していた。
 一方で、メイン通りを着飾っていたコンビニやあらゆる店の化粧ガラスは粉々に飛び散り、まるで「地球最後の日」状態である。
 顔形や体型を幾ら説明しても誰に聞いても、彼女らしき人は見なかったと言う。
 友達らと一緒に来てた筈だから、”見なかった”というのはあり得ない。
 私は独り途方に暮れていた。そして、夢の舞台が変わった。 

 気がつくと、私はある高校の運動場にいた。
 鉄棒がある所で女子高生らの体力測定が行われてるらしい。よく見ると、その中に彼女がいるではないか。遠くからでも、はっきりと視認できる程に印象的であった。
 上下グレーの統一された冬物の運動着で身を包んでいたが、明らかに彼女だった。私は彼女に近づくと、彼女もすぐに私に気づいた。
 ”あの後、大丈夫だったかな。2度も豪雨に襲われて災難だったけど、ケガとかなかった?”
 彼女は、あの時と同じ様な屈託のない笑顔で応じる。
 ”いいえ全然。2度目の豪雨の時はすぐにコンビニの裏側に回り込んだの。表はガラス張りで、割れたガラスの破片が舞ってたから・・”
 ”でも、どうやって無事に逃げおおせたの?”

 彼女はくすっと笑う。
 ”貴方が店内にバックを忘れてたでしょ?それを届けようと思って貴方を探してた。でも全然見つからなくて、そしたら豪雨よ”
 ”最悪だった”
 ”いえ全然、バックの中身を見たらハンマーが1つだけ入ってて、それでコンビニの裏側に周り、裏ドアをハンマーでこじ開けた。想定外にしては出来すぎでしょ?”

 彼女の口は大きく広がり、最後には笑い転げてしまった。
 ”だって偶然にしてはおかしいくない?バッグの中にハンマーがあるなんて・・それにそのハンマーが私を救ってくれたんだから”
 ”そんなにおかしいかな”
 ”貴方とハンマーなんて、不釣合だから余計におかしいの”

 私は考え込んでいた。
 ”なぜハンマーを持ち歩いてたんだろ?それにバッグを持ち歩いてた記憶がない”
 そうこう思ってる内に、夢から覚めた。


最後に

 3度とも夢の舞台が変わるという珍しい体験だったが、とても愉快な経験でもあった。
 本当は彼女とはもっと色んな会話を楽しんだ様に思う。
 朝鮮系の温泉旅館や金ジャラの旧友にはウンザリだったが、コンビニで出会った若い女はとてもチャーミングだった。
 異論もあるとは思うが、私は世界中で日本の女性が一番美しく可愛いと思う。勿論、世界にもセクシーでベッピンさんは沢山いる。でも日本の女性は暖かみと品格があるように思える。

 (異論もあろうが)私は人格は品格に比例し、それらを支えるのは知性だと思う。
 日本の女性は、そうした人格と知性のバランスが程よく取れてるようにも思える。勿論、そうでない人も多くいるかもだが。 
 最近は過去の悪い事ばかりを思い出し、寝付けない事も多かったが、久しぶりに愉快な夢を見て、元気をもらった気がする。
 という事で、ハンマーと花見に乾杯である。 



2 コメント

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スポーツの秋 (tomas)
2023-10-13 20:11:41
ラグビーは負けちゃったし
MLBも前田のツインズと藤浪のオリオールズも負けてしまった。
アジア大会も終わったし、残るはプロ野球の日本シリーズだけでしょうか。

スポーツの秋ですが
温泉にでも浸かって
花見でもしたい気分になりました。
夢の中の花見では
豪雨に見舞われたみたいで散々でしたね。
でも最後よければ全てよしということで
ではまた・・・ 
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tomasさん (象が転んだ)
2023-10-13 22:53:50
何だか、急に寂しくなりましたよね。
特に、ラグビーのアルゼンチン戦は興奮しました。
晩酌しながら見てたんですが、少しも酔う事がなかったです。

日本はプロ野球のクライマックスが残ってますが、ラグビーみたいに興奮できるんでしょうか。
但し、10月は秋ドラマで盛り上がるんですが、個人的には「フェルマーの料理」に期待したいです。
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