前回「その3」では、5次対称群と5次交代群と5次方程式の可解性との繋がりを、正12面体を使って証明しました。
ガロアが方程式のガロア群により代数的非可解性を証明したのとは対照的に、アーベルは方程式の可換性に着目し、非可解性の証明にこぎ着けました。
勿論、”可換な解の対称性”という視点では両者共に共通してますが、ガロアこそが解の置換を方程式の群として論じた最初の人物でした。つまり、”代数的可解性は可換な解の対称性に依存し、対称性を崩せばべき根で解ける”事を突き止めます。
一方でアーベルは、ガウスの円周等分方程式をヒントにアーベル方程式の発見し、”解全体が巡回的な対称性を持つ時にべき根で解ける”事を主張しました。ここにて、可解性と可換性を結びつけ、代数的非可解性の道を大きく前進させたアーベルですが、そこで命が尽きた。
前回のおさらい〜方程式の可解性と可換性
アーベルは、可解な方程式の特徴として可換な対称性という可換性を発見します。例えば、2つの解は2次対称群S₂と同じく巡回的(可換)となる。故に、2次対称群と2次方程式を解くプロセスの類似性に注目した。
つまり、S₂の中に恒等置換eを含む不変部分群(正規部分群)を含めば、2次方程式はべき根で解ける。同じ事は、3次方程式でも4次方程式でも言えるが、3次対称群S₃や4次対称群S₄が可換か否かは置換表を使い、一々調べる必要がある。
こうして、S₃やS₄の中に置換eを含む正規部分群を含めば、3次と4次方程式はべき根で解ける事が判る。
が、5次方程式となると話が全く変わる。勿論S₅もA₅も可換でない事は明白だし、5次対称群S₅の元は5!=120個あり、偶置換のA₅(5次交代群)をとっても60個で、置換表で60×60=3600通りを一々調べる必要がある。
故に、正多面体の回転対称性を使って証明する訳だが、例えばS₄は立方体をモデルにし、それぞれの頂点に向かう4つの対角線を考える事で回転対称性を説明する。が、S₅の回転対称性を持つ正多面体は存在しない。
しかし、A₅は正12面体と正20面体の両方の、同じ回転対称性を表現する。つまり、正12(20)面体について、その対称性の中に1つでも正規部分群を見つける事ができれば、5次方程式がべき根で解けるとなる。
結果から言えば、正20面体の対称性は他の様々な対称性と相互に干渉する。これを5人のダンサーの偶ステップの組A₅に例えれば、60×60=3600ものステップの組合せの内で、同値可能な全ての軸に拡張する時、それ自身で閉じたステップを作る様な正規部分群は存在しない。
つまり、美しく入り込んだA₅のパターンは分離した部分に分解するにはあまりにも複雑すぎる。従って、この非可換なダンスそれ自身全体よりも小さな(恒等置換e以外の)正規部分群は存在しない。故に、5次方程式がべき根で解けない事が判る。
前回では、正20面体ではなく、正12面体による証明を紹介したが、正12面体の中に合計で60個の回転対称性を見つけ、5次方程式の5つの解の置換とみなすと、5次対称群S₅の120個の入れ替えのうち、偶置換(5次交代群A₅)に当たる60個が正12面体の回転で表される事が判る。
いま、5次方程式の解の置換となるS₅の偶置換A₅である60個の正12面体の任意の回転操作をh∈Hとする。そこで、hがただ1つ決まれば、任意のg∈Gに対し、gHg⁻¹∈H(⇔gH=Hg)となる様なGは群を成し、60個の元の正12面体群となるので、H=Gとなる。
つまり、解の任意の置換をgとすれば、g∈Gを不変に保つ入れ替え全体の元の集合HはgH=Hgを満たし、HはGの正規部分群と言える。但し、gとHを入れ替えても不変だから”不変部分群”と名付けたアーベルの表現は、実に見事で簡潔明瞭でもある。
従って、正12面体群Gと5次交代群A₅は同じ事で、正規部分群の記号▷で書けば、S₅⊃G=A₅▷{e}となり、恒等置換e以外を含む正規(不変)部分群は存在しない。
故に、5次方程式がべき根で解けない事が判る(証明終)。
以上、長々と前回のおさらいでした。
そこで今回は、いよいよ本題であるアーベルの「不可能の証明」に入ります。
不可能の証明〜ステップ1-1
「アーベルの証明」では、1824年と26年の2つの論文(原文の英訳)が付録AとBとして解説付きで紹介されてはいるが、山下純一氏が訳注を加える事で、著者の意味不明な解説や間違いを修正してあるのは有り難い。
因みに、2つの論文の日本訳として、「群と方程式」(守屋実賀訳、1975)がある。他にも、「不可能の証明」(津田丈夫、1985)や「方程式論」(渡辺秀雄、1929)でも紹介されている。
私も、アーベルの原論文(英訳)が紹介されてる書物を様々に検索した結果、一番新しい2005年初版のこの本に辿り着いた。
最初の論文は、「5次の一般方程式の解法の不可能性を証明する代数方程式についての論文」(1824年)というタイトルで、それを修正・加筆したのが「4次より高い次数の代数方程式を一般には解く事が不可能である事の証明」(1826年)である。以下、アーベルの論文を青字(斜字)で区別します。
まずアーベルは「その1」と「その2」でも紹介した様に、”一般の5次方程式をy⁵−ay⁴+by³−cy²+dy−e=0―①と書き、これが代数的に可解だったと仮定しよう。
つまり、解yが係数a,b,c,d,eとそれを含む多重のべき根からなる代数式により表現できるものと仮定する”
但し、①式の係数の符号は、解と係数の関係式で符号を気にせずに議論を進める為の、天才アーベルならではの工夫である。
”この時、y=p+p₁・ᵐ√R+p₂・ᵐ√R²+⋯+pₘ₋₁・ᵐ√Rᵐ⁻¹―②と書ける事は明らかである。但し、m:素数、R,p,p₁,p₂,…は②の右辺と類似した代数式とする。つまり、yは係数a,b,c,d,eのみから出発し、べき根を幾重にも”添加”し、順次得られる代数式(拡張された有理式)の最終段階と出来る”
(後でも説明するが)p₁=1となる事にも留意する。
但し、この部分は非常に解りにくく、意訳してもまだ解りにくい。アーベルの2年後の論文によれば、四則で閉じた体をFとし、それに新しい要素γを追加し、Fの元とγの間の四則で閉じた体F₁に拡張する事を”Fにγを添加する”とアーベルは呼ぶのである。
ここで、a,b,c,d,eの有理式全体をΩ0とし、Ω0の元:R0,R0’,R0’’,…の素数のべき乗根であるᵐ⁰√(R0),ᵐ'⁰√(R0’),ᵐ''⁰√(R0’’),...を添加して得られる(拡張された意味での)有理式の全体をΩ₁とする。
次に、Ω1の元:R1,R1’,R1’’,…の素数のべき乗根であるᵐ¹√(R1),ᵐ'¹√(R1’),ᵐ''¹√(R1’’),...を添加して得られる(拡張された意味での)有理式の全体をΩ2とする。
以下同様に、次々と有理式(の全体)を拡張した時、”代数的可解”との仮定から、何処かでこの拡張はストップし、その最終段階の拡張された意味での有理式全体Ωは、Ω=Ωk(ᵐᵏ√(Rk),ᵐ'ᵏ√(Rk’),ᵐ''ᵏ√(Rk’’),...)の元として解yが表現出来る事になる。
つまりアーベルは、解yがΩの元なので、最後に出てくるRkをR、mkをmと書き、解yがΩ’=Ωk(ᵐ'ᵏ√(Rk’),ᵐ''ᵏ√(Rk’’),...)の元を係数とする、ᵐ√Rの有理式となる事を言いたかったのだ。
従って、これは一般には非常に多重化したべき根を含む代数式(拡張された有理式)となる訳だが、それだけでなく、その代数式が②の様な形に簡略化出来る。つまり”有理式から多項式に変形できる”とアーベルは主張した。
こうしたアーベルの意図する所がとり難いのは、R,p,p₁,p₂,…,pₘ₋₁がΩ’の元である事を簡潔に書こうとした為である。故に、この論文の英訳も原文に忠実すぎる為に、解り難さがそのまま遺伝している。
例えば、”有理式から多項式への変形が明らかだ”とアーベルは書いてはいるが、ᵐ√Rの有理式となる事までは明らかでも、それがᵐ√Rの多項式となる事は明らかとは言えない。
勿論、アーベルにとっては”明らか”だったが、(結婚式の資金を捻出したが故の)印刷経費削減の為もあり、詳しい証明を省いたのだろう。事実、2年後の論文ではこの証明の概要を書いている。勿論、読んで理解するのば簡単?だが、思いつくのは容易ではない。
ステップ1-2
”以上より、ᵐ√Rはa,b,…,p,p₁,p₂,…の有理式で表せないと仮定できる事は明らかで、また、RをR/p₁ᵐで置き換える事でp₁=1とできる事も明らかである”
但しアーベルは、p₁≠0と仮定してるが、p₁=0の時の議論が必要となる。だが、その時も同じ形に持ち込める事が示せる。
”この時、y=p+ᵐ√R+p₂・ᵐ√R²+⋯+pₘ₋₁・ᵐ√Rᵐ⁻¹―③と書ける。ここで、①式にこのyの値を代入し、整理して得られる代数式をP=q+q₁・ᵐ√R+q₂・ᵐ√R²+⋯+qₘ₋₁・ᵐ√Rᵐ⁻¹―④とする。
但し、ここでは、q,q₁,q₂,…は、(有理数と文字としての係数又は)量であるa,b,c,d,e,p,p₂,…及びRの多項式を表す。
一方、P=0として④の方程式が成立するには、q=0,q₁=0,q₂=0,…,qₘ₋₁=0となる必要があるが、次にこれを証明する。
実際、ᵐ√R=zと書けば、zᵐ−R=0と(これを④に代入した)q+q₁・z+q₂・z²+⋯+qₘ₋₁・zᵐ⁻¹=0―⑤の2つの方程式を得る。
ここでもし、量q,q₁,q₂,…の全てが0に等しくないと仮定すれば、上の2つの方程式は共通解を持つ必要がある。
これらの共通解をk個の解とするk次方程式で、R,q,q₁,q₂,…,qₘ₋₁の有理式を係数とするものが存在する”
但し、⑤の2つの方程式の左辺にて、「ユークリッドの互助法」を行えば、最後に2式の最大公約式が現れ、この最大公約式こそが以下の⑥式の左辺となる。
”そこで、このk次方程式をr+r₁z+r₂z²+⋯+rₖzᵏ=0―⑥とすると、この方程式の全ての解がzᵐ−R=0の解にもなってる事から、これらの解はαᵤzと書ける(但し、αᵤは円周等分方程式であるzᵐ−1=0の解を示す)。
この時、⑥のzにαᵤzを代入する事で、以下のk個の方程式を得る。
r+r₁z+r₂z²+⋯+rₖzᵏ=0―(⑦-1)
r+αr₁z+α²r₂z²+⋯+αᵏrₖzᵏ=0―(⑦-2)
r+α₁r₁z+α²₁r₂z²+⋯+αᵏ₁rₖzᵏ=0―(⑦-3)
………
r+αₖ₋₂r₁z+α²ₖ₋₂r₂z²+⋯+αᵏₖ₋₂rₖzᵏ=0―(⑦-k)が得られる”
但し、⑥のzにαᵤ₋₂・zを代入すれば、(⑦-u)を得る。ここでu=1,2,…,kとし、α₋₁=1,α₀=αとする。また、kは⑤式の共通解の個数となる。
”これらK個の方程式から、zを量r,r₁,r₂,⋯,rₖの有理式で表せる。一方で、r,r₁,r₂,⋯,rₖはa,b,c,d,e,R,p,p₂,…の有理式なので、zもまたこれらの有理式となる。だが、これは矛盾し、仮定に反する。
従って、q=0,q₁=0,q₂=0,…,qₘ₋₁=0―⑧となる必要がある(証明終)”
因みに、上のk個のk次方程式から、zをr,r₁,r₂,⋯,rₖ,α,α₁,…,αₖ₋₂の有理式で表す事が出来るのは、k個の未知数z,z²,z³,⋯,zᵏからなるk個の1次方程式が作る連立方程式と考える事で理解できる。一方で、元の方程式①が1個の5次方程式から5個のyの値を求める必要がある事と異なる事に注意する。
つまり、⑦式はk個の未知数を決定する為のk個の1次方程式となり、簡単に解ける。即ち、zのべき乗を別々の未知数として考えればいい。だが最初に、z=ᵐ√Rがr,r₁,⋯,rₖ,α,α₁,…,αₖ₋₂の有理式ではないと仮定した事を思い出せば、⑧となる事が必要だと判る。
ステップ1-3
”仮に今、q=0,q₁=0,q₂=0,…,qₘ₋₁=0―⑧が成立するとすれば、y=p+ᵐ√R+p₂・ᵐ√R²+⋯+pₘ₋₁・ᵐ√Rᵐ⁻¹―③のᵐ√Rを、ᵐ√R,α・ᵐ√R,α²・ᵐ√R,α³・ᵐ√R,…,αᵐ⁻¹・ᵐ√R―⑨で置き換えて得られるm個のyの値が、元の方程式①を満たすのは明らかである。
ここで、αはαᵐ⁻¹+αᵐ⁻²+…+α+1=0―⑩を満たす”1の虚のm乗根”とする”
因みに、αを”1の虚のm乗根”とする時、1,α,α²,α³,…,αᵐ⁻¹が1のm乗根の全体になる事に注意する。また、”明らか”となるのは、任意のt∈0,1,2,…,m-1にて、Ω(α)の元:p+(αᵗ・ᵐ√R)+p₂(αᵗ・ᵐ√R)²+⋯+pₘ₋₁(αᵗ・ᵐ√R)ᵐ⁻¹を①の左辺のyに代入すると、④と同じ形のΩ(α)の元:q+(αᵗ・ᵐ√R)+q₂(αᵗ・ᵐ√R)²+⋯+qₘ₋₁(αᵗ・ᵐ√R)ᵐ⁻¹を得る為である。ここで、先の⑧を仮定してるから、これは0となる。
”一方で、これらのyは全て異なる事も判る。仮にそうでないとすると、方程式P=0と同じ形の方程式が得られるが、ステップ(1-2)で見た様に、この方程式からは矛盾した結果が得られる。つまり、mは5より大きくなる事はない。
従って、
y₁=p+ᵐ√R+p₂・ᵐ√R²+⋯+pₘ₋₁・ᵐ√Rᵐ⁻¹―(⑪-1)
y₂=p+α・ᵐ√R+p₂α²・ᵐ√R²+⋯+pₘ₋₁αᵐ⁻¹・ᵐ√Rᵐ⁻¹―(⑪-2)
………
yₘ=p+αᵐ⁻¹・ᵐ√R+p₂α²⁽ᵐ⁻¹⁾・ᵐ√R²+⋯+pₘ₋₁α^((m-1)²)・ᵐ√Rᵐ⁻¹―(⑪-m)
とする時、元の方程式①の解をy₁,y₂,y₃,y₄,y₅とおく事が出来る。
ここで、上のm個の方程式から
p=(y₁+y₂+…+yₘ)/m―(⑫-1)
ᵐ√R=(y₁+α⁻¹y₂+…+α⁻⁽ᵐ⁻¹⁾yₘ)/m―(⑫-2)
p₂・ᵐ√R²=(y₁+α⁻²y₂+…+α⁻²⁽ᵐ⁻¹⁾yₘ)/m―(⑫-3)
………
pₘ₋₁・ᵐ√Rᵐ⁻¹=(y₁+α⁻⁽ᵐ⁻¹⁾y₂+…+α^(-(m-1)²)yₘ)/m―(⑫-m)を導く事が出来る”
因みに、⑪のm個の方程式を順に足せば、y₁+y₂+…+yₘ=mp+ᵐ√R(1+α+…+αᵐ⁻¹)+p₂・ᵐ√R²(1+α+…+αᵐ⁻¹)+…+pₘ₋₁・ᵐ√Rᵐ⁻¹(1+α+…+αᵐ⁻¹)となり、1+α+…+αᵐ⁻¹=0から、y₁+y₂+…+yₘ=mpとなり、(⑫-1)を得る。
また、(⑪-1)〜(⑪-m)をそれぞれ1,α⁻¹,α⁻²,α⁻³,…,α⁻⁽ᵐ⁻¹⁾倍して加えると、総和等式の右辺はm・ᵐ√Rだけが残り、(⑫-2)が得られる。以下同様に、(⑪-1)〜(⑪-m)をそれぞれ1,α⁻ᵗ,α⁻²ᵗ,α⁻³ᵗ,…,α⁻⁽ᵐ⁻¹⁾ᵗ倍して加えれば、(⑫-(t+1))を得る。
”以上より、p,p₂,…,pₘ₋₁,R,ᵐ√Rは元の方程式①の解の有理式となる事が判る。
これらの1つ、例えば、Rについて考える。そこで、R=S+ⁿ√v+S₂・ⁿ√v²+…+Sₙ₋₁・ⁿ√vⁿ⁻¹―⑬とする。これを上の[ステップ1-3]でやった様に、yの時と同じ方法で処理すれば、ⁿ√v,v,S,S₂,…がRの異なる値全体の有理式となり、Rの異なる値は全てy₁,y₂,…の有理式となるので、ⁿ√v,v,S,S₂,…もまた、y₁,y₂,…の有理式となる。
この論法を更に進める事で、②式のyを表す為に必要となる全てのべき根ᵐ√R,ᵐ√R²,…,ᵐ√Rᵐ⁻¹が、最初の方程式①の解y₁,y₂,…の有理式となる事が示せる。
これが判れば、証明を完了する事はそこまで難しくはない”
但し、これ以降は証明全体の第2ステップとなる。
かなり長くなったので、証明の第1ステップを終えた所で、終りにします。
アーベルの不可能の証明では、ここが一番難しく、解り辛い所も多かったでしょうが、第2第3ステップに踏み込む事で理解が多少は楽になります。
では・・・
有理式のべき根を次々と添加していき、有理式を拡張した時、何処かでこの拡張はストップするとアーベルは予想した。
その最終段階の拡張された意味での有理式全体は多項式となると踏んだんだろうね。
元の5次方程式の係数a,b,c,d,eで作られる有理式全体をΩ0として、Ω0の元で作るべき根を添加して得られる(拡張された意味での)有理式の全体をΩ1として、Ω1→Ω2→…→ΩKと拡大していくと、ΩKで限界となり、そのΩKの元として解yが表現出来ると閃いた。
つまり、解yはΩの元だから、解yが最後に出てくるΩKの元を係数とするR^(1/m)の有理式となる事を言いたかったんだろうか。
著者のピーター氏も訳者の山下氏も一番迷ったであろう事は容易に推測できますね。
アーベルは四則で閉じた体Fに新しい要素を追加し、体F₁に拡張する事を”F(有理式)に解を添加する”としました。
言われる通り、F₁→F₂→…と膨らみ、Fₖの所で限界が来る。
そこで山下氏は、5次方程式の係数a,b,c,d,eの有理式全体をΩ₀とおき、Ω₀の元(R₀,R₀’,R₀’’,…)の素数の多重べき根(R₀^(1/m₀),R₀’^(1/m’₀),R₀’’^(1/m’’₀),…)を添加して得られる(拡張した)有理式全体をΩ₁とし、Ω₀→Ω₁→Ω₂→…と次々に拡張し、最後にはΩₖで限界が来る。
一方で、元の方程式の解yはΩの元であり、最後のΩₖの元(Rₖ,Rₖ’,Rₖ’’,…)のべき根(Rₖ^(1/mₖ),Rₖ’^(1/m’ₖ),Rₖ’’^(1/m’’ₖ),…)を添加して得られる有理式全体の元として、解yが表現できる。
そこでアーベルは、解yがΩ’=Ωₖ(Rₖ’^(1/m’ₖ),Rₖ’’^(1/m’’ₖ),…)の元を係数とするᵐ√Rの有理式となる事を言いたかった。
故に、RₖをR、mₖをmと書け、②式の様な多重化したべき根を含む代数式(有理式)を得る事が出来る。
従ってアーベルが主張した様に、解yはべき根により簡略化された多項式とも言えますね。
山下純一氏の注釈がなければ、まず理解は不可能でしょうか。
まさに、山下氏による「不可能の証明」の注釈とも言えますね。
連立方程式を解く事で代数的非可解性を解いた天才アーベルの飛躍も脅威ですが、その論文を丁寧に解き明かした山下氏にもアッパレです。
「その4」の解説を補足として記事にするつもりですが、少しはマシにはなるかなと思います。
1ヶ月ほど前に書いた記事で、自分でも解ってた様な気分で書いたんですが、振り返ると混乱してる部分も結構ありました。
数学ブログでは、タイムリーな指摘いつも有り難うです。
この記事を書く前に
多項式と有理式をテーマにした記事があったけど
こういう風につながってんだぁ
でも連立方程式なんていつ以来かしら(?_?)
代数式は有理式と無理式を合わせたものです。
この様に、階層を使って理解すれば、スムーズですかね。
でも、連立方程式って単純な様で、我らが思ってる以上にずっと厄介なものですよ。
では・・・