2015年製作の韓国映画。「白夜行」でも紹介した”私の頭の中の”大ファンであるソン・イェジン主演によるサスペンス・スリラーという事で、大きな期待をした。
国会議員に立候補したチョンチャンの娘が選挙を15日後に控えたある日、失踪する。妻ヨノン(ソン・イェジン)は選挙しか頭にないチョンチャンに怒り狂いそして絶望し、単独で手掛かりを探し始めるが・・・
典型の誘拐ミステリーだが、この作品を一言で言えば、単なる”詰め込み過ぎ”である。
鬼気迫るソン・イェジンの演技には、改めて舌を巻くが、全てを詰め込みすぎて、娯楽としての要素が殆ど感じられない。
駄作というつもりはないが、”過ぎたるは及ばざるよりもまだ悪い”とある様に、せっかくの良作がドブに帰した感がした。
それでも、ソン・イェジンの演技力は女優の域を超えてたように思えた。それに、彼女の女優としての多様かつ多彩な才能を改めて痛感した。彼女は紛れもなく”顔”だけで演技できる、数少ない世界レベルの女優の一人でもある。
ヒッチコックがいたらバーグマンと迷うだろうか?いや、そうでもないか。
”詰め込み”すぎたミステリー
しかし、そんな彼女を持ってしても、展開がややこしすぎて、大きく期待を外れた。
ネタバレになるが、”詰め込みすぎ”たシナリオを簡単に振り返る。
まず、妻ヨノンの娘ミンジンらが担任の先生(シン)を”不倫ビデオ”を使って脅していた。
1億ウォン(約950万円)を要求された先生は不倫相手の男に相談し、男は人を雇い、ミンジンを殺す。
この作品の鍵は、その不倫相手こそがヨノンの旦那であるジョンチャンだという事だ。
しかし設定としてみれば、この時点で既に無理がある。
まず、ミンジンの親友ミオクの留学費用に大金が必要なのは解るが、不倫ビデオで担任を脅すという陳腐な発想に少し興ざめした。学校の一教師にそんな大金を払える筈がない。
それに、当時33歳のソン・イェジン演じる妻の娘が16歳というのも少し無理があるし、見た目にはもっと無理があった。
3つ目の疑問は、ジョンチャンの不倫相手で娘の担当女教師の描き方が浅薄すぎた。
それに、ミンジンとミオクが車の中に設置した盗撮ビデオだが、あんなにハッキリと性行為の全体像が映る筈もない。
その上、誘拐された娘ミンジンの存在がとても曖昧だ。勿論、孤軍奮闘いや獅子奮迅のソン・イェジンの伯仲の演技が終始この映画を支配したが、その他のキャストの影がやはり薄すぎた。
結局、オムツの弱い美人妻ヨノンが旦那の浮気も娘の苦悩も何も知らず、全てを周囲のせいにし、最後には、中途な復讐を旦那や不倫相手の女教師にぶちまける結果となる。
見てて、全てが中途な形で進行し、中途なまま幕を閉じた。お陰で最後まで、この映画のコンセプトが見えなかった。
アナザーストーリー
もし私が監督なら、オープニングで観客の度肝を抜く、不倫のSEXシーンをいきなり持ってくる。次に、腐敗と疑惑にまみれたショッキングな選挙戦のシーンを描く。
その後、ミンジンとその親友ミオクの2人の多感な女子中学生が、父親の不倫と選挙不正疑惑を見抜き、決定的な証拠を掴む。
前半はこの3つのシーンで派手に展開する。
後半に入ると、ミンジンとミコクは匿名で、父親と不倫相手の女教師に脅迫状を書き、父親の腐敗した実像をこれまた匿名で母親に知らせる。
この瞬間、誰もが羨む様な美人で良妻賢母のヨノンは、一気に豹変し、復讐に怒り狂う。
危機を感じたジョンチャンは殺し屋を雇い、まず告発者を始末する。誘拐された娘ミンジンが遺体となって発見されるが、親友のミコクは何とか逃げ切る。
選挙戦に追い詰められたジョンチャンは、狂った妻をも始末しそうになる。
一方で、ミコクから全てを聞かされたヨノンも旦那を追い詰め、殺害しようとするが、ミコクに救われる。
このミコクを孤児として設定すれば、ヨノンはミコクを娘とする事で新たな一歩を歩き出すエンディングになる筈だ。事実、最後の幕切れでヨノンがミコクの事を娘と泣き叫ぶシーンがあるが、最後のシナリオとしてはピタリと辻褄が合う。
脚本が全てと言えばそれまでだが、女教師のシン(キム・ミンジン)もとてもチャーミングだったし、ミコク(キム・ソヒ)もいい味出してた。
しかし何度も言うが、展開に無理があり、ややこしすぎた。”愚直なほどシンプルに”はサスペンスであろうが、ミステリーであろうが同じ事である。
「荊棘(ばら)の秘密」というタイトルだったが、ばらの秘密というより”バレバレの秘密”と言った感じだった。
荊棘(けいきょく)とは、イバラなどの棘(とげ)のある低い木で、またはそういう木の生えている荒れた土地をいう。困難の多いたとえで、人を害しようとする心を意味する。
結局、美しい穏やかな人妻が旦那に裏切られ、娘を殺され、やがて、心に棘のある悪女となる過程を描いた作品ではあるが。もっとシンプルに描くべきだった。
事実、専門家の採点は5点満点で3.1〜3.4の評価だ。
いい映画に変わりはないが、脚本の段階で失敗すると、全てがダメになるという典型の様に思えた。
短歌も、いくらモチーフがよくても、盛り込みすぎると失敗します。でもこの映画見てみたくなりました。
勧めるとしたら「ラストプリンセス」かな?私は見た事ないんですが。
韓国映画は最近少し見てるだけですが、国がバックアップしてるから、日本とはスケールや迫力が違いますね。
韓国生まれということだけで
コメントしなくては、勝手に思っています。
そーですね。
韓国映画のやりすぎの一種でしょうね。
日本に住んでた時は
韓国の映画、日本の映画など
全く観なかったです。
仕事、勉強関係で
英語字幕のある映画しか観なかったのでしたが、
ところがアメリカ移住になって、
ケーブル配信には
韓国映画が日本の映画より多くて
(日本のはアニメがトップですけどね)
英語字幕がどうなっているか確認するために観始めました。
で、ゾウさんが読み明かした典型的な
シナリオに、決まりきった構成などが
オンパレードなので、
後になってうんざりになりましたね。
日本の映画やドラマは
ネチネチして
暗すぎるか、明るくなりすぎるかなので
それにテンポが遅いので
結末がどうなったか早送りして
お終いな感じです。
まあ、それにも日本のアニメは
本当にアニメオタクにさせる何かがありますね。
話が乱雑になりましたが、
要は、韓国映画の問題点、その真髄を言ってくれた、(拍手×拍手)それに尽きるかな。
ですが、記事のテーマから逸脱したコメントは、消させていただきますので、悪しからずです。