象が転んだ

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二級酒の実力〜日本酒とワイン、アナタはどっち?

2022年03月30日 04時31分40秒 | お題

 「二級酒のススメ」で紹介した”蔵人三代”が早くも売り切れた。
 地元の人たちが、私のブログを読んで聞きつけた筈もない。しかし、「たかが二級酒」で”蔵だより”を紹介したら、地元のスーパーでは数週間後には品切れになり、”蔵人三代”の2Lパックが(”蔵だより”に代わり)同じ値段(599円)で陳列されていた。
 しかしそれもつかの間、数日後には品切れになる。

 このスーパーには様々な日本酒がピンキリ揃う。ウン万もする超の付く高級酒は置いてはいないが、ポピュラーなメーカーの普通酒なら大半が揃っている。
 私は今年に入ってから”蔵だより”をずっと買い続けていた。
 当初は、この普通酒(二級酒)もそんなにいい売れ行きではなかったように思う。
 その”蔵だより”(2L、599円)の隣には、”鬼殺し”(1.8L、599円)と”蔵のすけ”(3L、999円)という小山酒造の普通酒が並ぶが、売れ出したのは、一番安い”蔵だより”だった。

 千円前後で買える安い純米酒もあるが、糖度も高く甘すぎるので、私には(淡麗辛口風の)安酒の方がお財布にも身体にも丁度いい。
 ”二級酒がお財布にも身体にも優しい”とは皮肉な結果だが、庶民とは正直な生き物である。
 ”大吟醸”とか”本醸造”とか威張り腐っても、所詮は日本酒。安くて身体に優しいのなら、いや味わいに値段ほどの開きがないのなら、(もっと言えば、捨てるお金があるのなら別だが)誰だって美味しくて安い二級酒を選ぶ(と思いたい)。
 つまり、業者が思う以上に庶民は賢くセコく巧妙に出来てるのだ。

 そこで今日は、(ウクライナ戦争の影響で)物価の値上りが止まりそうにない今、”安くて美味しい”二級酒の実力についてのテーマです。


日本酒か?ワインか?

 “牡蠣にはシャブリ”とは世界の定説だが、“ワインより日本酒だ!”と反発したのが、漫画「美味しんぼ」の山岡士郎である。
 「洋食屋の苦悩」(16巻)で彼は、”ワインは日本酒より多くの有機酸塩を含んでる為、魚介類の生臭さを強める。だから生の貝に合うワインはありません”と否定した。
 確かに、誇張や極論に近い部分もあるが、日本酒贔屓の私にしては、胸のすく思いもする。

 勿論、生牡蠣にも色々あり、それぞれに合うワインは存在する。一方で日本では、昔から日本酒を呑みながら刺し身を食べ、生牡蠣でもワインより日本酒が合うのでは?と思い込む気持ちも理解できる。
 しかし私が気に食わないのは、山岡が高価な大吟醸酒を用意してた事だ。つまり、高級酒なら日本酒でなくとも、高級食材に見合うお酒は幾らでも存在するだろう(多分)。
 せめて、市販されてる安い普通酒を持ってきて欲しかった。それで、そこそこシャブリに負けない程度の相性が証明出来れば、日本酒の完全勝利となったであろうか。
 という事で、ワインと日本酒の対決は(高級酒同士の惨めな)引き分けとしたい。

 一般には、加熱した魚料理なら白ワインで、生魚なら日本酒がよく合うとされる。
 但し、魚介類を多く食する南ヨーロッパには、生や茹でただけの魚介類に合う絶妙な白ワインがある。ブルターニュ(仏)、ヴェネト州にマルケ州(共に伊)、ギリシャの海岸沿いなど。 特にガリシア地方(🇪🇸)には日本酒もびっくりの(魚貝専用の海ワイン)アルバリーニョがあるが、こんなローカルなワインは日本を含め、広範囲には出回らない(ヤフー知恵袋より)。
 沢木耕太郎さんが、マラガ(🇪🇸)のバル(酒屋)で生ハマグリと共に飲んた格安のシェリー酒なんかも、その類であろうか。

 しかし、日本人のワイン狂いには、バブル時代の欧食ブームに浮かれた日本人を見てるみたいで、吐き気がする。
 ”ワイン=高級”とか”ワインは健康にいい”とかのイメージには、生臭というよりアホ臭である。
 一方で、日本人の”大吟醸”や”純米”や”本醸造”などの洒落たフレーズに浮かれる高級酒好きにも辟易する。
 昔の様に、一級酒や二級酒というシンプルな名称の方が良かった。格差は庶民だけでなく普通酒を腐らすだけである。しかし、高級酒に負けまいと進化を続ける”令和の二級酒”の存在も無視できない。


令和の二級酒

 「二級酒のススメ」に寄せられたコメントにもあるが、普通酒(二級酒)にも安くて美味しい隠れた”アル添酒”はたくさんある。
 ただ我々が、それらを発掘しようとしないだけの問題だ。酒だけではなく(何でもそうだが)思考や探索を止めたら、その時点で人類もお酒の文化も終わりである。
 日本酒の消費量全体の約7割を占める普通酒は、かつては二級酒、いや”三倍醸造酒”とまで蔑まれ、大吟醸や純米酒とは異なり、露骨な差別を受けてきた。今でも”料理酒=二級酒”みたいな呼び方もされ、昔ながらの酒呑みには悔しい思いだったろうか。

 (嫌味な呼び名だが)特定名称酒である吟醸酒・純米酒・本醸造酒には使用米の1割以下の、普通酒には28%以下のアルコールが加えられる。それに最近では、醸造アルコールに代わり、精米や米ぬかから作った”米アルコール”も多く使われている。
 従来の日本酒に使用される醸造アルコールは、サトウキビなどの”廃糖蜜”などを原料にそれも安価な海外産が大半でした。
 かつては悪者にされてきた廃糖蜜は、今では”モラセス”と呼ばれ、ミネラルを多く含んだ栄養価の高いシロップとして売られてます。
 一方で、ワイン版"アル添酒"であるシェリー酒やポートワインなどは、ブドウから造られたアルコールだけが使用を許されている。
 そこで日本の酒造業界は、無味無臭な醸造アルコールに代り、お米の香味をもつ”純精米アルコール”の開発に乗り出した。
 製法は(もろみまでは)日本酒と同じだが、それから蒸留させ、100%精米アルコールを生成する。高価な日本酒にはこれら精米アルコールが、安価な普通酒には、以下の米糠アルコールが醸造アルコールに取って代わると。
 精米の過程で多く出る米ぬかから(米糠糖化液を作り)米糠アルコールを作り、原酒と混ぜる。お陰で、普通酒のコストダウンが図られ、色や香味とも淡麗でアミノ酸の少ない酒質が得られるとか。

 この米糠もかつては雑味が出るとして敬遠されてたが、廃糖蜜と同様に(蒸留する事で)再利用が図られるようになった。
 これまで"アル添酒"とバカにされてた二級酒だが、米アルコールの製造技術の進化により、二級酒の多様性も大きく広がっていく。 
 つまり、昔ながらの伝統に拘り過ぎて、思考を停止すれば、令和の二級酒は”飲めたものじゃないが料理には使える”程度の調味料に成り下がってただろうか。

 今こそ、日本人は”令和の二級酒”に目を覚ます時である。
 そして、二級酒でも(沢木耕太郎さんがかつてマラガで口にした格安のシェリー酒の様に)生牡蠣に合う酒が存在すると、堂々と胸を晴って言える日が到来する事を只々願うばかりである。



2 コメント

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ニ倍醸造 (tomas)
2022-03-30 12:33:59
仮に、17度の原酒と35度の米アルコールを混ぜたとして、14度の普通酒を作れば、理論上では原酒の倍以上の日本酒が作れそうです。
原酒と米アルコールの比率は2対1程でしょうから(多分^_^)、原酒とほぼ同じ量の水が加えられる事になります。
«ほぼニ倍醸造»とはこういう事なんでしょうね。

焼酎なら、水で割っても極端に風味が落ちる事もないですが、特に普通酒の場合は米糠を糖化したブドウ糖などを加える事で、淡麗辛口風にスッキリと仕上げる。
ここら辺がメーカーの腕の見せ所なんですよ。
廃糖蜜も糖化した米糠もかつては悪者にされてたんですが、製法の進化により二級酒に大きく貢献する。伝統に拘ってばかりもアカンというこって^^;
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tomasさん (象が転んだ)
2022-03-30 12:59:55
原酒と米アルコールと水の比率で言えば、2対1対2となりますよね。
アルコール度数も約14度。

もろみも液化した方がより澄みきった味わいが出るらしく、色んな製法が試される時代になりました。
健康と美味しさを求める本来の二級酒の在り方は、昔でも(一部では)行われてた筈ですが・・・

今呑んでる蔵人三代は、酎ハイやワインと比べ、酔いが自然で、呑み過ぎてもあまり残らない。
焼酎が残らないと言われるけど、日本酒の方がより健康的なんでしょうか。
これも、焼酎やワインブームで危機感を覚えた酒蔵らが、必死で日本酒の未来予想図を模索した結果なんでしょうね。

色々と教えて下さって、感謝です。
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