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イスラエルとパレスチナのイスラム武装勢力との衝突で、パレスチナ自治のガザ地区では少なくとも子ども58人、女性34人を含む死者197人、負傷者1225人が報告された。
イスラエル占領下の東エルサレムで、パレスチナ人が退去を求められた事などを機に拡大した暴力の応酬は、とどまる様子を見せていない(CNN)。
100年以上に渡り、ユダヤ人とアラブ人はヨルダン川から地中海の間に広がる土地を巡り争ってきた。そして、イスラエルが1948年に建国して以来、パレスチナ人は繰り返し手痛い敗北を味わってきた。
ここ15年の間、繰り返されてきた対立は、イスラエルとガザ地区の境界に関するものだ。
イスラエル政府の”キリストの聖地”エルサレムの<ユダヤ化>という戦略目標は、明らかに国際法違反である(BBC)。
なぜ、この様な矛盾したイスラエル軍の攻撃が平然と行われるのか?
実は、イスラエル軍のガザ攻撃にはアメリカの意図があったとされる。つまり、イスラエルが仕掛ける戦争はアメリカに利益をもたらす仕組みになってるのだ。事実、イスラエルの軍備費の1/4をアメリカが提供している。
アメリカの中東政策というものは、国内の極少数派のイスラエル・ロビーを無視しては成り立たない。つまり、アメリカ政府は僅か2.4%のユダヤ人には刃向かえないのだ。
親イスラエルのトランプ政権では、アメリカとイスラエルの軍事協力がいっそう強化されるに違いない(「トランプが戦争を起こす日」より)。
かつては憧れたアメリカ
「私が日本を嫌いなわけ」でも書いたが、欧米には奇妙で曖昧な理由で日本を露骨に嫌う著名人が多い様に思う。
一方で同じ様に、世界中にはアメリカを嫌ってる人々もそれ以上に多いだろう。特に、トランプ政権時のアメリカは最悪だった様な気がする。
しかし、トランプだけが嫌われてたのだろうか?それ以前からずっと嫌われてたのではないか?
アメリカは、かつては”夢の新大陸”と言われ、多くの国から異常な数の民が祖国を捨て、夢の国へと移住した。
2つの世界大戦を経て、”世界の警察”という世界一のアメリカ帝国に成り上がった訳だが、そこにはアメリカ人が誇る真の意味での自由や正義や民主主義はあったのだろうか?
そういう私は、若い頃はアメリカが好きだったし、強い憧れもあった。
戦争でアメリカに負けたのは、全て日本が悪いと決めつけていた。原爆投下や大都市空爆の真相も殆ど知らなかった。
朝鮮戦争もベトナム戦争も映画のネタくらいの認識しかなかった。アメリカが仕掛けた2度の湾岸戦争も、地球の裏側で起こる気まぐれな”喧嘩”だと思っていた。
私は歳を食ってから本を読む様になった。レビューを書く様になってから、本に書かれてある先の事が何とか読める様になった。
10代後半に眺めたアメリカと、50代で直視するアメリカは全く別物だった。
アメリカの夢は今や悪夢に変わり、そして最悪の結果になりそうな勢いである。
こんな醜いアメリカを誰が予想しただろうか?今や暗黒大陸となりつつあるアメリカを、世界の半分以上の人達は蔑視してる様にも思える。
”アメリカは実験的国家だ”と言ったのは司馬遼太郎氏だが、ファンタジーランド(幻想国家)としてアメリカを見れば、とても辻褄が合う。
つまり、今やアメリカはファンタジーという奇妙な物語の最終章にあるのかもしれない。
そのファンタジーランドが世界に登場して250年近く、世界の帝国に成り果てて80年近くになる。しかし、この奇妙なファンタジーの賞味期限も終焉を迎えつつある。
アメリカという夢の国には、若い頃の私が理解できる筈もない、暗い別の一面があったのだ。
という事で、今日は理性と希望を失った、”狂気と幻想のアメリカ”について書きたいと思います。
以下、「日本人がおよそ知らないアメリカ」より一部抜粋です。2019年と少し古い記事ですが、私と同年代の作家のコラムなのでとても共感する部分があります。
憧れの国の幻滅と崩壊
である筈だったアメリカに、ある大きな疑問が湧いたのは、ドナルド・トランプ大統領が登場した時だ。
”この男が大統領になったら大変な事になる”
そして、それは現実のものとなり、大きな違和感を抱く事にもなった。
その違和感の根源は、自分の気に入らない相手を感情的に嫌い、自分に都合の悪い報道を”フェイク”と断言するトランプの幼児性だ。
そして、もう1つ。アメリカ中西部”のラストベルト”に多いとされるトランプ支持層の存在。彼ら過激な貧困白人がいるからこそ、トランプは当選した訳だが、かつての私が憧れたアメリカのイメージとは大きくかけ離れたものだった。
「ファンタジーランド〜狂気と幻想のアメリカ500年史」(カート・アンダーセン著)は、ブログでも紹介したが、私が思ってたアメリカとは全く別の側面を持っていた。
アメリカ人は、世界の覇権を握った、特にこの50年の間に、あらゆるタイプの魔術的思考、何でもありの相対主義、非現実的な信念に身を委ねていった。その結果、奇妙でおぞましいファンタジーランド(幻想国家)ができあがってしまった。
21世紀が始まる頃には、何千万ものアメリカ国民が富裕層の様な暮らしができるという幻想に耽ったのだ。
しかし、現実に基づいた判断をし、アメリカの危機を予想する人は極めて少数派であり、70%近くのアホなアメリカ人は未だに楽観的である。
まさに”アメリカファスト”と信じ込む、脊椎反射系の強欲の象徴であるトランプ型人種なのだろうか。
トランプ信者はアメリカ人の1/3を占めると言われる。つまり、おぞましい幻想に浸った人の半分はトランプ支持者なのだ。
しかし、彼等が全て同じ様な幻想に浸ってる筈がない。それぞれに異なった多種多様な幻想に浸ってるから、これまた厄介なのである
こんなアメリカに誰がした?
アメリカは何もない所から設計・創建された初めての国だ。壮大な物語を書く様にして生み出された最初の国家である。
新世界にやって来た最初のイングランド人たちは、刺激的な冒険に出た意欲的な英雄に自分をなぞらえていた。実際、魅力的な信念や大胆な希望や夢という幻想の為に、旧来の慣れ親しんだあらゆる伝統やしきたりを捨て、フィクションの世界に飛び込む向こう見ずな人たちだったに違いない。
しかし21世紀の最初の15年間で、共和党は幻想党に変わり、現実主義者たちは幻想派に取り囲まれた。極右の反体制文化が何百万もの支持者に力を与え、アメリカの右派を乗っ取った。
その結果、トランプ帝国が誕生した。しかしその4年後、極右派の暴動により、意外に呆気なく壊滅する事になる。
それ以上に、このファンタジーランドの怖い所は、あまりにも多くのアメリカ人が理性と現実を手放してはいるものの、”今は希望と光の時代だ”と楽観視してる事だ。
例えばこの30年間で、アメリカは殺人やその他の暴力犯罪を半分以下に減らし、ヒトゲノムを解読し、黒人の大統領を選出した。地球上で極端な貧困状態にある人の割合は40%から10%に急減した。非合理性と魔術的思考には絶望を感じるが、全てが悪い方に向かっている訳ではない。
しかし、明らかに間違ってる事や真実でない事は排除する必要がある。その為には、アメリカを”現実ベース”に引き戻す必要がある。
陳腐な幻想に洗脳された大人は仕方ないとして、子どもや孫に正しい事と間違った事、バカと賢い事の区別を教えるのと同じぐらい厳しく、真実と嘘を区別する事を教える事は可能だろう。
アメリカにファンタジーランドへ向かう傾向が初めからあったとしても、現在の状況は必然の結果ではない。
なぜなら、歴史と進化に必然はないからだ。同じ様に、特定の未来に向かう必然性もない。
つまり、”分裂するアメリカ”が落ち着きを取り戻す事は可能だ。過去数十年は1つの段階で、進行中の物語の奇妙な一幕であり、アメリカの実験の残念な1エピソードにすぎず、やがて過去の出来事になる。
だからアメリカは今、ファンタジーランドのピークにある。
故に、こうした楽観的な考え方こそがアメリカを救う唯一の道なのかもしれない。
以上、東洋経済Onlineからでした。
世界に見捨てられた腐った国のアメリカ
アメリカが実験的国家である事は、トランプ政権の4年間で見事に証明された。
ニクソンの反逆もレーガンの大失態も、ブッシュ父とチェイニーが策謀した2つの湾岸戦争も、1つのエピソードとして片付ける事が出来るのだろうか?
「ファンタジーランド」の著者の言う事が本当なら、アウシュビッツもポルポトの虐殺も歴史上の全ての大量虐殺も、歴史上の奇妙な一幕として片付ける事が出来るのか?
結局、ファンタジーランドの住人はその幻想の中でしか生きる事は出来ない。この幼稚な幻想の中の楽観主義者が、戦争や殺戮をTVドラマのシナリオの様に書き上げ、実行に移す。
そこには反省も考察も省察もない。あるのは、幼稚で残酷なシナリオを実行に移す野蛮と腕力だけだ。
幻想で脳みそは腐れ、精神が崩壊し、そんな腐った土壌の上で、自由や正義や民主主義を謳っても、世界には響かない。
ファンタジーランドとは聞こえはいいが、所詮は腐った土壌なのである。
そんな腐ったアメリカに、私は騙されてたのだろうか?
日本人が”プラダを来た猿”であるならば、アメリカは”ミンクを羽織ったカバ”なのか?
腐ったみかんは取り除く必要がある様に、腐ったアメリカも地球上から取り除く必要があるのだろうか。では、どうやってこの腐った大国を取り除くのか?
それには、”分断するアメリカ”を限りなく繰り返し、人種の数だけ分断する必要があるのだろうか?
それとも、結束する新しいアメリカに生まれ変わり、私が好きだった頃のアメリカに戻るのか?
今回のイスラエルの武力介入を見て、アメリカがますます嫌になったという日本人は、私だけではないだろう。
仰るとおりだと感じております
昔に憧れたアメリカとの違和感を感じていた今、改めてこの記事で私の違和感を理解できた様です
もやもやの頭の中のもやが取れた様です。
数学は苦手ですが私にも理解出来た気がします
有難うございました。
大体において反アメリカを唱えると、韓国系は反発しますね。日本人でもこういった記事を受け入れる人は少ないかもです。
昔のアメリカは悪行も愚行も沢山しでかしましたが、夢もありました。しかし今のアメリカは幻想しかない。イスラエルの空爆を見てその意を強くしました。まさに戦争に群がりたがるアメリカ。
コメントありがとうございます。
結果イスラエルからは「ありがとう」と言われ、パレスチナ自治区からは抗議。
この外交センスのなさ。
アメリカに関しては僕も同じ感想です。
「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」でトランプは支持されましたが、アメリカは必死に足掻いている感じですね。
映画やテレビドラマなどエンタメはアメリカが断然面白いので、がんばってほしいのですが。
アメリカが嫌いになってから、あれほど好きだったMLBが詰まんなくなりました。アメリカの歴史自体はとても興味深いんですが。
コメントどうも有り難うです。
なぜ、アメリカではこういった特異な現象が起きるのか。
大多数を占める米国の一般人では、どうしても内政に比重が偏るんだ。しかし、少数派のイスラエルロビーがアメリカの外交政策へ大きなインパクトを与えた事例として、中東和平やイラン核交渉がある。
彼らは少数派だが、献金額が多く政治的影響力がとても強い。それに、イスラエルロビーは単一のまとまった団体ではなく、様々な団体や個人から成り、アメリカの対イスラエル支援を支持し、イランを敵視する。つまり、イランを野放しにすれば、イスラエルがイランによる核攻撃の危険にさらされると考えている。
しかし、イラン核合意(イランとの融和策)に賛同するリベラルなイスラエルロビーも存在するんだ。事実、彼らの活躍のお陰でオバマ政権時はイラン核合意を実現した。
でもトランプ政権によりそれは覆され、再び対イラン強硬策となったんだね。
今はリベラル系のバイデン政権だが、どのタイミングで舵を切るかが大きな焦点になると思う。
政治・金融・メディアetcのトップを占める僅か2.4%のユダヤ人がアメリカでも幅を利かせてるんですよね。
それに、戦闘が激しくなったとしても戦場はイスラエルかパレスチナ。ユダヤ人が賢ければ、アメリカはもっと強かです。
でもここに来て、イスラエルも柔軟な対応に変わりつつありますね。アメリカも国連で孤立する事だけは避けたいでしょうし、中国の事もありますから。
お陰で、コメント色々と勉強になります。