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捨てられたプラスチックゴミの行方 「太平洋ゴミベルト」とは何か?

2010年08月01日 | 環境問題
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 プラスチックの墓場
 下の写真を見てほしい何の写真だろう?プラスチックやロープ、さまざまな海の生物が絡み合った“ゴーストネット(ghost net)”が海に浮かんでいる。テキサス州の2倍もの範囲にわたって無秩序なゴミの山が渦巻く海域、通称「太平洋ゴミベルト」で2009年8月に撮影された写真である。

 最近になり、カリフォルニア州にあるスクリップス海洋研究所の研究プロジェクト、シープレックス(SEAPLEX:the Scripps Environmental Accumulation of Plastic Expedition)は、ハワイとカリフォルニア州間の海域に浮かぶプラスチックゴミの渦の科学的調査を行った。

 2009年8月に行われた19日間の遠征調査によると、プラスチックの大きな破片が目立つが、それらで“島”が形成されているわけではないという。無数の小さな破片が集まってできた大きな塊なのだという。

「数限りない小さな破片の集積を見ていると、ゴミベルト全体の現実と重なってくるんだ」と、スクリップス海洋研究所の博士課程に在籍し、調査隊のメンバーでもあるジェシー・パウエル氏は語った。 (National Geographic News September 9, 2009)



 太平洋ゴミベルト
 海岸でも、たびたび目にするプラスチックゴミ。もう見慣れてしまった。しかし、テレビの環境番組や博物館の展示を見ると、イルカやウミガメなどの海洋生物の胃から大量のプラスチックごみが出ている現実を知ることができる。海に流れたプラゴミはどうなるのだろう?

 巨大ごみ海域は、五大海洋循環の一つである北太平洋循環の内側にある。太平洋ゴミベルト(Great Pacific Garbage Patch)は、北太平洋の中央(およそ西経135度から155度、北緯35度から42度の範囲)に漂う海洋ごみの海域である。浮遊したプラスチックなどの破片が北太平洋循環の海流に閉ざされ、異常に集中しているのが特徴の海域である。

 太平洋ゴミベルトの存在はアメリカ海洋大気圏局によって公開された1988年の文書で予測された。予測は1985年から1988年の間アラスカの研究者によって得られた水表のプラスチック粒子の測定の結果に基づいていた。この研究は、特定の海流のパターンに支配されている地域に高濃度の海洋ごみが集まることを示していた。研究者らは日本海の調査結果に基づき、類似した状況が太平洋の他の部分で起こると仮定し、特に北太平洋環流を指摘した。

 チャールズ・ムーア氏 
 ごみ域の存在は、カリフォルニアを拠点とする船長で海洋研究家でもあるチャールズ・ムーアの論文により、広く衆目と科学的な注目を集めた。ムーアは、トランスパシフィック・ヨットレースに参加したあとの北太平洋環流を帰る途中に、莫大な漂流ごみの広がりを目の当たりにした。

 世界の他の海洋ごみが集中する地域と同様に、太平洋ゴミベルトは主に海上の風系によって生じるエクマン収束によって形成される。しかしながら、黒潮続流・北太平洋海流と言った地衡流にともなう収束発散の影響も受け、実際のゴミの分布はかなり非一様である。

 ハワイ付近のゴミの集積域についてのメカニズムはKubota(1994)によって、亜熱帯高圧帯と密接に関連していることが明らかにされている。 北太平洋環流によって描かれる渦模様は、北太平洋の両端(北アメリカと日本沖の近海)から廃棄物を引き込む。この動きが非常に高い濃度の海洋ごみをこの地域に生じさせた。

 チャールズ・ムーアはごみの80%は陸上からのもので、20%は船舶由来のものであると見積もっている。彼はごみの破片は海流によってアジアの東海岸から循環の中央へ 1年以内に運ばれ、また北アメリカからの破片は 5年ほどで運ばれると述べている。

 野生生物への影響
 アホウドリのひなは、親鳥によりプラスチックを与えられ、それを吐き出すことができなかった。そして飢えか窒息により死亡した。浮かんでいる粒子は動物プランクトンに似ており、それがクラゲに誤食されることで海洋食物連鎖に入る。

 2001年にそこから採ったサンプルでは、プラスチックの質量が(この地域の最有力な動物である)動物性プランクトンの7倍を上回った。これら長く残る欠片の多くが、クロアシアホウドリなどの海鳥やウミガメなどの海洋生物の胃に行き着く。

 野生生物による誤飲や魚網に絡まってしまう問題の他に、浮遊する小片は、PCBsやDDTやPAHsを含む残留性有機汚染物質を海水から吸収する。毒性作用に加え、摂取された物質の一部は脳にエストラジオールと間違えられ、影響を受けた野生生物のホルモンを撹乱させる。

 しかし、もっと危険なのは何年も海にもまれて微粒化したプラスチックゴミだと言われている。このようなゴミ粒に汚染物質が付着し「毒のスポンジ」化したものを、魚や海鳥、微生物が餌と間違えて食べてしまうこともある。

 私たちにできることは?
 そこで、世界中で、自然の中に置いておくとやがて分解されてなくなってしまう分解性プラスチックが考えられている。微生物が食べてくれる生分解性プラスチックや、水を加えると分解するものも生まれている。

 米国製のビールやコーラの缶(かん)を6個ずつ、プラスチックの輪でつなげて売っている。この「キャリア・リング」と言う輪は、アメリカでは早くも1970年代の末には、分解性プラスチックでなければいけない、と法律で決められていた。

 そうした中の1つが「光分解性プラスチック」。プラスチック自体、太陽の紫外線のはたらきで、少しずつ分解するのだが、1個が完全に分解するのに数十年もかかる。「エチレン」という物質と一酸化炭素が結合したプラスチックを使えば、紫外線を浴び続けると分解しやすくなることが分かっている。

 普通のプラスチックに比べて、作るのにお金がかかるから、まだあまり広まっていないが、研究は進められている。近い将来、スーパーの袋などが光分解性プラスチックに代わるかもしれない。

 しかし、2010年現在でも「分解性プラスチック」は、プラスチック全体の20%程度。プラスチックは自然界に流出しないように人間自身がくい止めるしかない。

 太平洋の真ん中で自分が捨てた歯ブラシが、ある日何千キロも離れた海を漂っているかもしれないと想像してみよう。プラスチック製品を無造作に捨てることができるだろうか。

 想像を絶するほどの廃棄物が海に捨てられ汚染をおこしている。何かを使い終わったら、捨てる前にもう一度それがどのような影響を与えるのか考えよう。多くの商品についているプラスチック包装材は最後にどうなるのか考えよう。こうした小さな行動が豊かな海を取り戻すきっかけとなっていくのである。


参考HP Wikipedia「太平洋ゴミベルト」・「生分解性プラスチック」・TED「チャールズ・ムーアが語るプラスチックの海

プラスチックゴミの危うさ―化学の眼でみた焼却・埋立・リサイクル
安東 毅
自治体研究社

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プラスチックごみは燃やしてよいのか―温暖化を進めるサーマルリサイクル
青木 泰
リサイクル文化社

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