NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音盤日誌「一日一枚」#183 ハンブル・パイ「ROCK ON」(Rebound/A&M 314 520 240-2)

2022-05-16 05:24:00 | Weblog

2003年8月31日(日)



#183 ハンブル・パイ「ROCK ON」(Rebound/A&M 314 520 240-2

ハンブル・パイ、A&Mからの二枚目、通算四枚目のアルバム。71年リリース。

最初のレーベル、イミディエイトの倒産にもめげず、新レーベルで心機一転、独自のハードロック路線を歩みだした彼らの「心意気」が感じられる一作。

以前に取り上げた「パフォーマンス~ロッキン・ザ・フィルモア」のひとつ前にあたる本作品は、ピーター・フランプトンがまだ在籍しており、いくつかの曲でもリード・ヴォーカルをとっている。

<筆者の私的ベスト4>

4位「BIG GEORGE」

ベースのグレッグ・リドリーの作品。ヴォーカルも彼が担当している。

「パフォーマンス」でも、一曲ではあるがリード・ヴォーカルをとっていたことでわかるように、リドリーにもなかなか歌心がある。

マリオット、フランプトンとはまた違った個性。中低音中心の力強い歌声は、けっこうイケていると思う。

彼のようなメンバーがいたことで、パイのコーラスが充実していたことは確かだろう。

曲のほうも、セカンド・ラインふうの後ノリのリズムが実にカッコいい。腰にビンビンきちゃいます。

ボビー・キーズのサックス・ソロもごキゲン。アメリカ深南部の香り、満載です。

3位「SHINE ON」

ピーター・フランプトンの作品。歌ももちろん、彼である。

のちにベストセラー・アルバム「フランプトン・カムズ・アライヴ」でも演奏されていたこの曲、ハードさとポップさが見事に共存した、キャッチ-なナンバー。オルガンの音色が実に華麗である。

パイでは、ヴォーカルの大半をマリオットにまかせていたフランプトンだったが、このあたりから次第に「歌うこと」に目覚めていったように思われるね。

「オレも、もっとフロントで歌いたい」、そう思うようになっていったのだ。

しかし、パイの主導権はマリオットがガッチリ握っていて、サウンド的にも彼の好むブラックなサウンドを指向しており、フランプトンの指向するポップ、ないしはフォーキーなものは軽視されていた。

結局、この音楽性の違いから、フランプトンはまもなく脱退することになる。

まあそれは、いたしかたないことだったろう。この「SHINE ON」や、同じく彼の歌う「THE LIGHT」を聴く限り、あまりにマリオットの作風とかけ離れているから。

これが同じバンドかいね?という印象すらある。

"異分子"がいなくなったパイはその後、ブラック路線をひた走ることになる。当然といえば、当然やね。

2位「ROLLIN' STONE」

その「ブラック路線」を代表するような一曲。アルバムのクレジットにはチェスター・バーネット(ハウリン・ウルフの本名)とあるのだが、はて、この曲、ウルフの作品だったっけ?

もちろん、違う。「ROLLIN' STONE」といえば、マディ・ウォーターズを代表する一曲だよねえ。

現に「パフォーマンス」では、ウォーターズ名義に訂正されているので、故意か単純ミスかはわからないけど、とにかく間違ったということであります。

とはいえ、マディ版オリジナルとは、歌詞も曲の構成も相当違う。スローな前半は原曲のおもむきに近いが、後半はアップテンポにチェンジ、コーラスも加えて、まるで別の曲みたい。

「ROLLIN' STONE」というリフレインだけ頂戴して、あとは自由に彼らのセンスで再構成した曲といったほうが、いいかも。

とにかく、一度聴いてみて欲しい。マディのオリジナルの「本質」は生かしつつも、サウンドは完全にパイ流ハイパー・ハード・ブルースに仕上がっている。

フランプトンのギターがいまひとつブルースになりきっていない感はあるが、マリオットの情感たっぷりのヴォーカルはさすがのものがある。そして彼の、うめき、すすり泣くようなハープもいい。

ここまでブルースの本質を肉体表現化した白人バンドは、そうざらにはないはず。

1位「STONE COLD FEVER」

メンバー四人の共作。とはいえ、ヴォーカル、ハープと全編で活躍するのはマリオットで、彼のカラーを前面に出した曲と言って間違いはないだろう。

モチーフ・歌詞からして、いかにもブルース的。そして、演奏はハード&へヴィーな中にも、ブルースの「匂い」をぷんぷんと放っている。

マリオットの気合い十分なシャウト、ハープ、ワイルドなギター、タイトなリズム、もうこれ以上何を望もうか。

「ロック」が「ポップス」と同意語になってしまい、その本来のアナーキーでアブナい魅力を失い、見事に「漂白」されてしまった今、ここまで真っ黒なサウンドを奏でるバンドはいない。

とにかく、この一曲、ロック史上に残る名演だと筆者は確信しとります。

本作、そして「パフォーマンス」の発表後、パイとフランプトンはそれぞれ別の道を歩み出し、おのおのの音楽性を更に極めていくことになる。

彼らの「岐路」ともいうべきアルバム「ROCK ON」。マリオットとフランプトン、それぞれの異なった音楽性が混在してはいるが、タイトル通り「ロック」なスピリットで貫かれた一作。

あのフランプトンでさえ、ヒゲなぞ生やして、ワイルドにキメております。実に男っぽい一枚、聴くっきゃないっしょ!

<独断評価>★★★★☆


音盤日誌「一日一枚」#182 マディ・ウォーターズ「ELECTRIC MUD」(MCA/Chess CHD-9364)

2022-05-15 05:15:00 | Weblog

2003年8月24日(日)



#182 マディ・ウォーターズ「ELECTRIC MUD」(MCA/Chess CHD-9364)

マディ・ウォーターズのオリジナル・アルバム、68年リリース。マーシャル・チェス、チャールズ・ステプニー、ジーン・バージが共同プロデュース。

まずは論より証拠、一曲目から聴いてみて欲しい。「ン!?これって、ブルース?」となること、間違いなしだから。

このアルバム、全編がなんとも奇妙なサイケデリック・アレンジに彩られているのであります。

<筆者の私的ベスト3>

3位「LET'S SPEND THE NIGHT TOGETHER」

本アルバムは、過去の自分のレパートリーを、新アレンジにて再録音したものが多いが、これは他のアーティストのカヴァー。

マディのことを父と慕うバンド、ローリング・ストーンズの67年のヒットである。ジャガー=リチャ-ズの作品。

このちょっとエロティックな歌詞を持つナンバーを、マディはハードにドライヴするアレンジで、力強く歌いまくる。

この重心が低いバック・サウンドが、実にごキゲン。ノレます。ストーンズ版より、むしろ好きかも。

今回のレコーディング・メンバーは、従来のマディのバック・バンドとは違っていて、だいぶんロック色が強く、寄せ集めのセッションといった方がよいかも知れない。

プロデュースも担当したサックス奏者、ジーン・バージ、キーボード奏者のチャールズ・ステプニーは、いずれも前年の「BRASS AND THE BLUES」からの付き合い。

これにギターのピート・コージー、フィル・アップチャーチ、ローランド・フォークナー、ベースのルイス・サタフィールド、ドラムスのモーリス・ジェニングスという、初参加組を加えて編成。

従来のマディ組、ジェイムズ・コットン、オーティス・スパン、パイントップ・パーキンス、ウィリー・スミスといった面々は一切加えず、完全に白人ロックを意識したサウンドに仕上げている。

2位「MANNISH BOY」

後期マディの代表的ナンバー。自身も相当気に入っていたようで、何度となくスタジオ、ライヴでレコーディングしているが、オリジナル版はこれ。

マディ自身の作品だが、その曲調には、同年のアルバム「SUPER BLUES」でコラボレートしたボ・ディドリーの影響も色濃いように思う。いわば、マディ版「I'M A MAN」。

曲の大半がMCで、メロディなんてなしに等しい。「HOOCHIE COOCHIE MAN」にも似た構成だ。

これがなかなかカッコよい。即席で作ったようなテキトーな詞を、べらんめえ調でまくしたて、聴く者を煽っていく。一種、元祖ラップ・ミュージックふう。

ライヴにはうってつけの、「つかみ」の一曲といえそう。

いい意味で「唯我独尊」なのがウリの、マディらしさがよく出たナンバー。ビートが最高に気持ちよく、サイケ・ギターもピタリとハマっている。

この「MANNISH BOY」、その後、少しずつアレンジを変えて再演しているので、その変遷史をたどっていくのも一興だろう。

1位「I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU」

マディといえばやはり、この曲と「HOOCHIE COOCHIE MAN」だろうな。2曲ともに収録されているが、筆者の好みはこっち。

のっけから、ピート・コージーとおぼしきファズ・ギターが炸裂! ベースのルイス・サタフィールドが、ノリのいいリフを繰り返す。

もう、カッチョいいのひとこと。

ドラムスのモーリス・ジェニングスも、ところ狭しと暴れまくる。従来のブルースでは到底許されない、乱暴狼藉の極みである。

そして御大マディは、そのヴァイオレントなサウンドにもまったくひるまず、雄々しく、猛々しく吼えまくる。

最後は、チャールズ・ステプニーのファンキーなオルガンが乱入、プロレスの場外乱闘の如き有様で、エンディング。

いやー、痛快痛快。オトコ気全開、まさに格闘技のようなハード・ロッキン・ブルースなんである。

これらの他にもテンプテーションズの「MY GIRL」のインストを後半にくっつけた「SHE'S ALRGHT」、「MORE REAL FOLK BLUES」収録のナンバーをスーパー・へヴィ・アレンジで再録音した「THE SAME THING」などが聴きものだ。

本アルバムのリリースされた68年、時はまさにサイケデリック・ロックの開花期。ジミ・ヘンドリクスをはじめとして、クリーム、ストーンズ、ヤードバーズなどがこぞってサイケを追究していた。

そのへんを敏感に察知、「サイケ」というトータル・コンセプトで一枚のアルバムにまとめ上げたのは、なかなかの先見眼といえるだろう。

確かに、「これがブルースか?」と聞かれたら、「だいぶん外道なブルースだ」としか答えようのない、逸脱ぶり。サイケデリック・ロック、さらにはフリー・ジャズ的要素まで盛り込んだそのサウンドは、かなり変態チックだ。

でも「変態ブルース」も、ブルースであることに変わりはないと思う。

そもそも、ブルース自体が、相当「エクストリーム」な音楽だったんだから。外道な連中が仲間うちで、たがいに外道よばわりしてどうすんの(笑)。

細かいことなど言わずに、この「変態ブルース」を大いに楽しもうじゃないか。

<独断評価>★★★


音盤日誌「一日一枚」#181 レッド・ツェッぺリン「HOW THE WEST WAS WON(伝説のライヴ)」(ATLANTIC 7567-83587-2)

2022-05-14 05:03:00 | Weblog

2003年8月17日(日)



#181 レッド・ツェッぺリン「HOW THE WEST WAS WON(伝説のライヴ)」(ATLANTIC 7567-83587-2

レッド・ツェッぺリン、未発表音源によるライヴ盤。この5月にリリースされたばかりの3枚組だ。

今年はグループ結成35周年にあたることもあって、これまで封印されて来たお宝ライヴ音源&映像もどっと放出され、一ZEPファンの筆者としては随喜の涙にむせんでいるところだ。

本CDは、72年の全米ツアー中の、ロング・ビーチ・アリーナ、LAフォーラムでの演奏を収録。

彼らのほぼベスト・コンディションな時期のライヴを、約2時間半にわたってたっぷりとたのしめる。

DVDとはまた別のテイクなので、ファンとしては両方聴かないとダメという仕組みであります。さすが商売上手やな~(笑)。

<筆者の私的ベスト5>

5位「MOBY DICK」

本作では2枚目ラストに収録。ペイジ、ジョーンズ、ボーナムの共作。

この曲は彼らのセカンド・アルバムにて初登場。オリジナル・ヴァージョンは、わずか4分20秒というコンパクトなものだった。

それを19分20秒と、LPなら片面丸ごとにあたる大作に仕上げている。

皆さんご存じのように、この曲はイントロとエンディングを除けばジョン・ボーナムのソロなので、ずっと彼の演奏だけを聴かされるわけだが、この長時間、聴き手をまったく退屈させないというのはスゴい。

リズムだけのはずなのに、ボンゾのドラムは、もうメロディ楽器のよう。繊細な音から豪快な音まで、まさに変幻自在。バスドラ、タムの使い方などに天才的なものを感じるね。

他のどのドラマーとも異なる、独自のグルーヴを持ち、パワー、テクニック、フィーリング、すべてにおいて頂点に君臨したドラマー、ボンゾ。やっぱあんたは無敵や。

4位「SINCE I'VE BEEN LOVING YOU」

本作では1枚目に収録。サード・アルバムがオリジナル。プラント、ペイジ、ジョーンズの共作。

筆者的にはZEPのナンバー中、ベスト3に入る名曲だと思っている、マイナー・ブルースだ。

本盤でのプレイも、スタジオ・テイクに負けず劣らず素晴らしい。

プラントの最高にエモーショナルなヴォーカルもさることながら、同じくらい見事なのは、ペイジのギターだ。

彼はプレイにむらがあるタイプのギタリストで、特にクロウト筋の評価はいまイチ(平たくいえば「ヘタ」よばわりされている)だが、この曲のプレイを聴けば、そういう「けなし」が全くの戯れ言だということが判る。

この緩急自在の、気合いに満ちたソロを聴いて「ヘタ」よばわりするヤツは出てこい。オレがそいつの演奏を聴きに行ってやるぜ! そんな感じ(笑)。

ジョーンズのオルガン、ボンゾのドラムも、最高にソウルフルなグルーヴを生み出している。もう、文句なしである。

3位「DAZED AND CONFUSED」

本作では2枚目トップに収録。第5期ヤードバーズ以来のレパートリー。ペイジの作品(実際はジェイク・ホームズ)。

ファースト・アルバムで初収録。以来、80年の解散に至るまで、彼らのほぼ全部のステージで演奏されて来た、十八番的ナンバーだ。

本テイクでは25分25秒を費やして、迫力のパフォーマンスが延々と展開される。

われわれはこの曲を、既発表のライヴ・アルバム「永遠の詩」、あるいは「BBCライヴ」、そしてさまざまなブート盤で何度となく聴いて来たわけだが、それらと比べても、このLAフォーラムでの演奏は最高水準にあると言えるだろう。

プラントの喉のコンディションもまずまずのようで、超高音シャウトもバッチリと決めてくれる。

そしてもちろん、聴きものはペイジのメリハリに富んだギター・プレイ。

まずは、おなじみのヴァイオリン・ボウを駆使した幻想的なサウンド。ビデオなら視覚的にも「魅せる」ところですな。

まるでジプシー・ヴァイオリンか、はたまた中近東音楽かといったエキゾチックな音に、プラントのセクシーなヴォイスが絡む。そして、ボンゾのドラムも。

混沌としているように見えながら、オーディエンスの気を一瞬たりともそらさない。

中盤、再びアップテンポでリズムが走り出す。もう、ぞくぞくする展開だ。

乱調ながらも猛烈なテンションで疾走するペイジのギター。他の三人も負けじと付いて行く。

テンポ・チェンジして、ファンクなノリに変わる。そう、「THE CRUNGE」のフレーズである。

その後ちょっとクールダウン、プラントとの掛け合いを経たのち、いよいよハードさを増して弾きまくるペイジ。

彼らの他のいろんな曲の要素を取り込み、綴れ織りのように再構成して聴かせてみせる。

勝手気ままに弾いているように見えても、リズム隊とのコンビネーションを常に緊密に保っているのを見ると、実はすべて念入りに計算され、組み立てられているのですな。この25分は。

アレンジャーとしてのペイジの才能を再認識する一曲。ほんにお見事です。

2位「STAIRWAY TO HEAVEN」

本作では1枚目、「SINCE~」に続いてプレイされる。オリジナルは「IV(フォー・シンボルズ)」に収録。プラント、ペイジの作品。

もう説明するのが野暮なくらい、ZEPといえばこの曲!というくらいの代表曲。

個人的には決してトップではなくて、「SINCE~」のほうがずっとオキニなんだが、でもよく出来た曲だと思う。

原曲は8分超なので、それより少し長めの9分38秒にわたる演奏。

ペイジがレスポールを巨大なダブルネックSGに持ち替えて登場。もうこれだけで、オーディエンスの期待は一気に高まる。実に見事な「つかみ」のテクですな。

曲は、あの余りにも有名な12弦ギターでのイントロから静かに始まり、徐々に熱気をはらんでいく。

プラントの抑えのきいた歌も、実に説得力がある。ジョーンジーのキーボードがこれに彩りを添えていく。

12弦ギターの響きも美しく、また中間部のロング・ソロも、他のライヴ盤以上に出来がいい。

最後は、文字通り階段をのぼりつめるようにして、エクスタシーへと到達していく。まさに名演。

四人が渾然一体となったグルーヴ、これこそが世に言う「レッド・ツェッぺリン・マジック」だろう。

1位「WHOLE LOTTA LOVE」

3枚目トップ、ステージのハイライトにあたる一曲。オリジナルはセカンド・アルバムに収録。メンバー四人の共作、そして歌詞の大半はウィリー・ディクスンの「YOU NEED LOVE」に拠っている。

いうまでもなく、ZEPを全世界に知らしめた代表曲。シンプルなワンコードリフの繰り返しが印象的なナンバー。

コンサートでも当然、トリに演奏されることが多かった。そして、長年演奏しているうちに、さまざまなオールディーズ・ナンバーを取り込み、超ロング・メドレーへと進化していったのである。

もち、本作でも23分8秒の大作となっている。まずは「WHOLE LOTTA LOVE」本曲、そしてその間奏に続いてジョン・リー・フッカーの「BOOGIE CHILLUN」、ジェリー・リーバー作の「LET'S HAVE A PARTY」、ジーン・ピットニーの「HELLO MARYLOU」、ジェイムズ・オーデンの「GOIN' DOWN SLOW」と、黒人・白人、ブルース・カントリーとりまぜた多彩な選曲で、プラントの音楽的ルーツを問わず語りで教えてくれる。

筆者的には、スローでヘヴィーな「GOIN' DOWN SLOW」が面白いと思う。

原曲のイメージは見事に破壊されているが、歌もギターもちょっとオーバーな表現は、まさにZEP流。

で、最後は「WHOLE LOTTA LOVE」に戻って、見事に締めくくり。観客のノリも最高潮で、本曲のベスト・ライブテイクといって問題ないだろう。

…とまあ、長い曲ばかりになってしまった。別に短い曲が出来が悪い、つまらんというわけではないのだが、やはりZEPの本領はタフな演奏力を必要とする長尺のナンバーにあり、という気がするので、結局こうなってしまった。

もちろん、小ぶりな曲にもなかなかいい仕上がりのものがある。

例えば「IMMIGRANT SONG」「BLACK DOG」「THAT'S THE WAY」「ROCK AND ROLL」などなど。どれも実にカッコいい。明らかに「永遠の詩」ヴァージョンより、気合いの入った演奏だ。

最強のライヴ・バンドとしての証明たる一作。往年のZEPを知るひとも、そうでないひとも聴くべし。

ところで、余談だが、本アルバムのタイトルはジョン・フォードら三監督によるシネラマ映画「西部開拓史」(ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ他主演)の原題から取られたのだが、そのココロは? もしご存じのかたがいらっしゃったら、ご教示いただきたい。

<独断評価>★★★★☆


音盤日誌「一日一枚」#180 ジェフ・ベック「ジェフ」(ソニー・ミュージック/EPIC EICP 195)

2022-05-13 04:59:00 | Weblog

2003年8月10日(日)



#180 ジェフ・ベック「ジェフ」(ソニー・ミュージック/EPIC EICP 195)

ジェフ・ベック、約3年ぶりのソロ・アルバム。この8月6日に発売されたばかり、出来たてホヤホヤの新作だ。

本作のプロデューサーはアンディ・ライト、ディーン・ガルシア、デイヴィッド・トーン、アポロ4:40(フォー・フォーティ)ら。

一般的なロックのファンには、あまりおなじみのない名前ばかりだが、ライトはジェフの前作「ユー・ハッド・イット・カミング」で既にプロデュースを手がけたひとだ。過去にはユーリズミックス、シンプリー・レッド等を担当している。

彼らの生み出すサウンドは、ジャンルでいえば「エレクトロニカ」というべきもの。

打ち込み、サウンド・エフェクトを多用した、アンチ・バンド・サウンド。99年の復活アルバム「フー・エルス!」以来、ジェフのバック・サウンドは明らかにこの傾向が強くなってきており、本アルバムはそれをさらに徹底させたといえそうだ。

この、無機質的なエレクトロニカに絡む彼のギター・プレイはどうかというと、これがジェフ・ベック以外のなにものでもない音。

若干、バックのノイジーさ加減に合わせて、ディストーションきつめかなぁ~とは思うが、そのフレージングには彼ならではの自由な発想が健在なんであります。

フリーキーにしてファンキー、そしてブルーズィ、まさにワン・アンド・オンリーなプレイだ。

<筆者の私的ベスト5>

5位「HOT ROD HONEYMOON」

アポロ4:40のグレイ兄弟らとジェフの共作。

いきなりアップテンポで、ブルーズィなスライド・ギターが始まる。まるで、ロバート・ジョンスンのよう。

これにエレクトリックな打ち込みの轟音と、ヌードダンサー出身のナンシー・ソレルの蓮っ葉なヴォイス、ビーチボーイズ風コーラスが絡んで、奇妙なアンサンブルを織り成す一曲。

途中のジェフのスライド・ソロが、指弾き以上にスピード感にあふれていて、実にカッコよろしい。

1930年代のカントリー・ブルースと、21世紀の最先端サウンドとの「出会い」が、意外とイケているのです。

4位「PORK-U-PINE」

ジェフ、アンディ・ライトらの共作。ライトのプロデュース。

ここではサフロンという女性シンガーのラップをフィーチャー。

「AND IF THE BOYS DON'T SAY IT, THE GUITAR WILL PLAY IT」というシンプルなリフレインがなんとも印象的。

ヘヴィーなエレクトロニカ・サウンドに負けじと、ギターを自由自在に鳴かせまくっているジェフ。

どことなくオリエンタルな響き、ワールド・ミュージック的な広がりも感じられる。ロックのイディオムをいい意味で「無視」した、彼らしい意欲作だと思う。

同じくライトによる「TROUBLE MAN」、ガルシアがプロデュースした「SO WHAT」、アポロ4:40とのコラボによる「GREASE MONKEY」あたりも、似たようなタイプの曲だ。

3位「BULGARIA」

タイトルが示すように、なぜか、ブルガリアのトラディショナルが一曲。ジェフとアンディ・ライトがアレンジを担当。

それまでの混沌、騒擾、狂乱(?)の電子サウンドから一転、一点の曇りもなく晴れわたった空のような、静謐な世界が現出する一曲。

ロンドン・セッション・オーケストラのストリングス・サウンドとともに、まるで撥弦楽器を弾いているかのように、自在にギターを操るジェフ。その姿は、神々しくさえある。

この曲からシームレスでつながる、アルバムラストの「WHY LORD OH WHY?」も、ニュアンスに富んだ深遠なジェフのプレイが聴けて、素晴らしい。

ギターを弾く以上、こういうプレイで聴くひとびとを魅了してみたいもんだ。切にそう思う。

2位「SEASONS」

ジェフ、ライトその他の共作。ライトのプロデュース。

途中までは「PORK-U-PINE」や「GREASE MONKEY」のようなエレクトロニカなのだが、ひと味違うのは、ストリングスを加えてサウンドに厚みを加えていること、そして途中テンポ・チェンジをして、ジェフの哀愁に満ちたソロをフィーチャーしている点。

ここの彼のソロは、変にギミックなど使わず、ストレートに弾きたいように弾いている感じが、好印象。

テクニックで相手をねじふせるのではなく、音の微妙なニュアンスによって聴く者を"感動"させるのである。

彼と同じくらいテクのあるギタリストはゴマンといるだろうが、その一点に於いて、彼を超えられるものはいない。

1位「JB'S BLUES」

プロデューサーのひとり、ディーン・ガルシアとジェフの共作。

アップテンポの曲が多い本アルバムの中では、珍しく落ち着いたテンポのナンバー。

ブルースとは銘打っているが、マイナー調のバラードといったほうがいいかも。でも、「ココロ」的にはまさにブルースな一曲。

深い悲しみをそのまま綴れ織りにしたかのような、ジェフのエモーショナルなプレイ、絶品です。

「悲しみの恋人たち」あたりに比べると、さらにプレイが進化して、ただ美しく弾くというのではなく、奥深い感情そのものをギターで表現出来るようになっているのがよくわかる。

40年余りのキャリアは、やっぱりダテじゃないね。

ジェフがグループ活動に見切りをつけ、ソロ活動に専念するようになって、はや28年。

その間、さまざまなインストゥルメンタル・ミュージックの可能性を模索し、多くの名演を残して来たが、この一枚もまた、余人の追随を許さない仕上がりだ。

ポップで聴きやすいというわけでは決してない。むしろ逆で、パッと聴いたぶんには、とっつきの悪い音かも知れない。

だが、音楽をそれなりのキャリアを積んで聴き続けたひとびとには、彼のサウンドの持つ「含蓄」がわかるのではないだろうか。

一聴しただけでは簡単にわからない、再聴、三聴してこそ、本当の価値がわかってくるアルバムだと思う。

ギターという楽器に己れの一生を託した男、ジェフ・ベックならではの世界。ギタリストを自認するすべての人々よ、心して聴くべし。

<独断評価>★★★★


音盤日誌「一日一枚」#179 クリーム「BBCライヴ」(ユニバーサル/Polydor UICY-1167)

2022-05-12 04:58:00 | Weblog

2003年8月3日(日)



#179 クリーム「BBCライヴ」(ユニバーサル/Polydor UICY-1167)

クリームのひさびさのアルバム。ベストものを除けば、実に31年ぶりのリリースだ。

英国のBBCにおいて、7回にわたり録音・オンエアされたスタジオ・ライヴ集で、(10)と(26)の2トラックを除いて、すべて未発表音源だから、ファンとしてはもう、興味津々。

クリームも、先週のヤーディーズ同様、説明不要のビッグ・グループで、筆者にとっても大のフェイヴァリット。

すでに過去のオリジナル・アルバムはすべて(とベスト1枚)レヴューしてきたので、そちらもぜひお読みいただきたい。(「ロックアルバムで聴くブルース」と当コーナー2001年9月、11月、2002年2月、8月の項。)

<筆者の私的ベスト5>

5位「LAWDY MAMA」

これは実は未発表音源ではなく、エリック・クラプトンのコンピレーション・ボックス「Crossroads」で既に発表されているのだが、個人的に好みなので取り上げてしまう。トラディショナル・ブルースをクラプトンがアレンジした作品。

「ライヴ・クリーム」に唯一のスタジオ録音として収録されたときは、まったりとしたミディアムスロー・テンポだったが、ここでは小気味いいアップ・テンポのナンバーに変身。

クラプトンのいなたいヴォーカルも、妙に曲にハマっていてよろしい。

2分足らずの小曲だが、「これぞシャッフル!」というノリの良さ。クラプトンの泣きのギターはいうまでもないが、ブルースのベース・プレイもまたいい。

4位「CROSSROADS」

「WHEELS OF FIRE」でのライヴが歴史的名演との誉れの高い、あの「クロスロード」である。

その、フィルモア&ウィンターランドでのライヴ(68年3月)に先立つこと16か月ほど前、66年11月に録音、翌月末にオンエアされたのが本盤収録のトラック。

その名曲のプロトタイプが聴けるとあれば、ファンならずとも、興味が湧かないわけがないだろう。

で、どんな感じかというと、さすがにまだ荒削りな感じ。ギター・ソロも、あの完璧に構成された「WHEELS OF FIRE」版に比べると、凡庸な印象はぬぐえない。

音質がいまイチで、イントロ部をカットして、いきなり歌から始まるのも、いささか残念。

だが、クラプトンの決して上手くはないが、一途なヴォーカルには、心打たれるものがある。未完成なりに、愛すべき一曲である。

3位「STEPPIN' OUT」

「ライヴ・クリームVOL.2」でも演奏していた、メンフィス・スリムのナンバー。

本盤にも、2テイクが収録されている。66年11月に録音・オンエアされたヴァージョンと、68年1月に録音・オンエアのヴァージョンがそれだ。

その中でも、後者が筆者のオキニ。番組向きに3分37秒と「ライヴVOL.2」版よりかなりコンパクトにまとめているが、その迫力ではまったくヒケをとっていない。

クラプトンにとっては、ブルースブレイカーズ以来のレパートリーということで、何年も弾き込んでおり、完全に自分のものとして消化しているのがよくわかる。

そのフレーズのひとつひとつに、彼のブルース・スピリットが横溢している。

クラプトン、ブルース、そしてベイカー。全員の気迫みなぎったプレイにノックアウトされて欲しい。

2位「I'M SO GLAD」

「フレッシュ・クリーム」で初出、「グッバイ・クリーム」でライヴ・ヴァージョンを披露したナンバー。スキップ・ジェイムズの作品。

「グッバイ」同様、一発録りライヴでキメてくれている。これが実にカッコいい。

時間的には4分22秒と、「グッバイ」版よりはかなり短めだが、そんなことを感じさせない熱演。

特にギュッと凝縮された中間のソロ部分が、聴きもの。

「グッバイ」版のようにタレ流し的に長くなく、進行も微妙に違うのが面白い。

まあ、論より証拠、実際に聴いていただくのが一番だろう。

1位「BORN UNDER A BAD SIGN」

個人的には、このアルバート・キングのカヴァー曲が一番のオキニだ。

オーバーダブにより、ギターを2本にしているのだが、ヘヴィーなリフと、それに絡むねちこいリードが実にごキゲン。

もちろん、ジャック・ブルースの粘りのあるヴォーカルも、素晴らしい。

ファンキー・へヴィー・ロックとでもいうべき、オリジナルなブルース・ロックを生み出している。

コンサートではまず聴けなかったであろうナンバー。BBCの番組ならではの企画で、一聴をおススメである。

本盤、22トラックに加えて、クラプトンへのインタビューも4回分収録されているので、そちらにも大注目。

大半の曲を書き、歌っていたのはブルースなのに、毎回引っ張り出されていたのは、どちらかといえば寡黙なクラプトンだったというのは、興味深い。

これはまさに、クリームがデビュー当初から「エリック・クラプトンという"スター"を擁するバンド」としてマスメディアから把握されていたという証左ではないだろうか。

ブルースには申し訳ないが、やはり、生まれついての「華」があるのはクラプトンなのだ。

実際、番組の収録風景をとった写真など見ても、クラプトンばかりメチャカッコいい。ミュージシャンとしてもすぐれているが、それ以上に彼は「スター」なのだ。

歌わずとも、そのギターを弾く姿だけで、皆を魅了したクラプトン。

この11~12月にはまた来日公演を行うという彼の、人気の秘密がよくわかる一枚。

録音状態、演奏の出来にかなりばらつきがあるのがいささか残念だが、ファンならぜひ押さえて欲しいね。


音盤日誌「一日一枚」#178 ザ・ヤードバーズ「バードランド」(ビクターエンタテインメント VICP-62289)

2022-05-11 04:59:00 | Weblog

2003年7月27日(日)



#178 ザ・ヤードバーズ「バードランド」(ビクターエンタテインメント VICP-62289)

ザ・ヤードバーズ、35年ぶりのニュー・アルバム。

68年に解散してからの、元メンバーたちの35年間の歩みをたどれば、それこそ単行本一冊分になってしまうから、ここではあえてそれにはふれない。皆さんもよくご存じのことであろうし。

ともあれ、ヤーディーズがビートルズ、ストーンズと肩を並べるくらい、特Aクラスのビッグ・グループであることは万人が認めるところだろう。

そんな彼らが再結成、35年ぶりに新作を出したとなれば、ヤーディーズ命!のワタシとしても聴かないわけにはいかない。

<筆者の私的ベスト5>

5位「MY BLIND LIFE」

今回のメンバーは、オリジナル・メンバーのジム・マッカーティ(ds)、クリス・ドレヤ(g)を中心に、新たにジピー・メイヨ(g、元ドクター・フィールグッド)、ジョン・アイダン(vo,b)、アラン・グレン(hca)を加えた五人。

これに曲によってはジェフ・バクスター、ジョー・サトリアーニ、スラッシュ、ブライアン・メイ、スティーヴ・ルカサー、そしてスティーヴ・ヴァイといった実力派ギタリストたちをゲストによんで、レコーディングしている。

で、日本盤の帯にはまったく書いてないので、見過ごされがちな事実なのだが、ジェフ・ベックも実は一曲だけ参加しているのである。

それがこれ。もちろん、メンバーとしてでなく、ゲストとしての扱いだ。

この曲ではベックはスライド・ギターを弾いているので、一聴として彼と判るようなプレイではないのだが、とにかく旧知の仲間たちとひさしぶりに再会、リラックスした雰囲気で演奏している感じが伝わってくるのがうれしい。

曲はドレヤの書き下ろし。粘っこいビートが特徴の、ハード・ブギ。

ここでなかなかいいプレイを聴かせてくれるのが、ハープのグレン。亡きキース・レルフにもまさるとも劣らぬ、本格派のブルース・ハープだ。

4位「HAPPENINGS TEN YEARS TIME AGO」

そう、日本でもおなじみのシングル曲、「幻の十年」である。

ヤーディーズよりは十年ほど下の世代に属する、TOTOのスティーヴ・ルカサーをフィーチャリングしての演奏。

アレンジは基本的には昔とほとんど変わっていないが、録音はオリジナルに比べて格段とよくなっている。さすがにデジタル技術の賜物なり。

注目すべきはもちろん、中間部やエンディングのルカサーのソロだが、音色もフレーズもベック&ペイジのスタイルを変に意識せず、いつもの自分流スタイルで弾いている感じなのがよい。

ツイン・リードが売りのオリジナル・ヴァージョンの素晴らしさは揺るぎないものがあるが、こちらもなかなかカッコよくまとまってます。

3位「CRYING OUT FOR LOVE」

当アルバムは15曲を収録。過去のレパートリーは8曲、オリジナルの新作は7曲である。

でも、基本的に昔ながらのギター・バンドとしてのスタイルは一貫しているので、新作・旧作がまったく違和感なく、シームレスに共存している感じだ。

で、ゲスト・プレイヤーの参加しているのは過去のレパートリーばかりで、聴き覚えがあるものだから、ついそちらに耳を奪われがちなのだが、どっこい、新作にもなかなかいいものがある。この曲もそれ。

ジム・マッカーティの作品。どこか「フォー・ユア・ラヴ」「スティル・アイム・サッド」を連想させる、哀愁あふれるマイナーのメロディ・ラインがいい。

ここでの聴きものは、あまり名の知られていないギタリスト、メイヨのギター・プレイ。これが実に端正で、周到に組み立てられたフレーズの連続。ハードに弾くのだけが、ロック・ギターではないと痛感。

緑神ことピーター・グリーンを彷彿とさせる才能で、思わず「やるのう、おぬし!」と叫んでしまうくらい。

こういう巧者がゴロゴロいるのだから、やはり海のむこうは層が厚いよな~。

2位「TRAIN KEPT A ROLLIN'」

このコーナーでも何度となく聴いてきたナンバー。ヤーディーズの十八番中の十八番。タイニー・ブラッドショー他の作品。

この「看板曲」をどう料理するか、誰もが注目するところだろうが、実に予想以上の大熱演。

リズム隊も張り切って、オリジナル以上にエキサイティングでタイトな演奏を聴かせてくれているし、グレンのアンプリファイド・ハープの響きも文句なしに素晴らしい。

そしてなんといっても、ゲストのジョー・サトリアーニ(元ディープ・パープル。スティーヴ・ヴァイの師匠格にあたるひと)のプレイが驚異的。

まずイントロのフレーズからして、ベックやペイジとはひと味違う。聴き手はここで「うむ?」と引きずり込まれる。

ソロ・パートでは、凡人には絶対コピー不可能な、超絶フレーズの連続、また連続。しかもただ速いだけじゃなく、リズムがビシッとキマっている。ベックのフリーキーなプレイを200%拡大コピーしたようなスゴさだ。

グレンのハイ・テンションなヴォーカルもレルフをしのぐ出来ばえ。新生ヤーディーズの面目ここにあり!ってな感じだ。

ただの「昔の名前で出ています」的、ビジネス最優先的再結成とはまるで違う、本人たちの「気合い」が伝わってくるね。

1位「SHAPES OF THINGS」

新生ヤーディーズのHP上で流れるテーマ曲としても使われているのが、これ。

第二期ヤーディーズを代表するヒット曲のひとつ。レルフ、マッカーティ、サミュエル・スミスの共作。

ゲスト・プレイヤーはスティーヴ・ヴァイ。彼は今回の新作をリリースした「FAVORED NATIONS」レーベルのオーナーでもあり、他のゲスト・ギタリストのアレンジメントをしたのも、彼だという。いわば陰の立役者。

そんな功労者ヴァイのプレイは、カッチョイイ!のひとこと。

愛用のワウ・ペダル「BAD HORSIE」を巧みに使った超高速プレイは、圧倒的のひとこと。

ベックもいまだに現役で、ヴォルテージの落ちない演奏をしているが、後続世代(ヴァイは60年生まれ)にも、着実にベックに迫る才能が育って来ているのがよくわかる。

残念ながらここでは取り上げなかったが、ジェフ・バクスター、ブライアン・メイ、スラッシュといった、他の後続ギタリストたちもなかなか気迫を感じさせるプレイをしとります。

こういった、多くの「子供たち(KIDS)」に影響を与えたザ・ヤードバーズって、やはりとてつもなくグレイトだったんだなと感じさせる一枚。

アルバムそのものの完成度としてはちょっと荒削りで、総花的な感じも否めないけど、ファンとしては実にうれしい贈り物でありました。

<独断評価>★★★☆


音盤日誌「一日一枚」#177 ザ・ビートニクス「EXITENTIALIST A GO GO-ビートで行こう-」(CANYON D32A0295)

2022-05-10 05:23:00 | Weblog

2003年7月20日(日)



#177 ザ・ビートニクス「EXITENTIALIST A GO GO-ビートで行こう-」(CANYON D32A0295)

鈴木慶一、高橋幸宏によるユニット、ザ・ビートニクスのセカンド・アルバム。87年リリース。

ムーンライダーズのリーダー、元YMOのドラマーというふたりの才人がコラボレート、類例のない面白い作品となっている。

このふたりに共通しているのは、一徹なミュージシャンというよりは、文学的なセンスをも持つ「アーティスト」だという点だろうね。

彼らのデビュー・アルバムの「出口主義(EXITENTIALISM)」というタイトルからして、実存主義=EXISTENTIALISMをもじったものだし、バンド活動の他、雑誌での文芸連載をも持っていたくらいだ。

グループ名も、アレン・ギンズバークらビート・ジェネレーションの詩人を意識したもので、そういった「舶来」のエスプリと、日本ならではの独自のロック&ポップがブレンドされて、絶妙な味わいを見せている。

<筆者の私的ベスト4>

4位「STAGE FRIGHT」

このアルバムでは二曲だけカヴァーをやっているが、そのうちの一曲。もちろん、ザ・バンドの代表曲、ロビー・ロバートスンの作品。

コテコテのアメリカン・バンドであるザ・バンドと、ザ・ビートニクス、ちょっと意外な取り合わせという気もするが、高橋のYMO時代の同僚、細野氏あたりの影響なんだろうか。彼らの隠れた「ルーツ」を垣間見た感じだ。

仕上がりはなかなか良く、ザ・バンドの華やいだ雰囲気とはまた違った、しっとりとしたヴォーカル&コーラスをキメてくれている。彼らのお仲間のひとり、大村憲司のギター・ソロもカッコいい。

ザ・ビートニクスのサウンド上の大きな特徴としては、高橋があえてナマのドラムスを叩かず、リズムがすべて打ち込みによるものだということがある。

あえて、バンド的なグルーヴを消し去って、「ユニット」的な音にまとめようという意図があるのだろうね。

3位「ちょっとツラインダ」

セカンド・ラインふうの軽快なビートに乗って、ふたりが交代に歌う、明るい失恋ソング。詞は鈴木、曲はふたりの合作。

ハネるようにノリのいいベースは、細野晴臣だろうか。また、サックスの達人、矢口博康が陰で、サウンドをビシッと引き締めている。

ちょっぴりおセンチで、ユーモラスな歌詞がいい感じだ。こういう、シャイで淋しん坊な男ごころを書かせたら、鈴木慶一の右に出るものはないな。

2位「大切な言葉は一つ「まだ君が好き」」

これも同じく詞は鈴木、曲はザ・ビートニクスによるナンバー。

どこかファニーで、どこか悲しいラヴ・ソング。このへんはもう、鈴木慶一ならではの世界ですな。

またバックの、ピアノをフィーチャーした、メロウな米国南部風サウンドが、実にいい。

「夜になると僕はまた空き缶を窓の外に投げる」のくだりでは、毎度笑ってしまいます。その投げやりさ加減が、いかにもビート族的でナイスだ。

矢口のソロも、短めですがなかなかいい味を出してます。

1位「TOTAL RECALL」

アルバムのファースト・チューン。すべて英語の歌詞はGiles Dukeと生田朗によるもの。曲はザ・ビートニクス。

循環コードを多用した曲調はどこか、YMOを思わせるものがある。

この曲もやはり、ふたりのコーラスが素晴らしく、他のデュオのどれにも似ていない、独自の響きを聴かせてくれる。

また、大村憲司はここでは、ジャズィなソロを披露しているので、それもまた聴きもの。

なお、5曲目の「THEME FOR THE BEAT GENERATION」はこのナンバーの冒頭部分をインストにアレンジしたものだ。

この一枚、サウンドも一級の出来ばえだし、録音もいいが、それにもまして気に入っているのが、ふたりのヴォーカル。

ややドライな鈴木、少しウェットな高橋、それぞれのヴォーカルの個性がうまく絡み合って、いいハーモニーを生み出しており、ヴォーカル・アルバムとしても上々の仕上がりだと思う。

なにより、歌詞がストレートに伝わってくる。やはり彼らはうまい。

日本のポップス史上、極めてユニークにして完成度の高いサウンドを生み出したふたり。一聴の価値はあります。

<独断評価>★★★★


音盤日誌「一日一枚」#176 サディスティック・ミカ・バンド「天晴(あっぱれ)」(東芝EMI CT32-5432)

2022-05-09 05:08:00 | Weblog

2003年7月13日(日)



#176 サディスティック・ミカ・バンド「天晴(あっぱれ)」(東芝EMI CT32-5432)

J-ROCKの先駆者といえるロック・グループ、サディスティック・ミカ・バンド、89年リリースのアルバム。

もちろん、オリジナルのほうではなく、再結成後のファースト・アルバムに当たる。

メンバーは加藤和彦、高中正義、小原礼、高橋幸宏というおなじみの面々に加えて、二代目ミカ(MICA)としてモデル出身の桐島かれんがヴォーカルで参加している。

<筆者の私的ベスト3>

3位「愛と快楽主義者」

今回のアルバムでは、二代目ミカの実力不足をカヴァーするためか(?)、過去の作品ではあまりリード・ヴォーカルをとらなかったメンバーも、積極的に歌っている。

この曲の小原礼&高橋幸宏もいい例だ。

森雪之丞、小原、高橋のペンによる、R&B調ナンバー。清水靖晃のテナーを加えた、テンプテーションズの「マイ・ガール」風のクラシカルなアレンジが、ちょっと異色。

小原の呟くような低音のヴォーカルもなかなかカッコいいし、ユキヒロの歌ももちろん、長年ヴォーカル・キャリアを積んだだけあって、のびやか。さすがの出来ばえだ。

ミカ・バンドって各メンバーの力量がすごくて引き出しが多いから、どんなサウンドでも出来るってことやね~。

2位「脳にファイアー! Brain's On Fire」

サエキけんぞう(当時パール兄弟)、小原礼の作品。

これがなんともイカしたハードロック・ナンバーなんだわ。

日本で初めて、世界に通用するロックサウンドを生み出した彼らならではの、カンペキな演奏。

ことに高中のギターが、ふだんのトロピカルなノリとはうってかわって、まことにハード&へヴィー。マジでハードロックしてます。ギター・キッズ、必聴ナリ。

リード・ヴォーカルはまずは小原が取り、サビでトノバンに渡す。こちらも実にパワフルにキマってる。

迫力あるサウンド同様、サエキのトッポい歌詞もなかなかオキニな一曲ざんす。

1位「Boys & Girls」

このトップ・チューンはシングル・カットされてヒットしたので、覚えていらっしゃる方も多いと思う。CFでもよく流れていた。

アルバム中では一番キャッチーでポップなナンバー。森雪之丞、小原、加藤、高橋の合作。

このミカバン再結成自体は、いかにもショーバイがらみ、某大手広告代理店がらみの「匂い」を感じてしまうのだが(ことに声がまるきり「ロック」していない、ミカ=桐島かれんの加入がそうだよね)、ミカが「使えない」ぶん、他のメンバーが張り切って歌っているようなので、それもまあよし、である。

サウンドは、いかにも89年当時の「最先端」といえそうなもの。

デジタルなビートに、小林武史のシンセ・ストリングス&ホーンがからみ、高中のディストーション・ギターが暴れまくり、かれんがラップで加わる。

ほぼ全員が参加の分厚いコーラスが、この老舗バンドの底力を感じさせるね。

で、なんといっても存在感があるのが、ユキヒロの「声」。彼の声は繊細で決してロックっぽくはないのだが、その得がたい魅力は、新生ミカバンの「核」となっていることは間違いない。

初代(?)ミカの、決して上手くはなかったがパンキッシュでアナーキー、ある意味「ロック」そのものだったヴォーカルこそオリジナル・ミカバンの魅力だった。

だが新生ミカバン=SADISTIC MICA BANDは、職人技でありとあらゆるサウンドをこなす「大人」のバンドであって、J-ROCKのフロンティアとしてのミカバン=SADISTIC MIKA BANDとはまた別のグループだと考えたほうがよいだろう。

ロックがロックたるためのサムシング、それは「欠乏感」「飢え」のようなものだと思うが、残念ながらこのアルバムにはそれがまず感じられない。

サウンド的には昔よりはるかに完成度が高くても、筆者としてはその一点が気になったのであります。ハイ。

<独断評価>★★★


音盤日誌「一日一枚」#175 大貫妙子「スライス・オブ・ライフ」(MIDI 35MD-1031)

2022-05-08 05:09:00 | Weblog

2003年7月6日(日)


#175 大貫妙子「スライス・オブ・ライフ」(MIDI 35MD-1031)

大貫妙子、87年リリースのアルバム。

ここのところ仕事で忙殺されている筆者だが、そういうときは彼女の澄み切った歌声をむしょうに聴きたくなる。

ター坊は、シュガー・ベイブがデビューして以来、ずっと聴き続けているのだが、あのクールさがいいんだよなあ。

<筆者の私的ベスト3>

3位「あなたに似た人」

ロアルド・ダールの短篇小説を本歌取りした一編。ター坊の作品。

なんといってもこのナンバー、今は亡き大村憲司さんがアレンジ、そしてリード・ギターを弾いているのに注目。

彼のソリッドで、一点の曇りもないストラト・トーンが実に印象的。派手なところはないが、ブルース&ファンクを感じさせて◎。

小原礼のベース、高橋幸宏のドラムスというミカバン・リズム隊も、タイトで文句なし。

孤独、寂寥を感じさせるメロディ・ラインに、ター坊の声質がなんともマッチしている。

2位「木立の中の日々」

筆者にとってのター坊のベストアルバムといえそうなのが82年の「クリシェ」なのだが、そこで教授こと坂本龍一とともにアレンジを担当していたのが、ジャン・ミュジという、アダモなどの編曲でも知られるフランス人。

彼がアレンジし、キーボードを弾いた「黒のクレール」のインスト版、まるで映画のラスト・シーンのような雰囲気があって実によかった。

その彼がふたたびター坊のアルバム制作に参加したのが、この曲。ター坊の作品。

最愛のひとと共に暮していながら、ふたりの過去の「燃えるような日々」がどこか風化していくような、そんな喪失感。

こういう微妙なニュアンス、おとなの心象風景を歌えるのは、彼女をおいて他にいないであろう。ほんにお見事な歌唱。

そして、ミュジの一分の隙もないストリングス・アレンジが、それを一層引き立てているのは、いうまでもない。

1位「彼と彼女のソネット」

どこかで聴いたことがあるようなメロディのバラード。それもそのはず、元々はフランス産のヒット曲なのである。

エドウィンのサムシングというジーンズのCFで良く流れていたね。

原題は「T'en Vas Pas」。それにター坊が訳詞をつけて、原田知世さんが歌い、ヒット。

それに少し遅れて、ター坊自身もレコーディングしたというわけ。

知世チャンの幼い、訥々とした歌いぶりもよかったが、さすが年の功(?)、ター坊の歌は説得力がある。

全く同じ歌詞ながら、知世ヴァージョンはやはり10~20代の若いカップル、ター坊ヴァージョンは30~40代のおとなのカップル、それぞれの「恋」を感じさせますな。

ところで、先日、りっきーさんから頂戴したティンパンのライヴビデオで、最近のター坊のお姿を拝見したのだが、デビューしてから25年は経ったにもかかわらず、オバさんぽくならず、全然イメージが変わらないのにはビックリした。

ホント、いつまでも若々しいんだよなあ。

そういえばどこかのインタビューで、「若さを保つ秘訣は?」と訊かれて、彼女は「結婚しないこと」と答えていたな。

筆者は、ター坊のそんなところが、好きだったりします。

<独断評価>★★★☆


音盤日誌「一日一枚」#174 高中正義「アローン」(ポリドール 28CK0030)

2022-05-07 05:02:00 | Weblog

2003年6月29日(日)

#174 高中正義「アローン」(ポリドール 28CK0030)



高中正義、81年リリースのアルバム。

76年の「セイシェルズ」以降、着実にアルバムをリリースしてきた彼にとっては、10枚目にあたる作品。

彼の初期のサウンドのイメージは、「ひたすらラテンでネアカ」というものだったが、このアルバムではしっとりとした大人っぽいバラード・プレイも聴かせている。

<筆者の私的ベスト4>

4位「"SPEED OF LOVE"」

アルバムではトップに収録。タイトル通り、ひたすらスピーディでスリリングな音を聴かせてくれる。

高中の多重録音によるツイン・ギターが実にカッコよろしく、ゲストの上田正樹のシャウトが、サウンドにさらに迫力を加えている。

ドラム(渡嘉敷祐一)、ベース(高橋ゲタ夫)らのプレイも最高にノリが良い。腰にビンビン来る音ナリ。

高中のナンバーとしては、結構ハードでヘヴィー。ストイックささえ感じる辛口のサウンドで、筆者としては気に入っている。

3位「SHE'S RAIN」

これはどちらかといえば、従来の高中サウンドの中心ともいうべき、明るく軽やかな路線。

一聴してすぐストラトキャスターとわかる、カラッとしたギターのトーンが魅力的。

これを使って、パーカッシヴなプレイを聴かせてくれるのだが、ホント、心までウキウキしてくる。

バックには全面的にストリングスを導入、ギターとの相性も意外によい。

2位「THE NIGHT DELAY」

ドラマチックなイメージの一曲。「SHE'S RAIN」同様、星勝がストリングス・アレンジを担当。これがさすがの出来ばえ。

全編、ギター・サウンドとストリングスのコラボレーションにより、きわめて精緻なサウンドが展開する。

単にギター・プレイヤーとしてテクニックがあるだけでなく、コンポーザー、アレンジャー、サウンド・クリエイターとして見ても、高中正義は超一流のひとだと思う。

この曲での泣きのギター・プレイも、もちろん気合いが入っていて素晴らしいが、何より、音の全体的なまとまり、バランスがよい。再聴、三聴にもたえうる音とは、こういうのをいうのだろう。

1位「ALONE」

1位はやはり、このタイトル・チューンだろうな。もちろん、他のすべてのナンバー同様、高中の作曲。

脳天気なプレイだけが、オレじゃないぞとばかり、メロウでメランコリックなバラードを演奏しているが、これがなかなかよろしい。

ラテンのパーカッション・サウンドにのせて、ストラトキャスターを泣かせまくる高中。

若干サンタナっぽいなという感じはあるが、タメのきいたオーヴァー・ドライヴ・サウンドが耳に心地いい。

何コーラスものギター・ソロを含めて、すみずみまできちんと計算されたアレンジ。すべて高中本人が編曲しているのだが、ストリングスの使い方もうまい。

極めて「職人」的な仕事だな~と感じます。ロックの自然発生的、偶発的なサウンドの面白さとはまた違うのですが。

同年リリースのアルバム「虹伝説」と合わせて、彼の音楽の円熟ぶり(といっても当時まだ28歳という若さだったが)を示す作品といえそう。

ギタリストなら、一度はチェックしてみて欲しい。

<独断評価>★★★★


音盤日誌「一日一枚」#173 ビリー・ジョエル「ソングズ・イン・ジ・アティック」(CBS/SONY 20KP 733)

2022-05-06 06:40:00 | Weblog

2003年6月24日(火)



#173 ビリー・ジョエル「ソングズ・イン・ジ・アティック」(CBS/SONY 20KP 733)

ビリー・ジョエルのファースト・ライヴ・アルバム。81年リリース。

77年発表のアルバム「ストレンジャー」で全世界的にブレイクした彼の初のライヴ盤は、80年6~7月のサマーツアーの模様を収めながらも、なぜか初期(71~76年)の4作に絞り込んだ選曲となっている。

アルバム・タイトル(屋根裏部屋にしまわれていた歌)が示すように、彼がブレイクする以前の、ほとんど知られていない名曲を集めたものといえる。

これは、すでに超売れっ子、スーパースターとなっていた彼が、あえて「初心忘るべからず」ということで企画した一枚なのだろう。ジョエル自身がライナー・ノーツを書いているほどの、入れ込みようだ。

<筆者の私的ベスト3>

3位「さすらいのビリー・ザ・キッド(THE BALLAD OF BILLY THE KID)」

同じ名前だから、かどうかは知らないが、ジョエルにとって「心のヒーロー」ともいうべき伝説的人物、ビリー・ザ・キッドを歌ったナンバー。

セカンド・アルバムにして、彼の存在を世間に広く知らしめた「ピアノ・マン」(73年)に収められた名曲。

オールド・タイミーなスタイルのピアノが全開。どこかのどかで、ノスタルジックな曲調は、まさに「古き佳きアメリカ」そのもの。

現代の吟遊詩人、ビリー・ジョエルが歌う、放浪するビリー・ザ・キッド像は、街から街へとツアーを続けていくジョエル自身と、見事にダブっている。

ジョエル自身のハーモニカでゆっくりと始まり、頻繁にテンポ・チェンジを繰り返す。ピアノとバックとの掛け合いなど、メリハリに富んだ曲構成もまた、聴きものだ。

2位「さよならハリウッド(SAY GOODBYE TO HOLLYWOOD)」

「ストレンジャー」発表以前の彼のナンバー中、もっともポピュラーな一曲。76年リリースの第四作「TURNSTILES(ニューヨーク物語)」から。

彼の歌の中に一番出てくる都市は、もちろん彼が生まれ育ったニューヨークだが、彼はそれ以外にも、さまざまなアメリカの地名を曲中に歌い込んでいる。

この曲もその一例だし、本アルバムでは他に「ロサンゼルス紀行」なんてのもある。

フィル・スペクターの「ウォール・オブ・サウンド」風、ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」を思わせる曲調が、なんとも懐かしい感じ。

リッチー・カナータの力強いサックス・ソロをフィーチャー。これぞ王道ポップス!と唸らせる。

もちろん、ジョエルの喉とピアノも絶好調。スタジオ版にも、決してヒケをとらない出来ばえだ。

1位「マイアミ2017(MIAMI 2017)」

こちらもまた、アルバム「TURNSTILES」から。

近未来のアメリカをテーマにしたSFチックな内容の作品。副題の「SEEN THE LIGHTS GO OUT ON BROADWAY」が示すように、歌詞中にニューヨークの描写もふんだんにちりばめられている。

これを演奏する場は、当然ここっきゃないでしょ!ということで、NYCはマディスン・スクウェア・ガーデンの、満場の観衆を前に披露。いやー、ウケるのなんのって。

特に(未来の)ヤンキーズについて歌ったところでは、観衆も狂喜乱舞状態。

生粋のニューヨークっ子、ビリー・ジョエルの面目躍如の一曲である。

彼のピアノ・サウンドをベースに、シンセを効果的にあしらったサウンドが、当時の筆者には新鮮に聴こえたものだが、20年以上の歳月を経ても、いまだにその魅力は色あせていない。

筆者自身、76年、77年と二回彼のライヴを聴いているが、これらのどの曲も、ヒット曲と同様愛着を持って歌いこんでいたのが印象的であった。

ヒット曲ぞろいとは言い難いが、ジョエルのすぐれて叙情的な歌詞とメロディ、その確かな歌唱力、そしてバックのパワフルなサウンドがこの一枚をライヴ盤の秀作にしている。

意外と忘れられがちな一枚だが、チェックしといて損はないと思うよ。

<独断評価>★★★★☆


音盤日誌「一日一枚」#172 エアプレイ「ロマンティック」(RVC RVP-6456)

2022-05-05 05:00:00 | Weblog

2003年6月21日(土)



#172 エアプレイ「ロマンティック」(RVC RVP-6456)

エアプレイ、最初にして最後のアルバム。80年リリース。

エアプレイとは、プロデューサー、コンポーザー、アレンジャーとして名高いデイヴィッド・フォスター(kb)、ジェイ・グレイドン(g)のふたりに、ヴォーカルのトミー・ファンダーバーグが加わったユニット。

アルバムには彼らに加えて、親交のあったミュージシャンが多数参加している。TOTOのジェフ&スティーヴ・ポーカロ兄弟、スティーヴ・ルカサー、デイヴィット・ハンゲイト、レイ・パーカー・ジュニア、ビル・チャンプリン、トム・ケリーほかの豪華な面々だ。

<筆者の私的ベスト3>

3位「NOTHIN' YOU CAN DO ABOUT IT」

フォスター、グレイドン、スティーヴン・キップナーの作品。

もともとは前年、グレイドンがマンハッタン・トランスファーのアルバム「EXTENSIONS」をプロデュースした時に提供した楽曲。

つまり、作者自身によるパフォーマンスなわけだが、これもマントラ版に負けず劣らず、いい出来だ。

衝撃的なブラスのイントロからいきなり、フォスター=グレイドンのファンクな世界が全開。

中間部では、グレイドンの天翔けるようなギターももちろん聴ける。

一分のスキもない緻密なアレンジ。完璧な演奏。そして最高レベルの技術を駆使したレコーディング。

もう、文句のつけようがありません。

そして意外に善戦しているのが、当時ほとんど無名だったセッション・ヴォーカリスト、ファンダーバーグだろう。

広い声域、のびやかな声質をフルに生かして、ソロはもちろん、多重録音コーラスにも挑戦しているのだが、これがなかなかキマっている。

こういう才能をもった人々がゴロゴロしているんだから、アメリカって国はスゴいやな。ホントに層が厚いわ。

2位「CRYIN' ALL NIGHT」

フォスター、グレイドン、スティーヴン・キップナーの作品。

早めのテンポのロック・ナンバー。シンセとツイン・ギターのからむイントロからして、ドラマティックでカッコいい。

ハンゲイト=ポーカロという最強のリズム隊のサポートを得て、なんともごキゲンなグルーヴだ。

そして、キレのいいファンダーバーグの歌声が、これらにからみ、互角で渡りあう。

グレイドンのリフも要所要所でバッチリと決まって、聴く者を唸らせる。名人はさすがに期待を裏切らないね。

キャッチーなメロディもまた、印象的。どうしてこう、いい曲ばっかり書けるんだろう。凡人はうらやむばかりであります。

1位「AFTER THE LOVE IS GONE」

いい曲がてんこもりのアルバムなので、迷いに迷ったのだが、これに決めた。

フォスター、グレイドン、ビル・チャンプリンの作品。

これまた彼らが、アース・ウィンド&ファイアーのために提供していた楽曲。前年のアルバム「I AM」に収められている。

数あるラヴ・バラードの中でも白眉といえるこの名曲を、当時最高級のメンバーがプレイしたのだから、出来が悪いわけがない。

特にこの曲におけるキー・ポイントは「ヴォーカル」であろうが、ファンダーバーグの歌いぶりは実に見事だ。

彼は、どちらかといえばTOTOのボビー・キンボールのように、ハイトーンで鋭角的に攻めるタイプの歌い手なのだが、モーリス・ホワイトのように中低音をきかせて、シブく歌いあげることも全然OKなのである。まさにオールマイティ。

やっぱ、本場にはかなわねーやと、二度脱帽である。

また作者のひとりチャンプリンの、コーラスでの好サポートも光っているし、グレイドンの多重録音ソロもエクセレント。

まさに珠玉の一編なり。

当時はAORとかなんだとかいろいろレッテルを貼って売られていたが、今改めて聴き返してみると「良質の音楽」、このひとことに尽きると思う。とくに曲作りとアレンジに関しては、超一流の「職人技」を感じるね。

今では音楽活動もマイ・ペースで、かなり寡作のフォスターとグレイドンだが、当時は若さ、パワーに満ちあふれた音楽を精力的に生み出していたのが、よくわかる。

当時からのファンはいうまでもなく、若いリスナーにも、おススメである。

<独断評価>★★★★★



音盤日誌「一日一枚」#171 ザ・バンド「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」(東芝EMI/Capitol CP21-6027)

2022-05-04 05:11:00 | Weblog

2003年6月16日(月)



#171 ザ・バンド「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」(東芝EMI/Capitol CP21-6027)

ザ・バンドのデビュー・アルバム。68年リリース。ジョン・サイモンほかによるプロデュース。

前年にデビュー、76年に解散するまでの短い活動期間であったが、いまだに多くのバンドに影響を与え続けているザ・バンド。

もともとは「ホークス」という名でロニー・ホーキンスのバックをつとめていたが、ボブ・ディランに見出され、彼のバックで演奏したことで俄然脚光を浴びた彼ら。レコーディングに約一年もかけた、満を持してのバンド・デビュー盤である。

そのディランが自ら絵を書いたという淡彩のジャケットが、なんとも印象的だ。

<筆者の私的ベスト3>

3位「CHEST FEVER」

正直言って筆者は、十代の前半ではじめてザ・バンドを聴いたとき(リアルタイムでは「カフーツ」あたりだったかな)、まるでピンと来なかった。

当時筆者はバリバリのブリティッシュ派だったということもあるのだが、いかにもアメリカ的な(彼らは本当はカナダ出身だけど)まったりとした音にのめり込むことが出来なかった。(それは彼らを育てたディランについても同様なんだが。)

でも、今聴いてみると、意外と耳にしっくり来るんだな、これが。

やはり彼らの音楽は、何十年もかけてさまざまなスタイルの音楽を聴きこんで初めて、ようやくその「よさ」がわかるタイプのものなのかもしれない。

さて、筆者が3位に選んだのは、ギターのロビー・ロバートスンの作品。

この一枚の中では、一番ロックっぽい感じのナンバーだ。

どことなく、スティーヴ・ウィンウッドのいたスペンサー・デイヴィス・グループ、トラフィックを思い起こさせるグルーヴがあって、全体にカントリー系のシブめの曲が多い本盤では、ちょっと異色。

ロバートスン、リーヴォン・ヘルムらのコーラスもなかなかソウルフルだし、ガース・ハドスンとおぼしきオルガンのプレイがなんともイカしとります。

2位「I SHALL BE RELEASED」

もちろん、ディランの作品。グループの門出にあたって、兄貴格のディランが彼らに捧げた、最高の贈り物といえよう。

ヘルム、ロバートスンを中心にしたファルセット・コーラスで、この清冽なる名曲を歌い上げるザ・バンド。

アメリカ中、いや世界中のありとあらゆる「理不尽」なこと、「非人間的」なことに対するプロテスト。これがまた、心に沁みわたります。

他にもジョーン・バエズ、ディラン御本人も歌っていてそれぞれに秀逸なんですが、やはり決定版はこれかと。

1位「THE WEIGHT」

ここでアルバム・タイトルの由来について説明しておくと、「ビッグ・ピンク」とは、67年ころからすでに音楽コミュニティだった町、ウッドストックの北東、ウェスト・ソーガティーズにあった家のニックネーム(壁がピンク色だったようだ)。

彼らはそこを借りて住み、その地下室でレコーディングやセッションを重ねていたことから、このタイトルが付いたのである。

かのエリック・クラプトンも、67年ころ彼らとそこではじめてのジャム・セッションを行い、彼らの音楽性にいたく衝撃を受けたという。

それまでのギター中心のラウドな音から、キーボード、ホーンなどを多用した色彩感あふれるサウンドへと、クラプトンの嗜好が変わっていったのも、彼らとの出会いがきっかけだったのだ。

そんな強烈な個性、魅力を持った彼らの「マスターピース」ともいえるのが、この曲。

ロバートスンの作品。でも、リードで歌うのはヘルム。3コーラス目でようやく作者本人が歌わせてもらってます。

アコギのイントロからして、実に土臭くて、いなたい。続いてドラム、ヴォーカルが入っていく。

ピアノの響きがいかにも優雅で、シンプルにして端正な演奏。刺激的なギター・ソロも、挑発的なシャウトも何もなし。

その昔筆者は、「こんな『大人』なロックってあり?」とつい思ってしまったわけだが、今では「そーいうのも十分あり」と思えるから、面白い。

ハメをはずして騒ぐだけがロックじゃない。そういうことさ。

歌詞にしても、二十代なかばから三十そこそこの若さで、人生の「重荷」とか「苦渋」とか「悔恨」とかを歌っていたりして、ちょっと老成しすぎじゃない?って感じもあるけど、四十代なかばの筆者がいま聴けば、非常に共感できたりする。

そういう音楽を、その年齢ですでに生み出せたこと、これも考えればスゴい才能だと思う。

デビュー作にして、最高傑作。その高い完成度には、ホント、舌を巻きまっせ。

<独断評価>★★★★★


音盤日誌「一日一枚」#170 ジョニー・ウィンター「THE WINTER SCENE」(PAIR PCD-2-1273)

2022-05-03 05:11:00 | Weblog

2003年6月13日(金)



#170 ジョニー・ウィンター「THE WINTER SCENE」(PAIR PCD-2-1273)

ジョニー・ウィンター、CBSからメジャー・デビューする以前の、初期の録音を収録したコンピ盤。72年リリース。

これがなかなか面白い。「百万ドルのロックンロール・ギタリスト」と呼ばれる前の彼がどのような音楽をやっていたかが、よくわかるのだ。

ひとつの軸は軽めのロカビリー路線。もうひとつの軸はアコギによるブルース路線。

CBS時代のようなハードなロック・サウンドを期待していると見事に肩すかしをくらうが、ブラック・ミュージックのお好きなかたには、一度は聴いてみて欲しいサウンドが満載だ。

<筆者の私的ベスト4>

4位「ROAD RUNNER」

もちろん、ボ・ディドリー作のあの曲だ。ウィンターにしては、妙に明るく脳天気な曲調で、ロカビリー路線に属するナンバー。

ワーナー・アニメの鳥のキャラクター、「ロードランナー」の鳴きまねなどしたりして、実にユーモラス。

ウィンターはこういうおふざけ路線、本当は好きなのかもね。

ホーンを前面に押し出したツイスト・サウンド、なかなかごキゲンです。

3位「KIND HEARTED WOMAN」

こちらはアコギ・ブルース路線の一曲。

ご存じロバート・ジョンスンのナンバーに、同じく彼の「WHEN YOU GOT A GOOD FRIEND」「ME AND THE DEVIL BLUES」をメドレーでつなげて歌っている。

ロバジョン風の甲高い声を絞り出すようにして歌うさまは、バンドでのライヴにおけるウィンターからは、まったく想像のつかない世界。

全然知らない人が聴いたら、黒人、しかも結構トシのいったひとが歌っていると勘違いしそうなくらい、ディープなカントリー・ブルース。でもこれもまた、ジョニー・ウィンターの世界のひとつなんである。

似た趣向の曲としては、ロバジョンの「WALKIN' BLUES」を本歌取りした「LEAVIN' BLUES」も。こちらのスライド・プレイもいいね。「32-20 BLUES」のカヴァー、「38-32-20」なんてのもある。

2位「GANGSTER OF LOVE」

テキサス出身のブルースマンにしてヒップなファンカー、ジョニー・ギター・ワトスンの代表曲のカヴァー。

これも、ウィンターのパブリック・イメージ(ゴリゴリの硬派ギタリスト)とはだいぶん違う、ナンパな選曲だよね。

ところが、聴いてみればナットク。陽気でいなせな愛のギャングスターを気取るウィンターも、なかなかサマになっとるのだよ。

ちょっと酔っぱらったようなレイジーな歌、そしてテクニックよりもファンキーな雰囲気重視のギター・プレイが、なんともカッコよろしい。ロカビリー路線の中でも、出色の出来ばえである。

1位「GOIN' DOWN SLOW」

「セントルイス・ジミー」ことジェイムズ・オーデンの名曲を、アコースティック・スタイルでカヴァー。

黒人、白人、ブルース系、ロック系を問わず、多くのアーティストが取り上げているが、ウィンターのヴァージョンはとりわけ素晴らしい。

内省的で陰影にとんだヴォーカルといい、無駄のまったくない、カッチリとしたギター・プレイといい、文句なし。

B・Bやマディ、ウルフにも決してひけを取らない、正真正銘のブルースマンであることが、この曲を聴けばよくわかる。

静と動、陰と陽、見事なコントラストをなす、若き日のウィンター・サウンド、ぜひ一度聴いてみよう。

ノスタルジック、でもいつの時代にも通用する、普遍的な魅力を持つブルースをそこに発見出来るはず。

<独断評価>★★★☆


音盤日誌「一日一枚」#169 ハウリン・ウルフ「HOWLIN' WOLF(THE ROCKIN' CHAIR ALBUM)」(MCA/Chess CHD-5908)

2022-05-02 05:09:00 | Weblog

2003年6月11日(水)



#169 ハウリン・ウルフ「HOWLIN' WOLF(THE ROCKIN' CHAIR ALBUM)」(MCA/Chess CHD-5908)

ハウリン・ウルフのチェスにおけるセカンド・アルバム(62年リリース)。といっても、当時のことだから、コンセプトにのっとって作られた「作品」というよりは、シングルの寄せ集めという性格が強い。

それでも、ウルフという空前絶後の強烈なキャラを前面に押し出すことで、見事、トータリティを感じさせるアルバムに仕上がっているのは、さすが。

<ロック・ファン必聴!のベスト3>

3位「SPOONFUL」

60年録音のシングルから。おなじみのチェスの顔役、ウィリー・ディクスンの作品。

ディクスンも得意のベースで参加、他にはヒューバート・サムリンのギター、オーティス・スパンのピアノ、フレッド・ビロウのドラムと、チェス・オールスターズの観あり。

クリームやテン・イヤーズ・アフター、キャンド・ヒートらによって取り上げられたことで、ロック・スタンダード化した曲だが、カヴァー・ヴァージョンのいずれも、ウルフの聴く者のハートを鷲掴みにするような歌を越えることは出来ていない。

どんなにバンド・サウンドをモダンなものに進化させたところで、ブルースの本質はやはり「ヴォーカル」。ご本家の120%エモーショナルな表現には、かなうべくもない。

楽器のテクうんぬんばかりを論じがちな、頭でっかちなロック・ファンたちにこそ、全身全霊でシャウトするウルフの歌を聴いてほしい。

2位「BACK DOOR MAN」

これまたディクスンの作品。もっとも、「BSR」51号でのサムリン・インタビューによると、ディクスンは自分で書いてないような曲も、ちゃっかりとプロデューサー権限で自分の曲としてクレジットしていたことが多かったようなので、すべて彼のペンによるものかどうかは不明。

「SPOONFUL」と同じメンバーで60年の録音。

この曲も、ドアーズ、チキン・シャック、UFOといったロック・バンドによってカヴァーされているが、あの天才ジム・モリスンですら、ウルフの持つスゴみを越えたとは思えない。

そのくらい、ここでの彼のパワーはすさまじい。

「背徳」「反社会的行為」をテーマにしながら、これだけ説得力ある歌を聴かせられるとは。背筋がゾクッとするくらい、素晴らしい。

1位「THE RED ROOSTER」

そして1位はやっぱりこれだ。同じくディクスンの作品。

61年の録音。サムリン、ディクスンに加えて、ジョニー・ジョーンズ(p)、サム・レイ(ds)がバックをつとめる。ウルフもギターを弾いている。

「LITTLE RED ROOSTER」のタイトルでストーンズにカヴァー(65年)されたことで有名となったナンバーだが、これを聴くに、ミック・ジャガーがウルフに、相当な影響を受けたことがよくわかる。

ストーンズは、マディ・ウォーターズやチャック・ベリーからの影響をよく指摘されるものの、意外にウルフの影響については余り言及されることがない。

しかし、明らかにウルフ譲りの、わめきちらすようなシャウト唱法も、ストーンズをストーンズたらしめる上で極めて不可欠な要素だと思う。

また、欲望のおもむくままに動くといったステージのスタイルも、彼らが巧みに取り入れた要素だろう。

なにより、ウルフとサムリンが、ギターとヴォーカルに分かれて「絡む」スタイルは、ストーンズがもっとも真似したところだろう。

で、この曲で一番カッコいいのは、ダルなサウンドにのせて弾かれる、スライド・ギターのプレイ。シビれます!

40年以上の時間を越えて、ストレートにハートに訴えてくるウルフの歌声、聴かずに今日のロックは語れない。

タフなシャウター、ハウリン・ウルフの魅力、ここにあり!

<独断評価>★★★★☆