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僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」 ゆき

2009年11月06日 | ケータイ小説「パトスと…」
「ゆきね」
「あぁほんとだ、ゆきだ」

灰色の空から舞い落ちてくる雪は
留美子の頬やまぶたやおでこに止まって
すぐに溶けた。

耳のすぐ横の髪にたどり着いた雪は
しばらくの間溶けずにそこにあった。

「動かないで」
「なぁに?」

「動いちゃダメ」
「どうしたの?」

「あぁあ、溶けちゃった」
「ふ~ん」

留美子は顔を上に向けたままじっとしていた。
多分空気はすごく冷えていたのだと思う
次第に落ちてくるものはその数を増やしていく。
このままふたりで雪に埋もれてしまえばいい
ずっとこのままでいたい

辰雄はじっと動かずにいた。

握り合った手から伝わってくる体温を
逃がさないように
いつまでもじっとしていた。

「きもちいい」

留美子がつぶやいた。



















コメント
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