「ゆきね」
「あぁほんとだ、ゆきだ」
灰色の空から舞い落ちてくる雪は
留美子の頬やまぶたやおでこに止まって
すぐに溶けた。
耳のすぐ横の髪にたどり着いた雪は
しばらくの間溶けずにそこにあった。
「動かないで」
「なぁに?」
「動いちゃダメ」
「どうしたの?」
「あぁあ、溶けちゃった」
「ふ~ん」
留美子は顔を上に向けたままじっとしていた。
多分空気はすごく冷えていたのだと思う
次第に落ちてくるものはその数を増やしていく。
このままふたりで雪に埋もれてしまえばいい
ずっとこのままでいたい
辰雄はじっと動かずにいた。
握り合った手から伝わってくる体温を
逃がさないように
いつまでもじっとしていた。
「きもちいい」
留美子がつぶやいた。
「あぁほんとだ、ゆきだ」
灰色の空から舞い落ちてくる雪は
留美子の頬やまぶたやおでこに止まって
すぐに溶けた。
耳のすぐ横の髪にたどり着いた雪は
しばらくの間溶けずにそこにあった。
「動かないで」
「なぁに?」
「動いちゃダメ」
「どうしたの?」
「あぁあ、溶けちゃった」
「ふ~ん」
留美子は顔を上に向けたままじっとしていた。
多分空気はすごく冷えていたのだと思う
次第に落ちてくるものはその数を増やしていく。
このままふたりで雪に埋もれてしまえばいい
ずっとこのままでいたい
辰雄はじっと動かずにいた。
握り合った手から伝わってくる体温を
逃がさないように
いつまでもじっとしていた。
「きもちいい」
留美子がつぶやいた。