ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

nano tech 2013展で、多様な研究開発成果を拝見した話の続きです

2013年02月02日 | イノベーション
 1月30日から2月1日までの3日間にわたって、東京ビックサイトで開催されている第12回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議「nano tech 2013」に行って、多様な研究開発プロジェクトの成果を拝見した話の続きです。

 「nano tech 2013」の入り口付近には、経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の巨大なブースが広がっています。新エネルギー・産業技術総合開発機構が研究開発を支援した研究開発プロジェクトなどの成果が各ブースに展示されています。

 その各ブースの中を歩き回って、さまざまな研究開発プロジェクトの成果を見て、有機EL照明や炭化ケイ素(SiC)パワー半導体、高反射型カラー電子ペーパーなどの展示が印象に残りました。材木などからセルロース“シングル”ナノファイバーを取り出し、ポリ乳酸と混合して高ガスバリアーフィルムを作製した展示ブースも印象に残りました。

 あれと思った展示ブースは、熱可塑性樹脂のポリプロピレン(PP)を短い炭素繊維で強化した研究開発プロジェクトの成果を示すブースです。研究開発プロジェクトは東京大学と企業の共同研究ですが、事実上は炭素繊維大手の東レの展示です。



 あれと驚いた理由は、数日前の大手新聞紙の記事に「大手炭素繊維メーカーの帝人は、短い炭素繊維で強化する樹脂に熱可塑性プラスチックを用いるのに対して、東レは熱硬化性プラスチックを用いるという研究開発方針が異なる」という内容のコラムが掲載されていたからです。研究開発と事業のそれぞれの戦略について、かなり断定的な書き振りでした。

 帝人が試作した短い炭素繊維で強化した熱可塑性プラスチック製の自動車ボディーを、東京モーターショーで拝見した記憶があります。

 今回、東レが展示した試作品は、短い炭素繊維で強化した熱可塑性プラスチック製の小型自動車部品です。通称、“スタンパブル品”と呼ばれる、短時間加熱して、金型でプレス成形してつくるものです。

 東レは、平均長さ5ミリメートルの炭素繊維を完全にバラバラにし、その表面を化学処理して熱可塑性プラスチックとなじむようにし、繊維強化効果が十分に働くようにしたそうです。

 先日の新聞記事の真意は、帝人は熱可塑性プラスチックベースで大型の自動車ボディーを試作して、自動車メーカーに売り込んでいるのに対して、もう一方の炭素繊維の旗頭の東レは、まだ小型部品しか試作していないという意味だったようです。

 豊田合成などが展示した“筋電義手”も気になりました。昨年も展示されていたこの義手は、高分子誘電アクチュエーター製の新型モーターで動きます。



 実際に製品化する際には、現行の2本指から、指はもう少し多い本数になるそうです。

 小難しくなりますが、特殊な樹脂製の誘電層を電極層でサンドイッチ構造ではさんだシート状のものをくるくると巻いて、ロール型高分子製の誘電アクチュエーターにするものです。

 この高分子誘電アクチュエーターは、義手以外にも、病院などの床ずれ防止マットや電動歯ブラシ用の駆動モーターとしての用途開発を考えているそうです。

 ここで展示された研究開発成果は、10年ぐらいしたらお目にかかれる可能性があるものです。どの研究開発成果に将来、お目にかかることができるのかを想像しています。