ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

2013年10月に文庫本化された「限界集落株式会社」を読みました

2014年01月02日 | 
 文庫本「限界集落株式会社」(小学館発行)を読みました。著者は黒野伸一さんという小説家です。文庫本化する基の単行本は2011年11月に、小学館から発行されています。

 この年末年始に読む本を探しに、東京都内の大型書店に行った時に、文庫本コーナーに平積み展示されており、本のタイトルが気に入って購入しました。



 文庫本の帯には「地域活性エンタテイメント」「過疎・高齢化・雇用問題・食糧自給率などなど一気に解決!」などの表現が踊っています。

 本書は、IT企業で活躍していた主人公が、起業を目指して退社し、祖父が持っていた過疎地にある農家の実家で10数年間働き続けた自分をチューンナップする目的で訪れたことを契機に、その限界集落で村民全員参加の共同経営農業共同体を築いて、過疎地で新規事業を起こそうと、あれこれ苦心する話です。

 祖父が農業をしていたという限界集落は、「都心から中央自動車道で2時間ほど走り、インターチャンジを下りてからさらに1時間走った」所だそうです。麓の町から15分も走ると、耕作放棄地が多い、住民が老人ばかりの限界集落に達するそうです。数人の孫に当たる子供も住んでいます。

 この地域を担当する麓の地方自治体の担当者は、当該集落の老人たちに、山を下りて医療施設が整っている市街地で暮らすように説得しています。地元の地方自治体の“コンパクトシティ”構想に基づく勧告です。

 この小説は限界集落で村民全員参加の共同経営農業共同体を築くという狙いは、TPP(Trans-Pacific Partnership 、環太平洋戦略的経済連携協定)が実際に締結される可能性が高い現在、小説のテーマとしてはストライクのテーマです。文庫本の帯が謳うように「過疎化・高齢化・雇用問題・食糧自給率」などを一挙に解決するヒントになりそうです。

 本書を読んだ感想は、頭で考えた限界集落のイメージを文章化した感じの幼い文章が多すぎるのが欠点です。たぶん、実際の限界集落を自分の足で調べていません。最初に、単行本化を図った小学館の編集担当者が構成内容の注文をさぼった感じです。実際の限界集落に住む方々は、ある意味ではもっとしたたかに順応し、当面を考えていると思います。

 文章にリアリティがなさ過ぎる点が一番の不満です。現実をつかんでいない個所がたくさんあります。優れた小説テーマだっただけに、惜しまれる話の展開です。

 今回は、大型書店に平積みされ、その文庫本の帯に魅力的なコピーの文字が躍っていたことに、惑わされました。でも、日本各地に増えている限界集落の問題は、そう簡単な問題ではないことを知りました。