東京大学政策ビジョンセンターが主催する“知的資産経営新ビジネス塾”の新シリーズ講演会での「3Dプリンティングと知的資産経営」という講演を拝聴しました。
今回の講演の冒頭に、モデレーターを務められた東京大学大学院経済学研究科教授の新宅純二郎さんが、3Dプリンティングが出てきた経緯や背景として、設計や製造・生産へのコンピューター利用技術の流れを俯瞰されました。「1970年代に米国が発明され登場した工作機械向けのNC(数値制御)技術の登場は、製造・生産現場の製造ノウハウを数値制御に置き換える技術改革だった」と解説されました。
以下、そのご解説のさわりです(壮大なお話なので、印象に残った部分です)。その後、CAD(コンピューター支援設計)やCAM(コンピューター支援生産)というコンピューター利用技術が、米国からまた登場し、設計と製造・生産のの技術者・現場をつなげます。この結果、FA(ファクトリー・オートメーション)などの実現につながります。最初は、米国でコンピューター利用の考え方が具体化され実用化されますが、日本の製造業の企業も必死にフォローし、部分的には設計・生産現場で巧みに使いこなします。
さらに「3D-CAD(3次元CAD)が登場し、設計と製造・生産現場がつながりました」と解説します。これ以前は、設計者の目指す意図を試作してみないと分からなかったものが、製造前に製品形状やつくりやすさなどを検討できるようになります。新宅さんは「つくりやすい設計が初めて可能になった」と説明します。
問題は、CAD・CAMから3D-CADなどの基幹ソフトウエアを米国などが産み出し、米国のソフトウエア企業が同ソフトウエア市場を支配していることです。ここまでが、3Dプリンティングが話題になる以前jの話です。
さて、今回の講師の東京大学生産技術研究所教授の新野俊朗さんは、まず「3Dプリンターという表現が誤解を招きやすい」と注意を喚起します。新聞やテレビなどがニュースとして伝えている「10万円程度の3Dプリンターでつくる個人嗜好の樹脂製品を個人的につくる話は、製造業系の事業化とは直接関係がない技術革新の流れだろう」と解説します。
新野さんが当該の委員をお務めになっている米国ASTM(American Society for Testing and Materials)という米国の工業標準を決める米国材料試験協会では、日本でいう“3Dプリンティング”技術を「付加製造(Additive Manufacturing)という表記で規格化している最中」と説明します。材料を付加する(積み重ねる)ことによって成形する技術で、3次元形状の数値データを基に作成する技術を指しているとのことです。
新野さんは「工業用の付加製造(積層造形)向け装置は、日本円換算で1億円程度と高いので、どんなビジネスモデルで何をつくるかという事業モデルがポイントになる」と声明します。
例えば、人間の歯並びの歯列矯正器具に適用した事例は、成功するビジネスモデルになるとみているそうです。人間の歯並びの歯列矯正器具は、その個人向けに20個から40個程度つくる必要があり、まさにオーダーメイド機器になっています。その歯列矯正器具を工業用付加製造(積層造形)装置を適用したビジネスは、1社が米国などの先進国市場を相手に事業を始めているそうです。この1社が全世界の市場を握れば、事業として十分に成立する可能性が高いとみているそうです。
同様に、人間の難聴者向けの補聴器や人工股関節の部品などの、究極のオーダーメイドの機器・部品になるために、「それぞれの1社が全世界の市場を握れば、事業化できる」と考えているそうです。その究極のターゲット部品は、再生臓器です。再生臓器は、個人向けのオーダーメイド“部品”だからです。
今回、日本が遅れを取る可能性として指摘されたのは、3次元形状の数値データを利用する3D-CADの基盤技術については、日本は利用していても、根幹を再開発する研究開発能力は持っているのだろうかという懸念でした。かなり、難しい問題です。
CADなどの一連のコンピューター利用技術を考えだし、事業化している米国の市場支配力は大きいようです。
パソコン向けの汎用ソフトウエアでも、米国マイクロソフトを中心に、米国企業が強い支配力を持ち続けています。日本は、付加製造技術で独自の利用技術や事業、市場を築くことができるのかが問われています。
今回の講演の冒頭に、モデレーターを務められた東京大学大学院経済学研究科教授の新宅純二郎さんが、3Dプリンティングが出てきた経緯や背景として、設計や製造・生産へのコンピューター利用技術の流れを俯瞰されました。「1970年代に米国が発明され登場した工作機械向けのNC(数値制御)技術の登場は、製造・生産現場の製造ノウハウを数値制御に置き換える技術改革だった」と解説されました。
以下、そのご解説のさわりです(壮大なお話なので、印象に残った部分です)。その後、CAD(コンピューター支援設計)やCAM(コンピューター支援生産)というコンピューター利用技術が、米国からまた登場し、設計と製造・生産のの技術者・現場をつなげます。この結果、FA(ファクトリー・オートメーション)などの実現につながります。最初は、米国でコンピューター利用の考え方が具体化され実用化されますが、日本の製造業の企業も必死にフォローし、部分的には設計・生産現場で巧みに使いこなします。
さらに「3D-CAD(3次元CAD)が登場し、設計と製造・生産現場がつながりました」と解説します。これ以前は、設計者の目指す意図を試作してみないと分からなかったものが、製造前に製品形状やつくりやすさなどを検討できるようになります。新宅さんは「つくりやすい設計が初めて可能になった」と説明します。
問題は、CAD・CAMから3D-CADなどの基幹ソフトウエアを米国などが産み出し、米国のソフトウエア企業が同ソフトウエア市場を支配していることです。ここまでが、3Dプリンティングが話題になる以前jの話です。
さて、今回の講師の東京大学生産技術研究所教授の新野俊朗さんは、まず「3Dプリンターという表現が誤解を招きやすい」と注意を喚起します。新聞やテレビなどがニュースとして伝えている「10万円程度の3Dプリンターでつくる個人嗜好の樹脂製品を個人的につくる話は、製造業系の事業化とは直接関係がない技術革新の流れだろう」と解説します。
新野さんが当該の委員をお務めになっている米国ASTM(American Society for Testing and Materials)という米国の工業標準を決める米国材料試験協会では、日本でいう“3Dプリンティング”技術を「付加製造(Additive Manufacturing)という表記で規格化している最中」と説明します。材料を付加する(積み重ねる)ことによって成形する技術で、3次元形状の数値データを基に作成する技術を指しているとのことです。
新野さんは「工業用の付加製造(積層造形)向け装置は、日本円換算で1億円程度と高いので、どんなビジネスモデルで何をつくるかという事業モデルがポイントになる」と声明します。
例えば、人間の歯並びの歯列矯正器具に適用した事例は、成功するビジネスモデルになるとみているそうです。人間の歯並びの歯列矯正器具は、その個人向けに20個から40個程度つくる必要があり、まさにオーダーメイド機器になっています。その歯列矯正器具を工業用付加製造(積層造形)装置を適用したビジネスは、1社が米国などの先進国市場を相手に事業を始めているそうです。この1社が全世界の市場を握れば、事業として十分に成立する可能性が高いとみているそうです。
同様に、人間の難聴者向けの補聴器や人工股関節の部品などの、究極のオーダーメイドの機器・部品になるために、「それぞれの1社が全世界の市場を握れば、事業化できる」と考えているそうです。その究極のターゲット部品は、再生臓器です。再生臓器は、個人向けのオーダーメイド“部品”だからです。
今回、日本が遅れを取る可能性として指摘されたのは、3次元形状の数値データを利用する3D-CADの基盤技術については、日本は利用していても、根幹を再開発する研究開発能力は持っているのだろうかという懸念でした。かなり、難しい問題です。
CADなどの一連のコンピューター利用技術を考えだし、事業化している米国の市場支配力は大きいようです。
パソコン向けの汎用ソフトウエアでも、米国マイクロソフトを中心に、米国企業が強い支配力を持ち続けています。日本は、付加製造技術で独自の利用技術や事業、市場を築くことができるのかが問われています。