大阪の市立高校で体罰による生徒の自殺事件が起こった。
悲しい事件で未来ある尊い命が失われたことに心が痛む。
この事件から体罰に関する議論が全国で巻き起こっている。
わが県でも教育委員会からの体罰禁止の通達が公立学校に出された。
先日もブログで書いたのだが、スポーツ(体育)教育についての議論が深められていないところで表面的な命令=「通達」を出しても事は解決しない。
私は私立高校で昭和48年から平成20年まで勤めた経験がある。
その中で同じバスケ部の顧問を30数年続けてきた。
バスケット経験は高校時代にクラブ活動をしただけで、大学では書道部だったし、高校の部活も弱く県大会の1回戦か2回戦で終わっていた。顧問も科学の教員でズブシロで殆ど部活には顔を出さず、部員だけで練習していた。もちろん外で!!
だからここには体罰はなかった。
中学ではバレー部だったが、先生は若く熱心だったけれど体罰の覚えは全くない。それより転校してすぐのクラスで担任からいじめられた。何故かつま弾きされ、ぶたれた。とうとう不登校になりかけた。家から学校に通うには大きな橋を渡らなければならないのだが、毎日その橋の途中で家に引き返していた。
助けられたのは新しくできた友人達で家に迎えに来てくれて一緒に登校するようになって助かった経験がある。教師の存在と責任の大きさがここにある。
バレー部では地区大会3位になることもあって勝つことの喜びも知った。部活出できた友情の深さ、濃さは今も消えない。
さて教員になった時、初め非常勤から出発したが、すぐ校長に申し出た。顧問がいないバスケ部の指導をさせてくださいーと。
しかし、バスケ理論何にも知らない判らない私は右往左往するばかり。連戦連敗。しかも100点ゲームばかり。
それでも常に生徒と一緒にコートを走り回った。生徒と一緒にすることに意味があると思っていた。
ずーっと1回戦ばかりが続いた。練習は指導できないので高度なメニューはなく、基礎練習だけだったが、それでも少しずつ強くなっていく。
よそのチームとの練習試合にも出かけて行くようになった。強いチームの顧問監督は見ていると厳しかった。すさまじい暴力を振るうコーチもいた。特に体罰で有名なコーチは部外者で座っている椅子を投げつけたりする人だった。
彼はその後生徒へのセクハラで逮捕され辞めさせられるという大きな事件を起こした。
しかし、クラブ指導では強い高校(中学)ではどこでも「体罰」はあった。いやある。そう断言する。「通達」が出たとしても終わらないだろう。
私も次第に「強いチーム」にしたいという欲求が強くなり、生徒の怠け、反抗、生徒同士の諍い、部員の不祥事が起こると1発頬を叩くことがあった。内部での揉め事を部員同士で収められない時にはキャプテンを殴ることもあった。
高々ベストエイトほどの実力しかないのに、部の活動が活発できっちり運営されていることだけは自慢だった。
付け加えると40台以降は生徒指導部に属し、生徒の非行との対応に追われる。生徒指導部の教師にはスポーツクラブ指導をしている教師がどこでも大半。厳しく強い指導が荒れを救う最短最速と信じた時代がある。荒れた生徒、触法犯罪を起こす生徒に民主的で優しい指導は届かないことが多い。
校外の生徒指導は管轄の警察生活安全課とのコンビで行われる。だから警官=刑事の指導を目の当たりに見ている生徒指導教員の口調はいつか刑事の言葉・口調になってしまうという側面もある。
今注目されているのは、運動部の指導だが生徒指導に光を当てたらまたびっくりするような事態が浮き彫りになるはずだ。
県内の私立高校の校長(生え抜きのー県からの天下りではない)にはバリバリの生徒指導部長経験者が多い。皆体罰経験者。私もそうであった。自分の経験に頬かむりして、体罰で子どもが親に訴え、保護者が学校に訴えてくるような場合は校長室に当該の教員を呼んで事情を聞き、注意し、時には処分を行った。
学校には法制度的システムがあり、学内文化的システムもある。若い教員で生徒指導ができない温和な教員は周囲から「甘い」と陰に陽に批判される。体罰も辞さない腹決めが要求される。
教室が荒れていると、授業が妨害され、まじめに学習しようとする生徒は担当の教員(教科の教員)、担任に強い指導を要求し親もしっかりっしろという要望が出される。
こういう内外のシステムの中で、自分の指導を見出さないといけないのだが方向性としては、自分の授業における実力を伸ばす努力をするか、安易に暴力的指導で押さえつけるかー医療ではこれをパターナリズムという。「俺の言うことを聞いていたら君らの人生のいい方向に連れて行ってあげるからー」
学問的に専門性を深めさらにわからない生徒をうまく理解させ、自己学習を深める方向に導いて行くには専門の知識を深めるだけでなく、青年心理も勉強、生徒の家庭での生育歴、生活環境を自分の足で家庭訪問を繰り返して確かめて行く努力も必要になってくる。
現在はこれが乏しくなってきていないかー世間でこういう風に騒がれれば騒がれるほど、だったら何もしない生徒指導にも深入りしない。家庭訪問にも行かない。クラブ指導なんて時間外だから拒否する。こういうことになっていないかー
こうなると学校は殺伐とした風景になる。これは教育空間ではない。
今必要なのは教育現場で先生達が裸になって本音を出し合い、話し合うことではないかー無能で現場知らずの教育委員会が上から冷たい禁止令を出したって事態は変わらない。
橋下さん、自分のラグビー部での体験をもっと深く抉って意見を言ってほしい。経験にベールに被せたまま義憤に乗って感情的な発言をしているように思えるのだが・・・
私も教育界のシステムから外れた今じっくり再考していこうと思っている。
長くなったけど誰も読まないないだろうなー
あっこれだけは言っておきたい。体罰を行って教師が伝えようとしたことが生徒や親に伝わらずに問題化した時には常に自分で覚悟して決して逃っださないこと。場合によっては教員を辞める覚悟はしていた。