ゲーテ詩集 (新潮文庫)ゲーテ新潮社このアイテムの詳細を見る |
思い出そう。うまく行っていた日々。自分は悶々としていた。永遠のものが欲しかった。永遠といえるものを手に入れたと思っていた。でも、人生の一つの選択肢をとることで、怯えの中で選択肢の一つを取ることで、もう一つの選択しを捨てることになるとは、思っても見なかった。いつも、そこにあったものがいまは、そこにあるが、ないという事実。
ことばの力によって、ぼくは、また自分をふるいたたせようとしていた。
ありがとう思い出たちよ。
あなたに出会う前の片想いの詩をまたここに思い出そう。
「新しい恋、新しいいのち」
~
心よ、わが心よ、どうしたというのか。
何がお前をそのように圧しつけるのか。
なんという異様の新しいいのち。
今までのお前の面影はもはや見るよしもない。
お前の愛していたものは皆消え失せた。
お前を悲しませていたものも消え失せた。
ああ、いかなればとてかく変わり果てたのか。
お前を限りない力でつなぎ留めるのは、
あの若々しい花の姿か、
あのいとおしい人の姿か、
真心とやさしい心に満ちたあのまなざしか。
ひと思いにあの人から離れ、
逃げ去ろうと心を励ましても、
たちまちに私の足は、
ああ、あの人の方にもどって行く。
断つによしない
この魔法の細糸で、
愛くるしい快活な娘は
私を否応無しに縛ってしまう。
~
新しく生まれ変わったという事実。楽しみも、悲しみも、苦しみも解き放たれ、新しい花によりそう心。
忘れ得ぬ美しき、けなげな花。
ありがとう。
私の心の奥であなたを私は、永久に愛する。
そして、新しい物語を紡いでいく。