この本も、授業にて使うので、レジュメ風に。
この本からわかることは、サルトルは生涯に置いて大きく二つの性格を生きてきたと云うことだろう。
まずは、個人主義的哲学に生きた時代と、社会への関わりを持ち、行動により自己を形成していくと説いた実存主義的な哲学を説いた時代の2つだ。
以下順を追って、本書の内容を追って行きたいと思う。
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*先頭の数字は本書のページ番号です。
【個人主義的哲学への時代】
12.サルトル=「関係」の哲学者
16-右眼の失明、斜視により、いやおうなく他者の視線を気にしなければならないように。(幼年期のいじめ)
20.
1923年,23歳の時 人生の伴侶 ヴォーボワールとの出会い
1933年,28歳 ドイツ、フッサールによる現象学を知る。
:意識がそのものに直接触れていると云う哲学を考え始める。
「意識とは世界との関係そのもの」という立場
30.
サルトル哲学は、閉じた内部ではなく、「外部」へ向かってのダイナミックな関係を重視する。
36.
自我の同一性への否定
:固定したものと云うより、そのつど移り変わっていく外部との関係性が自我であると捉えた。
1938年 念願の作家デビュー『嘔吐』発表
:むき出しの実存に触れることにより嘔吐観を催す少年ロカンタンの物語。
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怪物のような、やわらかくて、無秩序の固まり、恐ろしくて裸の塊
63. 「何か『がある』ということ自体が恐ろしく気味悪いものとして現れた」
→何か「がある」ということ自体(実存)には何の意味も理由もなく、「たまたまここにある」としか云えないことに気づいた。(ロカンタン)
実存、行動の無意味さ
個人の問題としての行動
【実存主義的哲学の時代】
~戦争体験を経て~
1940年6月 ドイツ軍の捕虜となる
個人主義的考えから人間の行動を重視する考えへ
小説『自由への道』戯曲『蝿』『出口なし』哲学書『存在と無』などの執筆
78.
『存在と無』について
関係としてのあり方、関係としての存在のありかた
cf.ハイデガー「世界-内-存在」-世界と関わりつつ存在する
83.
「世界と関わる」と云うことは、世界ではないと云うこと
世界との会い大に裂け目を作り出すこと(対自存在)84
この裂け目、隙間が「無」
112.
人間は根源的に自由-世界との関わりを自ら決定する自由
アンガージュマン:世界に能動的に関わっていくこと
116.
『出口なし』-他人のまなざしは、自分が何者であるかを決定し支配する。
120.
実存主義の流行
:今ここに現実に存在している個人の具体的な存在を出発点とする。
具体的な個人としての人間のあり方、世界へと関わる人間のあり方を問題とした。
124.
「実存が本質に先立つ」という言葉について
:神により、「(人間とは、)こうこうこうあるべきである」(本質)と決められているものではなく、「行動の中で、自分が『何であるか』を決めていく」
行動により、少しずつその性質を定義していく。
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「実存主義的道徳」
:道徳はあらかじめ決められて、あるものではなく、作るものだ。
-自分の行動を選ぶことは、人類全体の問題だ。
[アンガージュマン(社会参加)]について
人間は自由だが、誰しも自分の生きる時代の状況に拘束されている。
-どのように社会に能動的に関わっていくかがアンガージュマン
146.
サルトルとマルクス
-戦前はある程度、距離を置いていただが、戦後は著しく傾斜
「マルクス主義はわれわれの時代の乗り越え不可能な哲学だ」とまで言うように
170.
共産党との関係の戸惑い-ハンガリー事件
:フルシチョフのスターリン批判に端を発した反ソ暴動とソ連軍の介入と、フランスのそれへの賛成
サルトル実存主義によるマルクス主義の再構築の試み
:スターリニズムと後期マルクスへの批判
[晩年のサルトル]
⇒文学への絶望感と政治的急進化
220.
1964.4「飢えた子供を前にして『嘔吐』は何の役にも立たない」(ル・モンド紙へのインタビューで)
ノーベル文学賞の辞退も
232.
1968.5 五月革命-学生運動を発端にして起こった社会運動
-資本主義打破と既成の左翼批判(スターリニズム批判)
サルトルのフランス共産党批判
1968.8 チェコ事件=ソ連軍によるチェコスロバキアの自由化阻止
→サルトルのソ連批判と決裂
1980.3月
『いま、希望とは』の発表
「世界は醜く、不正で、希望がないように見える。といったことが、こうした世界の中で死のうとしている老人の静かな絶望さ。だがまさしく、私はこれに抵抗し、自分ではわかっているのだが、希望の中で死んでいく。ただ、この希望、これを作り出さねばならぬ。」
1984.4.10
肺水腫により入院
4.15
75歳で他界
☆サルトルと最後の知識人(論)
:ただ蛸壺的に研究をするのではなく、幅広い知識により、世論を導こうとする。
cf.専門家
⇒内部から外部へ、個から全体へ関係し続けることがサルトルの思想であり、生き方。