○ 私は、最近の新聞記事しか読んでいませんが、統合が暗礁に乗り上げた原因を、外部から勝手なコメントをすれば、以下のような感じでしょうか。
・ 原因としては①ボタンの掛け違い、②統合手法の誤り、③意識・思惑の違い、④吸収合併されるペンタックス(消滅会社)側へのHOYAの配慮不足、⑤ペンタックス経営陣のコミュニケーション不足、及び⑥ペンタックス経営陣の合併に対する無知だと思います。
○ もし、私がこのM&Aの設計者なら、違った手法を取ったでしょう。やり方としては、両社で株式移転して持株会社を作り、両社とも一旦100%子会社にする。2-3年かけてよく両社の社内を見て重複事業部門の統合を吸収分割等の方法でする。またこの2-3年で両社の人の交流を図り、あわせて給与・退職給付制度などの統合を目指します。今の合併は、HOYA側で総会決議の不要な簡易再編ですが、この場合はHOYA側でも総会の特別決議が必要となりますけれども。
○ 両社の基本合意(H18.12.21公表文)によれば、役員人事・合併比率・組織再編計画等迄記載してあります。この公表はちょっとまずい感じです。こんな発表ではうまくいくものも、うまくいかなくなります。一応基本合意の冒頭には、「対等の精神」というリップサービス的な言葉は記載されていますが、やはりHOYA側としては、ペンタックスを吸収合併するという意識、取り込む意識が強いのではないでしょうか。
・ 基本合意は、統合に向けた意義・プラスサイドの面を強調して、社内外に会社統合への賛同を醸成する事が重要です。本音が出そうな役員人事・人数や合併比率の部分は、少し曖昧にして、4月に締結予定だった合併契約書に記載すれば良いことですね。今回の件は、消滅会社側の役職員の気持ちを考えないドライなやり方がうまく機能しなかったと言うことです。
○ 重要なことは、吸収合併される側の、顔を立てる事。暖かい配慮を行わないと日本の古い体質のメーカの場合は、うまく行かないということです。また拙速に走っては行けません。即ち、2-3年の長さで考えないといけません。2-3年もたてば消滅会社側は、いつの間にか、バラバラにされる例が実は多いのですが、理想的には、消滅会社側の役職員のモラルアップを計り、これを刺激としてHOYA側も、ますます頑張るというような雰囲気というかモラル形成を目指すということです。(本当にそうなれば良いのですが、実際は大半がそうはなりません。しかしHOYAとしては、少なくとも1-2年はそのふりをしないといけないということです。
○ 役員人事が最悪です。基本合意の発表文によれば、社外取締役5名、社内取締役5名(HOYA3名、ペンタックス2名)とされています。今回社長を解職された浦野氏が会長予定と記載されています。後一人は、今回専務を解役された森専務がなる予定だったのでしょう。他の6人の役員は取締役解任・切り捨てですね。これじゃ反乱が起こりますよね。今回の取締役会での解職・解役劇で、5人(+みずほ出身役員1人)の鬱積・蓄積した恨みが噴出したのかもしれません。HOYA(=委員会設置会社)側は、現在の社外取締役5名(IBMの椎名氏、キッコーマンの茂木氏、日産の塙氏、リクルートの河野氏、通産出身の児玉氏→米国式のドライな発想をする人たちだと思いますね)と社内取締役3名で、そのままですからね。HOYAももう少し、ペンタックスの役員のメンツを立てないとね。少なくとも統合して暫くの間はね。
・ ペンタックスの今回の取締役会では、解職された社長が発言して、引き続き「統合検討する」旨の決議がされたようですね。株主への配慮もあるでしょうけど、5人組も後ろめたさがあったので、この決議がされたのだと想像します。というのも、先の12月の基本合意のときに、当然取締役会が開催されて賛成決議がされている訳ですからね。そのとき、この5人組はそのとき何をしていたのでしょう?それ以前から統合の検討作業に加わっていた人(今度の社長)もいるとの事なのにね。また取締役会できちんと議論したのでしょうか。あれよあれよという感じで、社長主導の役会で押し切られたのでしょうか?
・ いきなり合併というのは良くないですね。いろいろ問題が発生します。この点については、このBlogで先に言いましたので、そちらをご参照下さい。
HOYAは委員会設置会社ですし、ペンタックスは地味でまじめなメーカという感じですので、会社の組織体制・社風・文化がかなり違うでしょう。いきなり水と油を混ぜてはいけませんね。ペンタックスは12月のときに、経営陣はきちんと議論したのでしょうか?よくコミュニケーションしたのでしょうか?多分、しなかったでしょう。納得性がないまま進んで、不満が蓄積して今回爆発した感じです。
http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070321
○ 合併には、光の部分と影の部分があります。特にペンタックス側に影の部分が出てきます。今回は6人の取締役(+HOYAは委員会設置会社なのでペンタックスの監査役も全員)が退任予定となりましたが、それ以下の執行役員や部課長クラスも「冷や飯組」がやはり大量に発生します。12月の時点で、HOYAの役員になる2人は除いて、その他役員は、そういった事をきちんと認識しなかったのでしょうか。ちょっと鈍感な気がしますね。
○ いずれにせよ、これからどうなるのでしょう。一旦「けち」がつくとなかなかうまく進みません。統合検討等と言ってごまかしていますが、合併の破談はときどき起こります。
しかし、2-3年後、もしペンタックスの業績が芳しくなく落ち込むと、惨めなことになる可能性もないとは言えません。将来の事を考えると、事業的にはやはり統合が良いのではないでしょうか。そのためには、HOYAがペンタックスをもっと尊重する姿勢と誠意を示し、ペンタックスがこれに答えて統合を目指すのが良いのではないでしょうか。