○ 日経新聞によると、ペンタックスはHOYAのTOBを真摯に検討するが60日間猶予を求める模様と報道されています。両社首脳会談後、HOYAの担当者は「協議の進め方について真摯な提案をもらった。詳細は話せない」と述べ、また「HOYAの鈴木代表は持ち帰って検討する」と答えたということのようです。 一方、ペンタックス側は「TOBの提案について回答したが、内容は話せない。HOYAとは統合について協議を続けていく」と言っています。ペンタックスとしては、ともかく持久戦に持ち込んで、じっくり考えるとともに、関係者の理解を得て進めようということだと思います。
○ TOBならいつでも出来ますからね。HOYAもTOBをやるにしても6月末頃から行うと言っていましたし、別に焦る必要も無いでしょう。これは定時総会で定款変更してから行うという意味でしょうから、HOYAとしては、予定通り定款変更(目的の追加等だと思いますが)はするのではないかと思います。ペンタックス側の定時総会は、合併契約承認決議がなくなりましたね。
・ HOYAの23日の取締役会でTOBを決議すると、ペンタックス側がその賛否を表明しなければならなくなりますね。HOYAはペンタックス経営陣の意向を尊重しない、有る意味で敵対的TOBというのも、まだまだ日本では印象が悪いし、ペンタックスの従業員のモラルへの悪影響等が懸念されます。「統合を継続協議」ということになるのではないかと予想します。
○ ペンタックス株式の約24%を保有するファンドであるスパークスはTOBに好意を示すと同時に、ペンタックスには「HOYAとの話を反古にするのであれば、HOYAの提案と同等以上の株主価値向上提案をHOYAの提案と同等のスピード感でもって市場に示す義務が現経営陣にある」と言っていましたね。スパークスの狙いは、保有株の下落による損失を回避すると同時にリターン回収のため一発で売却できる絶好の機会を確保することにあるとみられますね。24%も持ってしまうと売るのも大変ですからね。
○ 17日にスパークス幹部はペンタックスの綿貫社長と会談しました。内容は明らかになっていませんが、ペンタックスからは、「方向性としては変わらないが、関係者とも十分協議して企業価値向上を目指すので、ちょっと待ってくれ」というような事を伝えたのかもしれません。スパークスの運用スタイルは、村上ファンドの様にインテリやくざの脅迫ではなく「投資先企業との協調対話を重視」しているようですので、ペンタックスの対応に少しは理解を示したのではないでしょうか。いずれにせよスパークスは24%を保有する大株主ですので、その意向が、今回の統合の行方を左右しかねないですね。
【スパークスの行動原理】ペンタックスとしては、自社の経営・方向性に大きな影響力をもつスパークスの行動原理をやはり理解しておく必要があるでしょう。
・ スパークスは、狩猟民族です。獲物を追って動きます。獲物を捉えて食べてしまうと、次に食べ物を探すために動きます。どこに動けば次の獲物が見つかるか、見つけて、うまく食べるにはどうすればよいか知恵を働かせます。即ち、しっかり儲かるチャンスがあれば売り飛ばして逃げて、次に行ってしまうと言うことです。一方、ペンタックスは農耕民族です。畑を持っています。畑を一生懸命耕して優良な作物を作ろうとします。医療関連事業などは上等な耕作地でしょう。農民は、仮にやせた土地を持っていても、簡単に耕作放棄して逃げるわけには行きません。知恵を出して耕さないといけません。今の事業を整理統合・集約も行いながら充実・拡大・進化させるしか手がないですね。
・ ファンドは株主価値を追求します。株主価値即ち、株価の上昇が価値です。そして上昇すれば売却します。一方ペンタックス・HOYAは、企業価値の増大を追求します。企業価値が上がれば、一般的には株価も上昇しますが視点が違います。
・ ファンドの後ろには、投資収益の極大化を求めるがめつい投資家がいます。これの要求に応えないといけません。ファンドはRisk Takeして投資をします。そして売却してTakeします。一方HOYA・ペンタックスは、顧客に喜んで貰える製品・サービスを提供します。そういった製品・サービスをGiveして、対価を得ます。即ちGivenです。スパークスは、Risk Take & Takeで動きますが、ペンタックスなどはGive & Givenがビジネスの原理です。
・ ファンドは短距離型ですが、メーカはマラソン型です。HOYAがペンタックスを統合すれば企業価値が上昇するでしょう。従い、企業価値が上昇するなら、スパークスはペンタックスの株をTOB等で売却せずに長く持っておく方が理屈にかなっています。しかし、ファンドは近視眼的ですからTOBに応じて利益の実現を目指します。メーカは研究開発計画を立てて要素技術の丹念な開発・積み重ねからスタートします。5年―10年の長さで事業を育てないといけません。
・ ファンドは単純利回りの世界。メーカは多面的・長期的な複雑系です。ファンドは利回りとかIRR(内部収益率)で何%達成したかという尺度が一本です。これの極大化を目指します。しかし、メーカは、現在は赤字でも将来大きく成長が期待できる事は育てないといけません。またメーカのエンジニアは、者作りの喜びがあります。自分の作ったものが人の役に立つ、社会に貢献する喜びがあります。数字だけの世界ではありません。
ペンタックスの経営陣にとっては、ファンドは別世界の文化と行動様式をもっています。ファンドが有力株主となっている以上、その行動原理をよく理解しておくのがよいと思います。