東証は2013年10月より従来の開示ルールを変更して「MBO等に関する適時開示内容の充実等について」(東証上会第752号)を上場会社に義務付けました。これに従い、上場会社がMBO等に関する(特に株価等の金額について)意見表明を行う場合や上場会社が支配株主等と組織再編を行う場合にはバリュエーションの前提等の開示が求められます。MBOを行う当該会社の経営陣あるいは支配株主と、少数・一般株主との間に利益相反構造及び情報の非対称性が存在するというのが理由です。これにより、MBO等にあたって意見を表明する場合に第三者算定機関から取得したFairness Opinionを取得するケースが増えてきていますね。
上記の東証の開示ルールの変更は、アメリカの猿真似ですね。即ち、 米国におけるMBO取引では、「Fairness Opinion」の取得とその内容の開示が求められています。「Fairness Opinion」は、「企業価値・株式価値算定書」等と異なり、第三者が組織再編やM&Aの当事者に対し、買収・売却価格や合併・交換比率について、財務的見地から公正であることを意見表明するものですね。MBO取引のみならず買収・売却案件等でも、第三者からFairness Opinionをとる例が徐々に増えてきています。しかし、問題は客観的な第三者の意見表明ではないことですね。
例えば、トヨタ自動車が関連会社の関東自動車工業を子会社するときに、身内の企業間のM&Aなので、公正妥当であることを示す必要があるからですね。Fairness Opinionを出したのは、関東自動車のFAである三菱UFJモルガンスタンレー証券ですね。また、住友商事等がジュピターテレコムの株券等に公開買い付けを行ったときは、ジュピターテレコムを、FAとして三菱UFJモルガンスタンレーを起用しました。同じFAから株式価値算定書とフェアネスオピニオンを取得しています。
皆さんは、こういったFairness OpinionがFairだと思われますか?僕は、マッチポンプというか子供だましの、米国の悪弊の追随だと思いますね。即ち、MBOの場合は、当事者の会社もFAもマッチポンプだということです。例えば、経営者がFAを起用します。MBOは、少数株主・一般株主とは情報格差のある、会社の内部情報熟知者が、自ら買収価格を決めて、あるいは支配株主と、少数株主を無視して、その価格で買収・売却するのは不公正であるという考え方に基づいています。従い、第三者であるFAを起用して適正を装う買収価格を算出させます。その上同じFAにFairness Opinionを出させます。上場企業のMBOは、株価がありますので、市場株価分析が納得の行く一つの価格ですね。経営陣が、情報操作をしない限りですね。しかし、支配株主と株価を決めても、それは資本の論理ですね。少数株主保護等といわれていますが、所詮は持株比率が多い株主をどれだけ抑えられるかですね。それで勝負ありです。少数株主には、裁判で争う道も開かれているのですからね。
FAは、自ら株価算定して、自らが算定した株価は妥当で公正であるといいます。自分で評価額を計算しておいて、経営陣をその価格に誘導しておいて、その会社役員の行った価格の経営判断は公正であると意見表明するのですね。こんな茶番劇がありますか!子供だましですよね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます