今回は、米国企業の売却案件での、FAと弁護士の能力についての話です。米国企業の売却では、米国企業はSeller’s Rep.を起用しますし、上場企業がらみですと一般的に入札になりますね。この場合を想定して、日本のFA (Financial Advisor)と一流と思われている法律事務所の弁護士の能力についてのコメントです。
FAは、投資銀行のM&A部門とブティックのアドバイザーがいます。一般的に金の世界の人ですから一生懸命やってくれるところもありますが、能力的には今一が多いですね。投資銀行の場合は、業界の証券アナリストから業界事情・当該対象企業のことも聞けるのですが(ファイアーウォールとか言っている場合もありますが、それは建前ですね)、ブティックのM&Aアドバイザーからは業界情報は聞けません。その割には、報酬体系は、投資銀行と同じです。精緻な計算・分析はしてくれますが、所詮は計算係&雑用&(監査法人等を含めた)取り纏め係です。売り手Rep.が有力投資銀行の場合は、こちらも米系の有力投資銀行を起用しましょう。米国New Yorkで、お互いM&Aを遣り合っていますので腕力がありますし、貸し借りもあるでしょう。ブティックのアドバイザーは、言って見ればちびっ子ギャングですね。腕力がありません。大きなM&A Dealのときは腕力が要ります。
顧客は、FAの言うことを真に受けてはいけません。リスクも負いません。勿論入札では勝たないと意味ありませんので、「勝てる値段」を算出しようとします。EBITDAのMultiple + アルファですね。こんな計算簡単ですが、あたかもプロの仕事の様に見せかけるのは得意ですね。EBITDAのMultipleの上限に、DCFの計算遊びの数字を持ってきて、あたかも適切なValuationであるかのように装います。それと注意点は、FAは自分の意向で案件を進めます。従い、顧客には必ずしも本当のことを言わない場合があります。本当は自分の意向なのに、売り手・売り手Rep.がこういっていると言って、案件を進めようとすることもありますね。要注意ですね。
弁護士は、普通パートナーを指揮官として、3-4人のチームを組みます。顧客との会議では責任者が発言しますが、本当に顧客のためを考えた提案をする弁護士は、殆どいません。M&A専門と法律事務所の経歴に記載してあっても、顧客にとり優秀な人には、なかなかめぐり合いません。
売却案件では、売主側がDefinitive Agreement (DA)のドラフトを出してきます。当然売主に有利な条項(手続き的な部分を除く)ばかりですし、中には結構trickyな条項をありますから注意が必要です。日本側弁護士が、このdraftのmark-upをしますが、弁護士を頼りにしてはいけません。弁護士の中には、この条項は財務関連・税務関連だから監査法人に聞けとか、修正が多いと不利に扱われますよとか、。カウンターしないほうが良いですよ等と、どっちの向いて発言しているのか疑いたくなるような弁護士もいます。
責任者の弁護士は、DAドラフト等読まずに、会議で発言します。DAを読んで修正するのは若手の仕事だからですね。条文のHeadingを見れば、大体何が書いてあるか等すぐに分かりますからね。ですから、時々DAに照らせば、ピンボケの発言をします。DAに記載のRep.& Warranty以外は、「No Warranty」という条項があっても削除しません。また、一流法律事務所だからと言って、きちんとカウンター・修正をするわけではありません。全て、細かい指示をしないと、後で落とし穴に嵌められます。また契約交渉でも注意が必要です。私は、かつて米系法律事務所の弁護士2人(Partner & Associate)と一緒に、相手と交渉をしたことがありますが、2人の弁護士は、ずっと黙って座っていました。お金泥棒ですね。
FA&弁護士とも、知見のない分野があります。それは従業員の福利厚生・退職給付の分野です。売り手が、従業員の勤務年数通算の規定をDA draftに入れてきても、全くその重要性に気づきません。当然、何の指摘もない。こちらから逐一指示を出さないといけません。
要するに、FAも弁護士も、素人の人から見れば、頼りがいのあるように見えるのですが、通り一遍で、案件が成立すると、責任も負わずに去っていきます。後処理は買収した企業がしなければなりません。
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