
第2次世界大戦後、ドイツが東西に分断されベルリンも分断された。そのベルリンで「ベルリンの壁」が建設される前のころの話である。1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルトは、列車に乗って墓参りのために西ベルリンに向かう。とは言え、墓参りは口実である。本当の目的は西側の映画を見ることだった。映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を見る。2人は自由を求めるハンガリー市民に共感し、義憤にかられる。純粋な哀悼の心から、クラスメイトに呼びかけて2分間の黙祷をする。しかしその行為が学校の怒りを買い、さらには国家的な問題とまで発展していく。犯人探しが始まり、仲間を裏切りたくない生徒たちと、体制の維持と対面のために厳しく対応する大人たちの深い対立の間で、悲劇的な出来事も起きてしまう。生徒たちは苦悩の中で決断をする。
言いたいことも言えない社会の中で、自分の意志で行動することの意味を問う作品である。生徒たちの行動は勇気ある行動であるが、多くのものを犠牲にしなければならない。その姿を見る家族の心も苦しい。登場人物の心は引き裂かれ、その引き裂かれた心の中で、行動していくしかない。それぞれの人物がしっかりと描かれており、観客は登場人物と同じように心が引き裂かれていく。だからこそ大きな感動を得る。
言いたいことが言えないという状況は、現在の日本でも感じるようになってきた。この映画は勇気を与えてくれる。
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