作・演出 赤堀雅秋
出演 向井理、田中麗奈、大倉孝二、大東駿介、横山由依、駒木根隆介、森優作、福田転球、銀粉蝶、秋山菜津子、平田満、赤堀雅秋
シアターコクーンで『美しく青く』を見た。現代の様々な問題が日常の生活にさまざまな形で影響を及ぼし、人々がドラマを形成していく様子が描かれています。おもしろい作品だった。
地方の海沿いの町が舞台である。サルが山から下りてきて食べ物をあさる被害が起きている。人にも危害を加えるようになってきた。村の男たちは自警団を作って守ろうとするがなかなかうまくいかない。そもそもサルが人里に降りてくるのは人間が環境を壊したからである。サルを捕まえようとする自警団と、人間の愚かさゆえに人里に降りるサルに同情する人との諍いも表面化する。
主人公の青木保はその自警団のリーダーである。家には認知症の母がいる。さらにはかつて何らかの不幸があったことがにおわされる。これは次第に東日本大震災で娘が津波にさらわれたのであろうということが観客にわかってくる。ただしそれは明確に語られることはない。主人公の妻は生活に疲れはじめ、自身の言動に責められることになる。
さまざまな事情が人々を苦しめながらそれでも生きていくしかない。この作品では人間の「生活」がしっかりと描かれている。
ただしあえて言わせていただければ、ここまでしっかりと描かれているのであれば、あえて東日本大震災を下敷きにする必要はないのではないだろうか。東日本大震災は日常を特殊なものにしてしまう。
私たちは苦しい日常を必死に生きていくしかない。それはいつの時代でも同じなのだ。この作品は十分描いている。だから逆に東日本大震災はあざとく私には思えた。
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