シス・カンパニー公演、ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出の『桜の園』を見ました。チェーホフの世界が見事に再現された舞台でした。
ロシアの富豪の家が舞台です。その家は「桜の園」と呼ばれる桜の木がたくさん植えられている大邸宅です。しかしその富豪は没落しています。もはや「桜の園」を売ってしまうしかない。その重大性が女主人ラネーフスカヤはわかっていません。なんとかなるんだろうと他人事のような反応しかしめせません。その家の住民はみんな事の重大性がわかっていないのです。このあたりの描写がケラの演出は見事です。そもそもケラの芝居はそういう作品ばかりです。事態が深刻になっても、登場人物の会話はその重大性とは別次元で進んでいくのです。
重大性を理解しているのは、この家の元農奴の息子で、今は商人となったロパーヒンです。結局、この家を買うことになります。その時、初めてラネースカヤは事の重大性に理解できるのです。とは言え理解できたからと言って変わるわけではありません。やはり、何とかなるという雰囲気なのです。
事態の現実を人間は頭では理解できても、心では理解できないのかもしれません。それは不幸なことでもあり、幸福なことなのかもしれません。
いい芝居でした。
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