天王洲銀河劇場でこまつ座の『組曲虐殺』を見ました。こまつ座らしくしっかりとした安心できる舞台で、しかも飽きさせることなく3時間を超える舞台を時間を忘れて見ることができました。しかし、内容は重く苦しいものです。
小林多喜二を主人公とした演劇です。小林多喜二は「あか」として当局にマークされています。そんな小林が当局から逃げ続け、最後まで抵抗する姿が描かれます。しかし、そこに描かれるのは残酷なシーンではありません。小林と関わった人々の人情が主として描かれるのです。だからこそ小林のつらさが観客に届く。様々なことを犠牲にしながら、仲間のためには破滅の道を進まなければならなかった小林の心が観客に伝わります。
最近の日本は本当に言いたいことが何も言えません。言いたいことを言えばネットで叩かれ、無視され、いじめられます。生き延びるために「勝ち組」につき、にやついている人間ばかりです。戦時中と通じます。
一番いけないことは自分で考えないことです。自分で考えることができる人は自らの行動や発言を反省します。しかし、彼らは自分の意見が他人の意見の受け売りなのに自分の意見だと思い込んでいます。だからもはや歯止めがききません。しかしこの芝居に出てくる人たちは考えています。警官役の2人も考えます。だから苦しみます。この苦しみも観客に伝わります。
もしかしたら、当時よりも現在はひどい状況なのかもしれないと感じてしまいます。井上ひさしらしいすばらしい舞台でした。
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