昨4月8日は島津法樹氏のギャラリートークがあるとのことで、出かけたかったが生憎所用にて参加できず過日観覧した。朝鮮陶磁と安南陶磁については何点か見るべきものあり。東南アジア陶磁は幅広く各焼成窯あたり1-2点程度で食いつき足りなかった。
場所は出雲文化伝承館で、地元の庄屋の建物が移築され、その蔵が展示室として用いられている。
先に記したように、朝鮮・安南陶磁を除きやや食い足りなさを感じたが、次のパヤオ黒灰釉掛分印花象瓔珞文大壺は優品で且つ瑕疵も見受けられない素晴らしいものであった。
(出典:陶磁展図録より)
キャップションにはパヤオ窯と記すが、残念ながらパヤオ諸窯の窯址や物原からは、この種の陶片は出土していない。さらにこれと同種の陶片はサンカンペーン窯やナーン窯からも出土しておらず謎の大壺の一つである。北ラオス説はアデレード大学のドン・ハイン教授が説くところであるが、これも同種の陶片が北ラオスの窯址からは出土していない。
当該ブロガーのタイ人師匠はサンカンペーンと宣るが、上述の如く証拠はない。ナーンのジャーマナス古窯址より写真の象の印花文と同形状の文様をもつ陶片が出土しており、ナーン窯の焼物の可能性が大きいが、写真の四弁の花卉文、ピクン花卉文、ジグザグの瓔珞文及び象文様の組合せの陶片は出土していない。従ってナーンの可能性は高いものの、断言できない状況である。
結局、北タイでは大方の窯址が発掘されているが、未だにこの種の陶片が出土しない現状から推察するに、未だ謎の窯址が存在する可能性が残されている。
<了>