先ず、英字書籍「Ceramics of Seduction」に掲載されている写真を御覧願いたい。これは、サンカンペーンの「打ち刷毛目」ではないか?
刷毛により白化粧された、サンカンペーンの鍔縁盤である。しかしながら、所謂カべットには放射状の筋が表れている。この放射状の筋を持つ盤は、サンカンペーンには多い。これは鎬文に似ているが、純粋な鎬文ではなく疑似鎬文である。その疑似鎬文の盤は、別途紹介する予定であるが、ここでの話題は上掲写真の刷毛目文様についてである。
この手の刷毛目文様を、九州の小鹿田皿山や小石原皿山で云う「打ち刷毛目」であろうが、果たしてそうであろうか?・・との疑問がないでもない。その疑問とは・・・、
1.白化粧に意識するか、しないかは別として、刷毛目が現れるのは磁州窯からであるが、そこに打ち刷毛目は見ない。
2.高麗朝末期、李朝初期の14世紀半頃に刷毛目茶碗や粉青沙器が発祥するが、打ち刷毛目は見当たらない。
3.古武雄と呼ばれる松絵文二彩唐津がある。それは壺などの胴に白化粧し、そこに刷毛目とニ彩で松の絵堂々と描いている。その初出が何時であるか知識を持たないが、焼物の発祥そのものが、16世紀後半から17世紀の初めであることから、それを遡ることは有得ない。しかし、そこには「打ち刷毛目」は見ない。
4.小鹿田皿山や小石原皿山の「打ち刷毛目」はせいぜい、大正末期から昭和初頭からである。
5.そのような「打ち刷毛目」の装飾技法が、14世紀のサンカンペーンに現れる意外性は何であろうか。
写真の盤が「打ち刷毛目」であるかどうか、両皿山の陶工に聞いてみるのが良いであろう。しかし、九州は遠い。ネットで種々検索すると、田舎にもあるではないか。それは、石州宮内窯と云う。過日訪ねてみたので、次回それについてレポートする。
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