<続き>
Don Hienはオーストラリアの著名な東南アジア陶磁研究家であるが、彼によると大胆にも窯業技術は無視して、東南アジアの横焔式単室窯のルーツは中国に在り、ベトナムを経由して伝播したと結論付けている。奇しくも北タイの印花双魚文の系譜は、この窯様式伝播論に重なっている。
それでは龍泉窯、同安窯、耀州窯の双魚文と北タイ、中でもパヤオとサンカンペーンの文様の関係を探ってみたい。先ず龍泉窯である。
(3番目の写真は2番目の盤の見込みを拡大したものである)
3事例の写真を掲載した。いずれも龍泉窯青磁貼花双魚文であるが、よく観察すると文様形状に違いを認めることができ、年代の前後関係か窯元の相違による違いと思われる。但し3事例共に尻鰭は上方に跳ね上がっているが、その形状は孤を描く尻鰭(2事例)に対し、一つの事例は直線状に跳ね上がっている(2番目、3番目写真)。鱗は2事例で丸い形状、1事例が格子状である。また3事例共に背鰭は1箇所、腹鰭は2箇所である。
次は同安窯である。Kriengsak Chaidarung氏は、別に紹介した著書「陶磁器・パヤオ」で、興味深い盤片を紹介しておられる。それは元時代の福建省同安窯にて焼成された、青磁印花双魚文盤片だという。先ず写真を紹介したい。
写真の解像度が低く、印花魚文の詳細が分かりにくいが、腹側の鰭が2箇所ある。背側の鰭は残念ながら分かりにくい。このKriengsak Chaidarung氏の記述に、驚きを禁じ得ない。上の写真の説明文を何度も読み返す。下の棒線部分は、タオ・トンアン(窯・同安)と記され、同安窯産となる。
この印花双魚文盤片の説明書きを翻訳すると、青磁釉のかかった双魚文盤で、元時代の福建省同安窯にて焼成された。ウィアン・ブア窯群とチェンマイ県のサンカムペーン窯群で作られた皿と非常によく似ている・・・となる。この解説に驚きを禁じ得ない。当初誤記であろうと考えたが、先述のように、これを補完する文献なりHPが存在し、信憑性はそれなりと考えている。
<続く>
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます