ピーターコーン祭りが何時から始まったのかを知らないが、今年も7月7日から9日の予定で、ルーイ県ダンサーイ郡で催行されると云う。ピーターコーンとは、ピー:精霊、ター:目、コーン:仮面であり、精霊の仮面祭りということになる。その仮面は”目”を強調したものである。
タイ政府観光庁HPより転載
タイ政府観光庁のHPによれば、釈迦の前世であるヴェッサンタラ王子が、山から都へ戻る際に、別れを惜しんだ森の獣や精霊たちが、後について行ったというジャータカ(本生譚)に基づき、収穫前の雨乞いや厄払いの目的があるという。つまりは豊穣祈願祭である。
東南アジアや日本を含む東アジアでは、古来仮面を被ることは、被る本人の人間性が消えて、別のシンボリックな存在になるという。ピーターコーン祭りで、仮面を被ることにより精霊や神になることを意味する。
この種の仮面は、日本の弥生時代にも存在していたようだ。奈良・纏向遺跡から木製仮面が出土している。岡山・新庄尾上遺跡からは鳥装の巫者を線刻した絵画土器片が出土している。古来、仮面を被って登場するのは来訪神で、民族のトーテム信仰を思わせるものがあり、鳥が始祖神として来訪する民族もある。
纏向遺跡出土仮面(レプリカ)
新庄尾上遺跡出土土器片
弥生人も仮面を被り、異形の神(精霊)に扮して悪霊や穢れを払い豊穣を願ったのである。
このような風習は現在でも継承されている。中国貴州省のミャオ(苗)族は、マンガオと呼ぶ来訪神の祭りを行っていると云う。それは写真のような仮面を被っている。
ミャオ族の来訪神・マンガオ 荻原秀三郎著「神樹」より
同様に我が日本でも南海の悪石島のボゼ祭りに、ボゼとして盆の最後に登場する来訪神がいる。やはり悪霊や穢れを払い、祭りが終わるとボゼの仮面は邪気とともに土に還るとのことである。
ボゼ 鹿児島県観光サイトより
ピーターコーンもやはり来訪神で精霊であったものが、仏教国ルーイ県でジャータカと習合したものと考えている。
<了>
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます