ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

永吉ダム

2022-06-03 20:00:00 | 鹿児島県
2022年5月22日 永吉ダム
 
永吉ダムは鹿児島県日置市吹上町永吉の永吉川水系二俣川にある洪水調節・灌漑目的のロックフィルダムです。
永吉川流域には水田が広がる一方、河川改修は手つかずで洪水被害が絶えませんでした。一方丘陵部の畑地帯は透水性の高いシラス台地が広がり利水に乏しいため生産性が低く、灌漑設備の整備が強く求められていました。
そこで鹿児島県は1970年(昭和45年)に農水省の補助を受けた県営防災ダム事業・かんがい排水事業・畑地帯総合土地改良事業永吉地区に着手、その中核施設として1979年(昭和54年)に竣工したのが永吉ダムです。
永吉ダムは永吉川流域の水田約200ヘクタールの農地防災および約250ヘクタールの畑地への灌漑用水の供給を目的としており、当初は吹上町が、その後の町村合併により現在は日置市が管理を受託しています。

永吉ダムはロックフィルダムとしては珍しい傾斜コア方式を採用しています。
ダムは透水性の高いシラス土壌に位置しており、止水処理と同時に上流側の盛り立てが可能な傾斜コア方式が採用されたようです。

永吉ダムにはダム右岸を通る県道296号田之頭吹上線を使ってのアプローチとなります。
ダムの中段まではロック材が積まれていますが、最上部表面はコンクリート処理されています。
写真の黒い部分がコンクリート。


右岸ダムサイトの事業説明板。


ダムの説明板
構造や諸元がわかるのでこういう説明板はありがたい。


右岸の洪水吐と上流面。


洪水吐斜水路。


横越流式洪水吐。
側面の苔が朝日に輝いて美しい。


ダム下で洪水吐と放流路が合流します。


放流設備をズームアップ
河川維持用バルブと畑地かんがい用バルブ2条を備えています。
今回は後者から放流中。


ダム湖は有効貯水容量99万6000立米。
このうち畑地かんがい容量分31万6000立米が貯留されています。
貯水池左岸(向かって右手)に取水設備があるんですが、水中に没して見えません。


左岸高台から俯瞰できます。
ダムは緩やかに湾曲し、下流面上部のコンクリート部分の黒が際立ちます。
対岸洪水吐右手に管理事務所があり、裏手からインクラインが伸びます。


ダム湖上流に架かる赤いトラス橋『永吉ダム橋』。


橋からは正面にダムの上流面が見えます。


(追記)
永吉ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2872 永吉ダム(1829)
鹿児島県日置市吹上町永吉
永吉川水系二俣川
FA
37メートル
148メートル
1174千㎥/996千㎥
日置市
1979年
◎治水協定が締結されたダム

川辺ダム

2022-06-03 16:00:00 | 鹿児島県
2022年5月22日 川辺ダム

川辺(かわなべ)ダムは左岸が鹿児島県南九州市川辺町清水、右岸が同市川辺町神殿の二級河川万之瀬川本流にある鹿児島県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、川辺川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、鹿児島市への上水道用水及び工業用水の供給を目的として2002年(平成14年)に竣工しました。
またダム完成に合わせて利水放流を利用した川辺ダム小水力発電所(最大出力375キロワット)が稼働しています。
鹿児島県には現在36基のダムがありますが、うち国交省の補助を受けたいわゆる補助ダムは3基しかなく、川辺ダムは鹿児島県最初の補助ダムとなっています。

ダムサイトを県道19号鹿児島川辺線が通りアプローチは簡単で、ダムのすぐ南には南薩縦貫道『南九州川辺ダム』インターがあり、全国の自動車道でも珍しいダム名の入ったインターチェンジとなっています。  
一方下流からの撮影ポイントは限定的。
ダム下右手の青い屋根が小水力発電所、左手の白い三角屋根が放流設備。


小水力発電所をズームアップ
訪問時も稼働中。


クレスト自由越流頂5門、自然調節式オリフィス2門のゲートレスダムですが、ゲートの形状が凝ってます。
向って左手のエレベーター棟もちょっと変わったデザイン。


天端は車両通行できます。


親柱の銘板、九州らしく金箔文字。


ダム湖は『さつま川辺湖』
一時事業中止になり球磨川水害を受けて復活した熊本の川辺川ダムと混同されることが多いようです。


天端から
波返しの付いたガッツリ系堤趾導流壁
手前の白い建屋が放流設備、奥が小水力発電所。
ダム下へ通じる管理道路は入り口にフェンスがあり立ち入りできません。


貯水池のさつま川辺湖は総貯水容量292万立米。


左岸高台から
左岸に芝生の広いスペースがありますがダム左岸は透水性の高いシラス土壌のため、止水目的のため地中連続壁工法が採用され連続するコンクリートの壁で止水処理が図られました。
ダム便覧によれば川辺ダムの地中連続壁工事はダム本体工事に匹敵する規模の土木工事だったそうです。


県道19号から
ダム左岸にある管理事務所裏手から繋留設備への階段が下りています。


上流面をズームアップ
オリフィス左手は取水設備。

(追記)
川辺ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2880 川辺ダム(1828)
左岸 鹿児島県南九州市川辺町清水
右岸       同市川辺町神殿
万之瀬川水系万之瀬川
FNWI
55.5メートル
147メートル
2920千㎥/2460千㎥
鹿児島県土木部
2002年
◎治水協定が締結されたダム

金峰ダム

2022-06-03 14:00:00 | 鹿児島県
2022年5月22日 金峰ダム
 
金峰(きんぽう)ダムは鹿児島県南さつま市金峰町大坂の二級河川万之瀬川水系長谷川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
南さつま市金峰町は薩摩半島中央部に位置し、大消費地である鹿児島に近い地理的要因を生かし農業経営の発展が期待されています。
しかし農地は南九州特有の透水性の高い火山灰土壌、いわゆるシラス台地で占められており水利に乏しく、生産性向上のため灌漑施設の整備が重要課題となっていました。
1987年(昭和62年)に農水省の補助を受けた県営かんがい排水事業金峰地区が着手され、その中核施設として2003年(平成15年)に竣工したのが金峰ダムです。
運用開始後は金峰町土地改良区が管理を受託し約800ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
 
ダム右岸高台を県道20号鹿児島加世田線が通り、道路わきの金峰ダム展望駐車場からダムを俯瞰できます。
2003年(平成15年)竣工と比較的新しいロックフィルダムで、ダム便覧などの写真を見てもリップラップなどは非常に美しい写真が掲載されているのですが…
早朝の訪問で太陽は逆光、しかも朝もやが掛かり撮影には難しい条件となりました。
また展望台からダムに直接下りることはできず、ダムサイトや天端に行くには下流から対岸に回り込まなければいけません。


ダム下に橋が架かり、ダムと正対できるのですがこちらはもろ逆光。
提体の向って右手(左岸)に洪水吐斜水路があり、ダム下で放流設備からの水路と合流します


条件が良ければ堤高57.9メートルのロック堤体と真正面から対峙できるのですが。
写真ではわかりづらいですが、放流口にはバルブが2条備わっています。


左岸から上流面
対岸に斜樋があります。
奥に見える山はダムの由来となった金峰山。
天端は車両の進入はできませんが徒歩での立ち入りは自由です。


左岸の横越流式洪水吐。


ダム湖は総貯水容量257万立米
『金峰神麗湖』と命名され約800ヘクタールの農地の水がめとなっています。


右岸の斜樋
シャフトが8本の巨大な取水設備。


天端からダム下を見ろします。
右手の建屋は放流設備
2枚目の写真はカーブした道路橋から撮りました。


左岸に洒落たデザインの管理事務所が置かれ、その横手に繋留設備があります。


下流面
リップラップは犬走りを挟んで2段構成。


上流面。

高い位置からの展望台もあり見所の多いロックフィルダムですが、南西向きのダムのためこの時期の早朝はもろに逆光になってしまいました。
このダムを訪問する際は午後をお薦めします。

追記
金峰ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2985 金峰ダム(1827)
鹿児島県南さつま市金峰町大坂 
万之瀬川水系長谷川 
 
 
57.9メートル 
230メートル 
2570千㎥/2290千㎥ 
金峰町土地改良区
2003年
◎治水協定が締結されたダム

姫の河内ダム

2022-06-03 08:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 姫の河内ダム

姫の河内(ひめのかわうち)ダムは熊本県天草市二浦町の桜川水系姫の河内川にある天草市水道局が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
旧牛深市では昭和30年代半ばより水道整備が進められ、1965年(昭和40年)に桜川に第1ヤイラギダムが、1971年(昭和46年)に第2ヤイラギダムが建設されました。
姫の河内ダムは牛深市3番目の上水ダム(堤高15メートル以上のダム)として1988年(昭和63年)に竣工し、日量最大366立米の水がダム直下の姫の河内浄水場を通じ給水されています。

ダム直下は浄水場のため立ち入り禁止、見学は右岸からに留まります。
自治体管理の上水ダムらしく洪水吐はクレスト自由越流頂1門だけ。


右岸から下流面。
洪水吐のすぐ下に浄水場があります。


天端も立ち入り禁止。
貯水池は総貯水容量10万9000立米。
曝気装置が稼働しています。


上流面
取水設備は半円形。


竣工記念碑は同時期の第2ヤイラギダムの再開発記念碑とよく似た仕様。




こののち、2013年(平成25年)の県営路木ダムの完成により、天草市牛深地区の水道事情は大きく改善しました。

2983 姫の河内ダム(1826)
熊本県天草市二浦町
桜川水系姫の河内川
21メートル
81メートル
109千㎥/81千㎥
天草市水道局
1988年