ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

十曽ダム

2022-06-08 23:00:00 | 鹿児島県
2022年5月23日 十曽ダム
 
十曽(じっそ)ダムは鹿児島県伊佐市大口小木原の一級河川川内川水系十曽川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
現地記念碑によれば1934年(昭和9年)の干ばつを契機に耕地整理組合が組織され、1937年(昭和12年)に十曽池着工に至りました。
しかし戦争激化による人員・物資不足もあり工期は遅延し終戦後の1946年(昭和21年)にようやく竣工しました。
1990年(平成2年)~1998年(平成10年)にかけて、農水省の補助を受けた県営水環境整備事業によりダム一帯が『十曽池公園』として整備、さらに2004年(平成16年)には大規模改修が竣工し現在の姿になりました。
現在は耕地整理組合の流れを汲む伊佐市山野十曽土地改良区が管理を行っています。
上記のようにダム周辺は広く公園として整備されるとともに青少年旅行村が設置され北薩地域有数のレクリエーションスポットとなっています。

ダムは2004年(平成16年)の改修で一新され、クレスト自由越流頂10門を備えたすっきりしたデザインとなっています。


訪問時は田植えを控え満水
クレストから薄く越流しています。


ダム下流は『わんぱく広場』になっており、芝生の中に人工的なせせらぎや池が整備された気持ちのいい空間になっています。
芝生を焦がさなければコンロやバーベキューもOKということで休日には多くの家族連れ、キャンパーで賑わうようです。


ダムの下流面。


天端から
取水された水の大半は利水として減勢工で十曽川に戻され、一部はわんぱく広場に回されます。


総貯水容量48万立米の十曽池。
湖岸各所には親水護岸が設けられダム一帯が公園化されています。

 
天端高欄のイノシシのモニュメント。
公園の整備の方に由来を伺うと、特に深い意味はなくかつてこの辺りを猪が走り回っておりこれをモチーフにしたとのこと。
最近は駆除したシカやイノシシなどジビエが町の売りになっています。


1946年(昭和21年)の記念碑
摩耗が進み解読には苦労しました。


こちらは2004年(平成16年)の大規模改修記念碑。


十曽池案内図。


上流面
堤体中央に取水設備があります。


取水設備をズームアップ。
コンクリートダムのこの位置に斜樋があるのは珍しい。


(追記)
十曽ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2854 十曽ダム(1841)
鹿児島県伊佐市大口小木原 
川内川水系十曽川 
 
 
23.3メートル 
90メートル 
480千㎥/450千㎥ 
伊佐市山野十曽土地改良区
1946年
◎治水協定が締結されたダム

高川ダム

2022-06-08 12:00:00 | 鹿児島県
2022年5月23日 高川ダム
 
高川(こうがわ)ダムは鹿児島県出水市下大川内の米ノ津川水系高川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
鹿児島県北東部の八代湾に面する出水平野一帯では、米ノ津川以外大河がない上に丘陵地は水理に乏しく水田・畑地ともに安定した水源確保が渇望されていました。
農林省(現農水省)は1967年(昭和42年)より国営かんがい排水事業出水平野地区に着手、その灌漑用水源として1973年(昭和48年)に竣工したのが高川ダムです。
運用開始後は出水平野土地改良区が管理を受託し約3200ヘクタールの水田及び畑地に灌漑用水を供給しています。
事業の竣工により稲作はもとより畑地では野菜・花卉・果樹栽培が定着し観光農園も多数出現するなど、現在では鹿児島県下有数の農業地帯となっています。
また2020年(令和2年)には利水放流を利用した高川ダム小水力発電所(最大出力450キロワット)が稼働しています。
 
ダム下から
堤高42メートル、堤頂長163.5メートル
右上の建物はダムを管理する出水平野土地改良区事務所
右下は2020年(令和2年)に完成した小水力発電所。


昭和40年代着工のダムと言うことでクレストにはラジアルゲートを装備。


左岸から
扶壁上にゲートハウスが乗る特徴的なスタイル。


ゲート越しに
手前の白い建屋は旧来の放流設備
奥が小水力発電所。


減勢工はバッフルブロックとエンドシル
訪問時は田植えを控え発電所も鋭意稼働中。
ここで放流された水は下流の頭首工で取水されたのち各受益地に送水されます。


総貯水容量は850万立米で、九州の農業用ダムとしては最大規模。


左岸の繋留設備。


正面がダムを管理する出水平野土地改良区
ダムに土地改良区事務所が隣接しているのは珍しい。
提体や導流壁に生えた草や苔が時代感を醸し出しています。


天端は車両通行できます。


上流面
大きな取水設備がいかにも昭和って感じ。


ダム左岸湖岸にある『ふるさとの碑』
ダム建設に際して立ち退いた住民たちの望郷の念が綴られています。


こちらは竣工記念碑
『完工碑』になっています。

(追記)
高川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2868 高川ダム(1840)
鹿児島県出水市下大川内 
米ノ津川水系高川 
 
 
42メートル 
163.5メートル 
8500千㎥/7727千㎥ 
出水平野土地改良区
1973年
◎治水協定が締結されたダム

鷹巣ダム

2022-06-08 08:00:00 | 鹿児島県
2022年5月23日 鷹巣ダム
 
鷹巣(たかのす)ダムは鹿児島県出水郡長島町鷹巣の小幡川水系小幡川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
長島は鹿児島県北西部にある約90平方キロの島で黒之瀬戸大橋で九州本土と結ばれています。
気候は温暖多雨で畑作には好条件ですが島の大半は丘陵地のため水利に乏しく安定した水源確保が悲願となっていました。
1979年(昭和54年)に農水省の補助を受けた県営畑地帯総合土地改良事業鷹巣地区が着手され、その水源として1988年(平成元年)に竣工したのが鷹巣ダムです。
運用開始後は鷹巣土地改良区が管理を受託し約140ヘクタールの畑地及び樹園地に灌漑用水を供給しています。
樹園地では温州ミカン、畑地では主にサツマイモ、ジャガイモが生産されています。

鷹巣ダムは長島北東部に位置しダム右岸を県道379号長島宮之浦港線が通っています。
県道から見た下流面
提体は犬走を挟んだ4段構成
左岸に洪水吐がありダム下には揚水機場と放流設備が並びます。


洪水吐斜水路と揚水機場
受益地の大半はダムよりも高所にあるためこの揚水機場からファームボンドに送水されます。


天端は開放され車両の通行もできます。


上流面。


天端から
ダムは海岸からわずか350メートル。
長島町は養殖ハマチの生産量日本一で、沖にもハマチの養殖場が見えます。
晴れていれば対岸の水俣まで一望できる絶景ダムなんですが、あいにくの曇天。


ダム湖右岸には艇庫とインクラインと取水設備があります。
総貯水容量は29万立米とさほど大きくはありませんが、島では貴重な水源です。


これが取水設備。


左岸の竣工記念碑
ここも金箔文字。


左岸の洪水吐
斜水路は海に飛び出すジャンプ台のよう。


横越流式洪水吐
奥は管理事務所ですが、職員は常駐していません。


上流側から。

2879 鷹巣ダム(1839)
鹿児島県出水郡長島町鷹巣 
小幡川水系小幡川 
 
 
28.9メートル 
117.4メートル 
290千㎥/255千㎥ 
鷹巣土地改良区
1988年