ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

千倉ダム

2022-06-14 18:00:00 | 大分県
2022年5月25日 千倉ダム

千倉ダムは大分県日田市三和の筑後川水系千倉川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には大分県の事業で1965年(昭和40年)に竣工と記されていますが、現地に由来碑などはなく、ネットでも情報がないため詳細は不明です。
現地を見た限りは農業水利事業やかんがい排水事業ではなく既設の溜池をため池整備事業等で改修した公算が強そう。
また、実情は溜池ですが日田市のため池データベースに記載がないので『農業ダム』と分類します。
管理は山田原土地改良区が行っています。

グーグルの空撮写真を見てわかるように、千倉ダムは地山を挟んで東西二つの堰堤で形成されています。
ここでは便宜的に右手(東側)の堰堤を東堤、左手(西側)の堰堤を西堤と呼ぶことにします。
ダム便覧の位置情報では東堤を主堤としています。


まずはダム下へ
こちらは副堤となる西堤
見た目では堤高15メートル以上あります。


底樋管も西堤にあります。


こちらが天端への入り口
東屋がありかつては公園として整備されたようですが、今は荒れています。
「釣り禁止」と明文されています。


左岸から
手前が主堤である東堤、奥が西堤
水位が異常に低く湖底が露出しています。


左岸わきの越流式洪水吐。


東堤下流面。


小さな地山を挟んで西堤へ
狭いですが車で入ってこれます。
止まっているのは釣り師の車。


西堤上流面
両堰堤ともに上流面は花崗岩できっちり護岸されています。
しかしどこにでもいる、禁止場所で釣りをするバカ。


総貯水容量56万7000立米ですが、水が溜まっているのはこれだけ。
これから灌漑期なんですが大丈夫なのかな?
もしかしたら大規模改修でも始まるのかもしれません。


西堤の奥に取水設備がありました。


湖面に伸びる7本のシャフト
かなりさび付いてますけど大丈夫?


東西二つの堤で形成されたユニークな溜池、できれば満々と水を湛えた姿を見てみたいものです。
帰宅後改めて調べると、訪問直後から大規模な改修工事が着手されるとのこと。
水位が低かったのは工事に備えて水が抜かれていたようです。

2755 千倉ダム(1854)
大分県日田市三和
筑後川水系千倉川
22メートル
94.5メートル
567千㎥/561千㎥
山田原土地改良区
1965年

耶馬溪ダム

2022-06-14 14:00:00 | 大分県
2022年5月25日 耶馬溪ダム
 
耶馬渓ダムは左岸が大分県中津市耶馬渓町大島、右岸が同町柿坂の一級河川山国川水系山移川にある多目的重力式コンクリートダムです。
山国川は九州北東部有数の大河で古くから流域の水源として利用される一方、洪水や干ばつも多く抜本的な治水・利水対策が求められていました。
1970年(昭和45年)に建設省(現国交省)の直轄事業による山移川への多目的ダム建設が採択され1984年(昭和59年)に竣工したのが耶馬溪ダムです 
耶馬溪ダムは国交省九州地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、山国川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、中津市・北九州市・京築水道企業団への上水道用水の供給、田辺三菱製薬への工業用水の供給、大分県企業局耶馬溪発電所(最大1700キロワット)でのダム式発電を目的としています。
大分県内にあるダムですが、福岡県への利水も賄っている点は水不足が慢性化している福岡県の悩みの深さの表れでもあります。
耶馬溪ダム完成直後から山国川河口部に取水堰建設が着手され1990年(平成2年)に竣工、元号から平成大堰と命名されました。

一方ダム建設に合わせてダム周辺の公園整備も進めら、ダム下には記念公園が、湖畔には水上スキーやウェイクボードが楽しめる耶馬溪アクアパークが開設されました。
ダム湖での水上スキースポットは全国初とのこと。

ダム下流から
クレストラジアルゲート3門、オリフィス高圧ラジアルゲート1門、コンジット高圧ラジアルゲート2門のほか利水放流管2条を備えています。
右手の建物はB&G海洋センター。


非常用洪水吐であるクレストゲートと、常用洪水吐であるオリフィス・コンジットゲートの減勢工が導流壁で仕切られているのが特徴です。


天端は車両の通行が可能
右岸堤体直上に繋留設備がありますが、作業船含め4隻の船が繋がれているのは珍しい。


天端から
非常用と常用洪水吐が導流壁で仕切られています。
左下手前が放流設備、奥が大分県企業局耶馬溪発電所。


総貯水容量2330万立米の耶馬溪湖
湖畔各所に公園やレジャー施設が整備されています。


左岸から下流面
対岸に管理事務所がありますが、早朝の訪問のためまだ開いておらずカードゲットならず。


右岸斜面の『やばけい』の植栽
ツツジのようですが、この時期緑に埋もれて判読しづらい。


左岸高台プラント跡は『もみじの丘』として公園化され展望台を兼ねた紅葉スポットになっています。


もみじの丘から俯瞰
右手は名物の噴水設備ですが、これまた早朝のため稼働していません。


低い位置から。


上流から遠望
噴水や曝気装置など様々な水質保全装置が並びます。


ゲートをズームアップ
クレストゲートは佐世保重工、オリフィス予備ゲートは三菱重工、コンジット予備ゲートは田原製作所とメーカーが異なります。
これほど大きなダムのクレストゲートを、当時中堅だった佐世保重工が担うのは珍しいようです。


(追記)
耶馬溪ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2787 耶馬溪ダム(1853)
左岸 大分県中津市耶馬渓町大島 
右岸         同町柿坂 
山国川水系山移川 
FNWIP 
 
62メートル 
313メートル 
23300千㎥/21000千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1984年 
◎治水協定が締結されたダム 

夜明ダム

2022-06-14 08:00:00 | 福岡県
2022年5月24日 夜明ダム
 
夜明ダムは左岸が福岡県うきは市浮羽町三春、右岸が大分県日田市夜明の一級河川筑後川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により、
日本発送電は解体され九州では新たに九州電力が誕生します。
同社は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進め1954年(昭和29年)に完成したのが夜明ダムです。
ここで取水された水は約850メートルの導水路で夜明発電所に送られ、最大1万2000キロワットのダム式発電を行います。
建設途中の1953年(昭和28年)の西日本水害により堤体の大半が決壊、また2017年(平成29年)7月の九州北部豪雨の際にも管理所が流出するなど川の屈曲地点にあるダム故、被災が多いダムです。

右岸ダムサイトから
8門のローラーゲートと2門のシェル型ローラーゲートで筑後川を閉め切ります。


3番ゲートにはフラッシュボードがついています。


左岸に移ります。
ダムの直下で川が左手に大きく屈曲しているため、こちらには河川敷が形成されにより近い位置から見学できます。


赤いトラス製ピアが特徴的。


川が左手に屈曲するため、左岸のゲート2門は越流工が高く且つ径間の広いシェル型ローラーゲートになっています。


赤いトラス製ピアをズームアップ。


アングルを変えて。


どうしてもここに目が行きます。


右岸上流側には取水口や管理所が置かれていますが、国道の交通量が多かったので撮影は自重しました。

(追記)
夜明ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2751 夜明ダム(1852)
左岸 福岡県うきは市浮羽町三春
右岸 大分県日田市夜明
筑後川水系筑後川
15メートル
223メートル
4050千㎥/790千㎥
九州電力(株)
1954年
◎治水協定が締結されたダム