ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

竹山ダム

2022-06-09 23:00:00 | 鹿児島県
2022年5月23日 竹山ダム
 
竹山ダムは鹿児島県霧島市溝辺町有川の網掛川水系宇曽の木川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
国分平野北方霧島市に広がる十三塚原(じゅうさんつかばる)は南九州特有の透水性の高い火山灰土壌、いわゆるシラス土壌で形成された標高200~300メートルの台地です。
稲作には不向きで古くから畑作が営まれ来てましたが水利に乏しく灌漑施設の整備が強く求められてきました。
1974年(昭和49年)に農水省の補助を受けた県営畑地帯総合土地改良事業十三塚原地区が着手され、その灌漑用水源として1987年(昭和62年)に竣工したのが竹山ダムです。
運用開始後は十三塚原土地改良区が管理を受託し約850ヘクタールの畑地・樹園地に灌漑用水を供給しています。
またダム完成に合わせて河川維持放流を利用した竹山ダム発電所が稼働し最大191キロワットの小水力発電が行われています。
事業の竣工により十三塚原では大根、キャベツなど従来作物に加え梨やブドウなどの果樹や茶栽培が推進されました。とりわけ茶生産は活発でいまや茶王国鹿児島を代表する茶生産地となっています。
 
ダム下の発電所に向かう管理道路から
堤高54.5メートル、堤頂長163メートルの灌漑用としては中規模のロックフィルダムです。
下流面は草木が繁茂しており、ロック面は上方わずかに見えるのみ。


アングルを変えて
左手は揚水機場
受益地はダムよりも最大100メートル以上高所となるため、ここからファームボンドに揚水されます。
右上の建屋は管理事務所を兼ねた十三塚原土地改良区本部。


畑地帯総合土地改良事業の説明板。


天端は車両の通行が可能。


総貯水容量220万7000立米の貯水池。


その後の水環境整備事業によりダム湖一帯の整備が行われました。
湖岸各所に親水公園が設置されるとともに、親水護岸が設けられ取水設備周辺を除き釣りが可能です。


右岸の洪水吐斜水路。


右岸の横越流式洪水吐。


右岸に並ぶ斜樋と艇庫・インクライン。


上流面と右岸の洪水吐。


金箔輝く記念碑。


残念ながら立ち入り可能場所からダム下の発電所は見えませんでした。
またダムサイトの管理事務所を兼ねた土地改良区の建物の写真撮影を失念してしまいました。

2874 竹山ダム(1844)
鹿児島県霧島市溝辺町有川 
網掛川水系宇曽の木川 
 
 
54.5メートル 
163メートル 
2207千㎥/1937千㎥ 
十三塚原土地改良区
1987年

鶴田ダム(再)

2022-06-09 20:00:00 | 鹿児島県
2022年5月23日 鶴田ダム(再)
 
鶴田ダム(再)は左岸が鹿児島県薩摩郡さつま町鶴田、右岸が同町神子の一級河川川内川本流にある国交省九州地方整備局が管理する重力式コンクリートダムです。
1964年(昭和39年)に建設省九州地方建設局(現国交省九州地方整備局)の直轄事業により竣工、翌年に川内川の洪水調節、発電事業者として参加した電源開発(株)川内川第1発電所での最大12万キロワットのダム式発電を目的とした特定多目的ダムとして運用が始まりました。
しかし、ダム完成後も川内川での洪水被害は絶えず、特に2006年(平成18年)の鹿児島県北部豪雨においては下流域約2000戸が浸水するなど甚大な被害となりました。
これを受け2008年(平成20年)に鶴田ダム再開発事業が着手され、10年の歳月をかけて2017年(平成29年)に鶴田ダム(再)が竣工しました。
再開発事業ではダム右岸部への新放流ゲートが3門増設と導流壁の改修が行われ、これにより死水容量2050万立米が有効貯水容量化されました。
併せてダムの運用変更により洪水期の洪水調節容量が大幅に増加し、特に6月から7月の第1期洪水期には有効貯水容量9800万すべてを洪水調節容量に配分となりこの間は治水専用ダムとしての運用が可能となりました。
鶴田ダム(再)は九州屈指の多目的ダム且つ大規模な再開発事業の実施などを受け日本ダム協会により日本100ダムに選ばれているほか、ダム湖の大鶴湖もダム湖百選に選定されています。

川内川左岸の県道404号は隘路のため、ダム右岸に続く町道利用が便利です。
目の前に亜夢が現れると、思わず「おお!」と声が出ます。
従来のクレストラジアルゲート4門、コンジット高圧ラジアルゲート3門に加え、向って左手(右岸側)に新放流ゲート3門が増設され、併せて導流壁の大規模改修が行われました。
新ゲート増設のため右岸法面が掘削され多くのアンカーが並んでいます。


増設された新放流ゲートは高圧ローラーゲートを装備
このゲートの設置によりダムの最低水位はEL130メートルから115.6メートルに低下し、死水容量2050万立米が有効貯水容量化されました。


ずらりと並ぶ新旧ゲートと導流壁、発電所
モザイク状のコンクリートと併せたメカっぽさが堪りません。


電源開発川内川第1発電所
九州の一般水力発電としては九州電力一ツ瀬発電所に次ぐ12万キロワットの発電能力を有します。
最低水位の低下により発電所への水圧鉄管も付け替えられています。


右岸から超広角で
堤高117.5メートル、堤頂長450メートル、堤体積111万9000立米と九州では最大規模のスケール。


奥が発電所
水圧鉄管が付け替えられたのがよくわかります。
手前は新放流ゲート操作建屋。


ダムサイトに展示された増設放流管の模型
直径は6.4メートル
ダムを運用しながら全長60メートルに及び掘削が行われました。


天端右岸からダム下を見下ろします。
新ゲート増設に伴い、右岸側法面が大きく掘削されました。


ダム湖の大鶴湖
総貯水容量1億2300万立米は宮崎の一ツ瀬ダムに次いで九州第2位の容量。
洪水期に備えて水位は大きく下がっています。


天端に鎮座する巨大なガントリー
吊られている補助ゲートは珍しいキャタピラゲート。


天端左岸より
ひしめき合う発電所や導流壁、山留
まるで鉄道のターミナルを見ているようで全く飽きが来ません。


左岸高台の鶴田ダム公園から俯瞰
ダムは両側が屈曲、対岸に管理事務所があります。
木が伸びて視界が悪いのが難。


ダム湖上流にある曽木発電所遺構
1909年(明治42年)竣工の発電所で鶴田ダム完成により水没しました。
遺構は国の登録有形文化財および通産省の近代化産業遺産に選定されており、水位が下がる洪水期のみ全景を見ることができます。
残念ながら2021年(令和3年)の台風により手前側の壁が倒壊してしまいました。

(追記)
鶴田ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

3587 鶴田ダム(再)(1843)
左岸 鹿児島県薩摩郡さつま町鶴田
右岸          同町神子
川内川水系川内川 
FP 
 
117.5メートル 
450メートル 
123000千㎥/98000千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1965年 竣工
2017年 再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム

川内川第2ダム

2022-06-09 18:00:00 | 鹿児島県
2022年5月23日 川内川第2ダム
 
川内川第2ダムは左岸が鹿児島県薩摩郡さつま町鶴田、右岸が同町神子の一級河川川内川本流にある電源開発(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により日本発送電が解体され全国に9電力会社が誕生します。しかし戦後の電力不足に対処するには9電力だけでは困難で大規模発電事業を中心に半官半民の電源開発が発電事業を進めることになります。
同社は九州では球磨川と川内川での電源開発に注力し、川内川では建設省による鶴田ダム建設事業に発電事業者として参加、1965年(昭和40年)に最大出力12万キロワットを誇る川内川第1発電所が稼働しました。
川内川第2ダムは1964年(昭和39年)に鶴田ダムの下流約3キロ地点に第1発電所の逆調整池として建設され、併せて川内川第2発電所で最大1万5000キロワットのダム式発電を行っています。
 
ダム下流を通る大規模農道『川薩グリーンロード』から正対できます。
洪水吐としてローラ―ゲート3門、その右手(左岸側)に取水用ゲート2門を備えています。取水ゲート直下に発電所があり手前が放流口。



取水ゲートを真横から
除塵機で集めた塵芥は下のトラックで搬出されます。
ピア左手の丸い青い屋根の下に発電所があります。


第1第2発電所の説明板。


天端から取水ゲートとスクリーン
スクリーンの上に除塵機が鎮座。


天端から見たダムの下流。


天端は車両の通行が可能
ダム湖は総貯水容量272万5000立米で第1発電所の出力調整による水位の変動をここで緩和します。


左岸の巡視艇格納庫。


上流面。




追記
川内川第2ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2860 川内川第2ダム(1842)
左岸 鹿児島県薩摩郡さつま町鶴田
右岸          同町神子
DamMaps 
川内川水系川内川 
 
 
24メートル 
106メートル 
2725千㎥/1322千㎥ 
電源開発(株) 
1964年
◎治水協定が締結されたダム